今回は明確な価値観は長寿につながる?価値観を定める「行動フレームワーク」について紹介しようと思います。

皆さんは下記のような問いかけをされた場合、どのように答えますか?

「生きるうえで大切にしている価値観は何ですか?」

即座に答えられる人もいれば考え込んでしまう人もいるかと思います。
価値観とは人それぞれが持つものでその内容に正解や不正解はないです。
その人が何に重きをおいているのか、何に基づいて動いているのかというのが価値観です。
価値観は良し悪しという事はないですが、明確な価値観を持っているかと持っていないかというのには健康的な側面から良し悪しが出てきます。

実はこの価値観を持っているかどうかというのは健康に影響が出るという事がわかっています。

という事で今回は価値観を定めるための「行動フレームワーク」について解説していこうと思います。
ぜひ自分の価値観が定まっていない方はこの機会に自分なりの価値観を明確にしてみましょう。

価値観を持っていると死亡率が下がる?

実は明確な価値観を持っている人は死亡率が低くなることが分かっています。

2014年にカナダのカールトン大学にてこの価値観に関するコーホート研究(Purpose in Life as a Predictor of Mortality across Adulthood)が行われました。
コーホート研究とは対象集団(コホート)を決め,その特性を持った群と持たない群に分け,疾患の罹患や改善・悪化の有無などを一定期間観察する研究のことです。

この研究では約6000人の男女を対象として価値観を持って生きているかといった問いかけに対してイエスと答えた人は14年後の死亡率が15%も低いことが分かりました。
つまり、価値観をもっている人の方が長寿であることが分かります。

この長寿の理由ですが、この研究結果の中では価値観が明確な人は健康を意識した食事や運動をする傾向にあったためであるとしています。

価値観を定める「行動フレームワーク」と実践方法

価値観を持って生きている事が重要だという事はわかりましたが、自分の持っている価値観を探り当てるにはどうしたらよいでしょうか?

ここで正当性の高い方法の一つとして出てくるのがミシシッピ大学のケリーウィルソン氏によって考案された「行動フレームワーク」です。

これはアクセプタンス&コミットメントセラピー(通称ACT)と呼ばれる不安な感情に対処する方法を学ぶと同時に自分の価値観にあった行動をすることを目指した心理療法の一つです。
このフレームワークではその価値観の形成に着目し、人生における重要な領域を10種類に分類してそれぞれの領域についてどのように行動し続けたいのかという事を記載していきます。

ここで言っている10種類の重要な領域とは以下の通りです。

人生における重要な領域

  • 家族関係:家族の中でどのように過ごしたいのか、家族とどのように接したいのか
  • 結婚・恋愛:親密なパートナーに対してどのような人でありたいか、何をしてあげたいか
  • 子育て:どのような親になりたいか、どのような子に育てたいか
  • 友人関係・社交関係:どのような友情を育てたいか、最高の友人に対してどのように振る舞い・接したいか
  • 仕事・キャリア:仕事のどのような点を重要だと思っているか、仕事に生かしたい自分の素質はなにか
  • 教育・自己成長:知的好奇心をくすぐられるような心の底から知りたい事は何か、習得してみたいスキルはあるか
  • 余暇:自由な時間をどのような趣味や遊びに充てたいか、一番楽しいと感じる時間はどんな時か
  • スピリチュアリティ:宗教、自然に対してどのような思いを持っていたいか
  • 地域社会生活:コミュニティの一員としてどのような事に貢献したいか
  • 健康:体の健康のために何に重きをおいているか、自分の体を労わるために続けていたい事はなにか

それでは上記の領域を基に価値観を定める手順を見ていきましょう。

それぞれの領域でどのように行動したいかを1行で書く

まず初めにやることは上記の領域それぞれについてどのように行動したいかを1行で書いてみましょう。(例えば、「健康」であれば「食事をコントロールし体に良い食生活をする」などの抽象度で問題ありません)

ここで注意したいのは、自分の価値観を考えたつもりが、いつの間にかに目標になってしまっている事です。

価値観と目標は別物です。目標は未来の到達すべきゴールなので達成したら消化されるものです。
つまり終わりがあるのが目標ですが、価値観には終わりがありません。
価値観というのは現在のプロセスそのものなのでそもそも終わりという事ではないわけです。(例えば「結婚する」は目標ですが、「愛する人と幸せに暮らす」は価値観です)

目標設定する際にはこの価値観が定まっていることが重要です。

例えば医者になりと考えて大学受験で猛勉強している人がいたとします。
この時点では「受験に合格する」と「受験で不合格になる」という成功と失敗の未来が存在します。この不確定で将来があいまいになると現在と目標との心理的距離が広がり、不安が大きくなります。

一方で医者になるという目標の向こうに「人々を救う」や「医療技術を進歩させる」といった価値観があるとどうなるでしょうか?
その瞬間から大学受験の勉強は「人々を救うための一環」や「医療技術を進歩させるための学び」に変わります。
これによって目標というあいまいだった将来が現在進行形のプロセスとなり不安を消し去ってくれます。

つまり、遠くて壮大な目標を抱えているほどこの価値観のメリットは大きくなっていきます。

各領域の「重要度」をスコアリングする

先程各領域で記載した価値観について、自分の人生にどれほど重要かという事を採点します。下記のようにまったく重要ではないのであれば1点、最も重要だと感じるのであれば10点をつけましょう。また、各領域は比較されるべきものではないので相対評価ではなく、絶対評価で点数をつけましょう。

ここまで記載したら、作成した自分の「行動フレームワーク」を基に1か月生活をしてみましょう。

振り返りをする

さて過去1か月を振り返って、自分がそれぞれの領域の価値観に基づいて行動できたかを評価しましょう。ここではいったん重要度でどのような評価にしたかは忘れましょう。こちらも行動が一致していなかった場合には1点で完璧に行動ができていた場合には10点をつけましょう。

さて、ここで重要度と行動の一致度を比較してみましょう。この作業で分かるのは現在の自分がどれだけ自分に背いているかでという事です。重要度と行動の一致度の数字が離れているほど自分の価値観に背いて生きているという証拠です。

ぜひ実際に取り組んでみて自分の価値観に合った生き方をできているかチェックしてみましょう。

参考文献

  1. Wilson, Kelly G. Sandoz, Emily K. Kitchens, Jennifer Roberts, Miguel. "The Valued Living Questionnaire: Defining and measuring valued action within a behavioral framework.". The Psychological Record, 60(2), 249–272.
    https://psycnet.apa.org/record/2010-08614-005
  2. Patrick L. Hill and Nicholas A. Turiano. "Purpose in Life as a Predictor of Mortality across Adulthood". Psychol Sci. 2014 Jul; 25(7): 1482–1486.
    https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4224996/

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