前回に引き続き脂質の基礎知識について解説していこうと思います。
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肥満が健康に悪い理由
運動不足や過食、加齢によって基礎代謝が落ちることで肥満になることが多いかと思いますが、肥満体質は健康上良くないということはなんとなくイメージがあります。実際に肥満になるとどのような健康リスクがあるのかについて6つに分けてここでは見ていきます。
健康リスク① 糖尿病
一つ目は糖尿病です。そもそも糖尿病というのは血中の血糖値が高くなりすぎてしまう病気です。
健康的な体であれば、血糖値の上昇とともに膵臓からインスリンというホルモンを分泌され、血液中の糖質が体に吸収されることで血糖値を下げてくれるのですが、肥満体質になると膵臓の機能が弱まってたり普段から糖質を大量に摂取していると血糖値が高いままとなってしまい、血管をボロボロにしてしまいます。
現在、糖尿病に罹っている人は予備軍を含めて1000万人いると言われています。身近にありふれており、健康被害の大きい生活習慣病と言えます。
また、糖尿病を一度発症すると以降はずっと症状と付き合う生活になるため、糖尿病にならないように日頃から予防しておくことが重要になってきます。
健康リスク② 高血圧
2つ目は高血圧です。高血圧というと塩分の摂り過ぎが原因というイメージが強いかと思いますが、最近は肥満が原因で高血圧になる人が多くなっています。
この原因についても膵臓から分泌されるインスリンが関係しています。先程の肥満になると高血糖の状態になりますが、これはインスリンの効き目が悪くなっているためです。
インスリンの効き目が悪くなると膵臓はなんとかして高血糖の状態を抑えようとより多くのインスリンを分泌しようとします。
こうすることで血液中のインスリン濃度が高くなり、血液中のミネラルが排出されづらくなり血管が収縮されることで、高血圧状態になります。
つまり塩分の過剰摂取をしていなくても肥満によって高血圧になる可能性があるということです。
健康リスク③ 脂質異常
3つ目は脂質異常です。脂質異常とは血液中の脂質の濃度が健康基準の範囲を超えてしまっている状態で脂質の過剰摂取や肥満によって発症しやすくなります。
血液中の脂質というと、主に下記の3つがあります。
- 中性脂肪
- HDL(善玉)コレステロール
- LDL(悪玉)コレステロール
中性脂肪は体脂肪の元となる物質で、脂肪細胞に蓄えるためにインスリンがブドウ糖から合成されてできるものです。
通常は一定量の中性脂肪が血液中を流れていますが、肥満になるとその濃度が高くなっていき脂質異常となります。
また、中性脂肪以外にコレステロールがあります。コレステロールは細胞膜やホルモンを生成する際の材料となる成分で、HDL(善玉)コレステロールとLDL(悪玉)コレステロールの2つに大別されます。通常は両者がバランスを取っていますが、肥満になるとHDLコレステロールが減り、悪玉コレステロールが血管壁に付着します。これによる引き起こされるリスクが次に説明する動脈硬化です。
健康リスク④ 動脈硬化
3つ目は動脈硬化です。動脈硬化とは動脈の血管が固くなって血流が悪くなったり詰まりやすくなる状態のことです。脳梗塞や心筋梗塞という言葉を聞いたことがあるかと思いますが、どちらも動脈硬化によって血管が詰まって引き起こされる病気です。
動脈硬化になってしまう原因としては、先程のリスクとして挙げられていた肥満による脂質異常が一つになります。脂質異常になると血管壁に悪玉コレステロールが付着します。
通常であれば「マクロファージ」というホルモンがこの悪玉コレステロールの除去を行ってくれるのですが、消化・吸収されないコレステロールが次々と肝臓で生成されると除去が間に合わずに動脈硬化につながってしまいます。
健康リスク⑤ がん
5つ目はがんです。実は肥満が進むとがんになるリスクが高まることがわかっています。特に肥満が原因とされるものとしては、食道がん、肝臓がんなどをはじめとして13種類もあることがわかっています。
なぜ肥満ががんにつながるということですが、これについてもインスリンが関係していると言われています。人体は使用されるにつれて正常に機能しなくなってきた不要な細胞が自動的に壊死するアポトーシスという機能が備わっているのですが、肥満になるとこのアポトーシスが起きづらくなることが原因と言われています。本来であれば不要になった細胞が残り続けてしまいがん細胞として細胞分裂して増殖してしまうというわけです。
健康リスク⑥ 認知症
6つ目は認知症です。認知症と聞くと高齢の方がなるイメージが強いかと思いますが、若い方でも肥満の人ほど発症率が高くなることがわかっています。
ある研究では、高血圧、高血糖、脂質異常のいづれか2つ以上に当てはまっているメタボリックシンドロームの人は一つも該当しない人と比較して2倍も認知症になる可能性が高いことがわかっています。
特に認知症の中でも有名なのがアルツハイマー認知症なのですが、これを肥満が招くというのはこれまたインスリンが関係しています。
アルツハイマー認は、アミロイドβというタンパク質が脳の神経細胞に蓄積されて発症されると言われていますが、これはインスリンの効き目が悪くなることで脳の神経細胞に蓄積されやすくなることが原因と言われています。
肥満とならないための基本
上記から肥満による健康リスクが多岐にわたって存在することがわかったかと思います。それでは肥満とならないためにどうすれば良いかということについていくつか取り上げていきます。
①食事の仕方を意識する
肥満とならないためには、まず一つ目は食事の仕方を意識するということです。具体的には以下の3つを意識すると良いかと思います。
②高温調理されていないものを選ぶ
2つ目は高温調理されていないものを選ぶということです。一般的に高温調理になるほど脂質が多くなり、カロリーが高くなります。例えば、鶏肉であれば蒸す調理法の蒸し鶏よりも油で高温調理された唐揚げのほうがカロリーが高いというのはなんとなくイメージできるかと思います。
これは単純な理由で高温調理をするにつれて油を必要とするためです。これによって食べ物に含まれる脂質が増えるため、必然とカロリーが増加します。
そのため、調理法としてカロリーが少ない順としては下記のようになります。調理法を意識して食べるものをできるだけ低温のものを選ぶように心がけましょう。
蒸す < 茹でる < 焼く < 揚げる
③肥満を予防してくれる脂質を摂る
3つ目は肥満を予防してくれる脂質があるということです。脂質はできるだけ控えたほうが良いと考えがちですが、脂質の中でも摂取することで肥満を予防してくれるものも存在します。それが、サバやイワシなどの青魚に多く含まれているDHA(ドコサヘキサエン酸)、EPA(エイコサペンタエン酸)です。
DHAとEPAはどちらも不飽和脂肪酸の一種です。脂質の一種ではありますが、摂取することで体内に溜まっている中性脂肪を減少させ、内臓脂肪をつきにくくするという肥満防止にはもってこいの効果があるとされています。他にも血管内の悪玉コレステロールを減らすため、動脈硬化の予防にも効果があります。
1日の摂取量は1000mgが適量とされていますが、取りすぎは厳禁で3000mg以上は摂らないように注意しましょう。
最後に
最後にまとめです。
まとめ
- 肥満になると以下の病気になりやすいから注意
・糖尿病
・高血圧
・脂質異常
・動脈硬化
・がん
・認知症 - 「早食いしない」「食物繊維を多く摂る」「食事は摂らないはNG」を心がけて食事を摂る
- 高温調理されていないものを選ぶ(蒸す < 茹でる < 焼く < 揚げる)
- DHA、 EPAには摂取することで体内に溜まっている中性脂肪を減少させ、内臓脂肪をつきにくくする効果がある
プロポーションを良くしたいという人からすると体脂肪というのは忌み嫌われがちですが、元々は生命活動を行う上で重要な役割を果たしています。一方で現代はデリバリーなどの便利なサービスによって、外に出なくても直ぐ食べ物に辿り着くことができるため、気づいたら肥満となってしまうようなことも少なくありません。そのため、食べ過ぎや運動不足に注意して体脂肪をコントロールすることで、健康体を維持していきましょう。