なかなかダイエットが成功せずに悩んでいる人、どうすればダイエットできるのか気になりませんか。
糖質制限などの食事制限をしたりランニングを始めてみたりと色々実践してもなかなか結果が出なくて困っている人は多いかと思います。
前提としてテレビなどで良く見かける「1ヶ月で8kg痩せた」と言っているような広告を見かけますが、はっきり言って危険なので絶対に手を出してはいけないと考えています。
そのような魅力的に見えてしまう危険なダイエット広告を基準として、ダイエットを始めてみてもすぐに変化が出ることはないため、成功しないのは当たり前と言えるでしょう。正直1ヶ月で8kg痩せるというのは異常です。
そのような危険な広告に惑わされることなく「着実に痩せたい」というのであれば、それが叶う方法があります。
それが今回説明する「マクロ管理法」という方法になります。
ここからマクロ管理法というのはどう言ったものなのか、またその管理方法について説明していこうと思います。
※あくまでマクロ管理法によるダイエットの紹介なので実践するかは自己判断でお願いします。
マクロ管理法とは
マクロ管理法というのは簡単にいうと人が生命活動を行う上で消費するエネルギー「消費エネルギー」を計算してそれに対して栄養素をどれだけ摂るのか「摂取エネルギー」というのを定量的に産出して管理する方法になります。
当たり前の事ですが、人は毎日のように食べ物からエネルギーを摂取して生命活動を維持しています。生命活動を維持したり、体を動かすことでエネルギーを消費しますが、食べる量が多い人はその分体内に蓄えるエネルギー量は増えるため、体脂肪が増えていきます。
今まで「なんとなく」でご飯を制限したりランニングしてみたりとしたけども見た目が一向に変わっている気がせずに挫折してしまったという方は多いです。
一方でこの方法であれば「1ヶ月の合計エネルギーは〇〇kcalだから〇〇kg減る」と具体的な数字で表現できるため、効果があるのかが分かり易いというメリットがあります。
この「消費」と「摂取」を定量的に計算してエネルギーが余って脂肪として蓄えられているのか、消費しているのかというのを明確にすることができます。
消費エネルギーの種類
人が消費するエネルギーというのは「基礎代謝エネルギー」「活動エネルギー」「食事誘発性熱生産」三つに大別できます。
基礎代謝という言葉は聞いたことがあるかと思います。「基礎代謝エネルギー」は呼吸したり心臓を動かしたりと、体を動かさなくても消費されるエネルギーのことです。
次に歩いたり、スポーツをしたりするために体を動かすとエネルギーを消費しますが、この時に消費されるエネルギーを「活動エネルギー」と呼びます。
最後の「食事誘発性熱生産」というのは食べたものを消化して体内に吸収する際に消費するエネルギーのことです。ご飯を食べた後に体が温かくなって眠くなったという経験をした人は多いかと思いますが、これは食事誘発性熱生産によるもので実際に体温が少し上昇します。
ここで重要になってくるのがそれぞれのエネルギーというのは計算できるのかという点です。
基礎代謝エネルギーは性別、身長、体重、年齢から計算することができます。(実際には筋肉量によって基礎代謝は変動しますが、ここでは省略します)
次に活動エネルギーはスマートウォッチを着ければ日々の消費エネルギー量を出すことはできます。とは言っても、ずっと身に付けておく必要があるため現実的ではありません。そこで1日のスケジュールからそれぞれの時間帯でどのくらいエネルギーを消費してるのかを分解した計算方法をここでは取り入れます。
最後に食事誘発性熱生産は食べたものを消化・吸収する際に消費するエネルギーなので、食べたものに大きく依存します。
各エネルギーの計算方法は後ほどご説明します。
摂取エネルギーの種類
人が摂取できるエネルギーというのは「糖質」「タンパク質」「脂質」の三つに大別できます。
これらは「三大栄養素」と呼ばれ、人が活動するために必要なエネルギーとなる栄養素になります。スーパーなどで売っている食品の成分表示欄にカロリーが記載されていますが、この三大栄養素の合計値です。それぞれ1gあたりのエネルギー量が決まっているので、実は自分でカロリーを計算することもできます。
各栄養素のエネルギー量は下記の通りです。
栄養素 | 1gあたりのカロリー | 摂取エネルギー | 主な食材 |
糖質 | 4kcal | 3.8kcal | 白米、パン、ジャガイモ |
タンパク質 | 4kcal | 2.8kcal | 鶏肉、牛肉、魚、卵 |
脂質 | 9kcal | 8.6kcal | 油、ナッツ類 |
例えば、卵1個(50g)の栄養成分は糖質0.2g、タンパク質6.2g、脂質5.2gなのでカロリーは
0.2g×4kcal/g+6.2g×4kcal/g+5.2g×9kcal/g=72.4kcal
と計算することができます。これを使うことでどれだけ食べると摂取エネルギーが何カロリーになるのか、逆に何をどれだけ食べて良いのかというラインを把握することができます。
また、摂取エネルギーとカロリーが異なるのは先ほど説明した「食事誘発性熱生産」によって消費されたエネルギーを差し引いたものです。
食事誘発性熱産生でどれくらいエネルギーを消費するかは栄養素の種類によって異なります。タンパク質のみを摂取したときは摂取エネルギーの約30%、糖質のみの場合は約6%、脂質のみの場合は約4%になります。
マクロ管理法 4ステップ
それではマクロ管理法について説明していきます。マクロ管理法は以下の4ステップを経て1日にどれくらいの量の栄養素を摂っても良いのかというのを定量的に計算する方法です。
基礎代謝エネルギーを計算する
まずは自身の基礎代謝エネルギーを計算してみましょう。基礎代謝エネルギーは人によって異なり、主な変数として性別、身長、体重、年齢を使い計算することができます。基礎代謝エネルギーの計算には「ハリスベネディクト方程式」や「国立スポーツ科学センターの計算式」など複数の計算方法が存在しますが、ここでは最も日本人の基礎代謝に沿っていると言われる「国立健康・栄養研究所」の基礎代謝計算方法を採用します。計算式は下記の通りです。
{(1238+(481×体重kg)+(234×身長cm)-(138×年齢)-(5473×性別)}/4.186
※性別は男性なら1、女性なら2
上記から分かるように体重や身長が高いと基礎代謝が上がり、逆に歳を重ねるごとに基礎代謝が下がります。例えば体重60kg、身長173cm、年齢25歳の男性であれば基礎代謝は
{(1238+(481×60)+(234×173)-(138×25)-(5473×1)}/4.186 = (1238 + 28860 + 40482 - 3450 - 5473)/4.186 ≒ 1473(kcal)
となります。もちろん水分量・体脂肪率・筋肉比率によって多少の前後はありますが、まずはこの値を計算しましょう。
活動エネルギーを計算する
次に活動エネルギーを計算してみましょう。活動エネルギーは歩いたり座ったりと日常動作をする上で消費するエネルギーになります。
そのため、計算するには1日のスケジュールからそれぞれの行動がどの程度エネルギーを消費しているか分解していきます。
例えば今日1日の行動実績が下記のようなものだったとします。
ここからエネルギーを消費している行動を抽出していきます。もちろん生活する上で細かい動作をしているため実際の消費エネルギーは変動しますが、ここでは大きなエネルギー消費をする行動のみに着目していきます。上図であれば「ウォーキング」「出勤」「帰宅」「運動」が該当します。
抽出した行動の1分あたりの消費エネルギー、行動時間からそれぞれの消費エネルギーが計算できるので、1日の消費エネルギーはその合計値となります。計算すると下記のような消費エネルギーとなります。
行動 | 1分あたりの消費エネルギー | 行動時間 | 消費エネルギー |
ウォーキング | 2kcal (歩く) | 60分 | 120kcal |
出勤 | 2kcal (歩く) | 30分 | 60kcal |
帰宅 | 2kcal (歩く) | 30分 | 60kcal |
運動 | 8kcal(有酸素運動) | 60分 | 480kcal |
合計 | 600kcal |
1ヶ月で何kg痩せたいのかを設定して1日に摂取できるエネルギーを割り出す
先ほど計算した基礎代謝エネルギーと消費エネルギーをもとに1日に摂取できるエネルギーを計算していきます。
食事誘発性熱生産を除いた1日の消費エネルギーは
1473kcal+600kcal = 2073kcal
となります。
次に1ヶ月で何kg痩せたいのかを設定します。例えば1ヶ月で1kg、1年で合計12kgのダイエットをしたいということであれば脂肪1kgで7200kcalなので1日に燃やしたいエネルギーは
7200(kcal)÷30(日) = 240(kcal)
となります。1日に燃やすことができるエネルギーは消費エネルギーから摂取したエネルギーを差し引いた分になるので
[1日の消費エネルギー] ー [1日の摂取エネルギー] ≧ [1日に燃やしたいエネルギー]
これを置き換えると
[1日の消費エネルギー] ー [1日に燃やしたいエネルギー] ≧ [1日の摂取エネルギー]
となるので左辺を計算すれば摂取エネルギーをどれくらいに抑えれば良いか分かるわけです。
[1日の消費エネルギー]と[1日に燃やしたいエネルギー]は出ているので当てはめると
2073(kcal) ー 240(kcal) ≧ [1日の摂取エネルギー]
1833(kcal) ≧ [1日の摂取エネルギー]
以上より、1日の摂取エネルギーを1833kcal以内に抑えれば1ヶ月で1kg痩せることができるという計算になります。あくまでも現実的な値を設定しましょう。
各マクロ栄養素を1日何gとれば良いか計算する
摂取できるエネルギーが分かったので、最後にマクロ栄養素に分解してそれぞれどれくらいの量摂取すべきかというのを計算していきます。
前の工程までであとはカロリー制限をすればある程度痩せるには痩せますが、各栄養素をどれくらい摂るべきかということまで分解しないと不健康な痩せ方をする可能性が高いです。
というのもごく一般家庭で出ているような食事を少し減らすというだけでは栄養に大きな偏りが生じているためです。具体的には、主食の白米やパンなどによる「糖質」が最も多いため、食事量を減らしたとしても糖質中心の食事では痩せる過程で筋肉がやせ細ってしまいます。
あくまでダイエットの目的が体のシェイプアップや健康維持なのであれば、このマクロ管理法を通して摂取する栄養素を見直してみましょう。
計算方法としては単純で下記の2工程です。
step1. 1日の摂取エネルギーを三つの栄養素に摂取割合で分割する。
step2. それぞれの摂取エネルギーから摂取量を計算する
step1. 1日の摂取エネルギーを三つの栄養素に摂取割合で分割する。
先ほど説明したように一般過程の食事では摂取割合が糖質に偏ってしまっているため、健康的に体重を落とすための割合で分割していきます。基本方針としては糖質を減らし、タンパク質を増やします。一例としては下記のような摂取割合です。
糖質 | タンパク質 | 脂質 | |
不健康なバランス | ⑦ | ① | ② |
健康的に痩せるためのバランス | ④ | ③ | ③ |
これをもとに各栄養素どれだけのエネルギーになるかを計算すると以下のようになります。
糖質 | タンパク質 | 脂質 | |
不健康なバランス | 1466kcal | 183kcal | 183kcal |
健康的に痩せるためのバランス | 733kcal | 550kcal | 550kcal |
step2. それぞれの摂取エネルギーから摂取量を計算する
次にそれぞれのエネルギー量から摂取できる量を計算します。各栄養素の摂取エネルギーはこのようになっています。
栄養素 | 摂取エネルギー |
糖質 | 3.8kcal |
タンパク質 | 2.8kcal |
脂質 | 8.6kcal |
一つ上の表からこの摂取エネルギーで割り算をすれば摂取量が計算できます。
糖質 | タンパク質 | 脂質 | |
不健康なバランス | 386g | 65g | 21g |
健康的に痩せるためのバランス | 193g | 196g | 64g |
ここまで分解するとそれぞれの食べ物をどこまで食べて良いのかというのが明確になってきます。(例えばご飯1杯(g)で糖質が40gなので1日に5杯までとか)
上記の例はあくまでも25歳男性で運動習慣があるためかなり消費エネルギーは高い部類になります。そのため、実際には各栄養素の摂取量は少なく算出されることになるかと思います。
最後に
いかがだったでしょうか。マクロ管理法は工程がいくつかあるため少し手間がかかる方法であります、定量的な計算をもとにしているため、着実に痩せたい人はおすすめの方法です。
他にもダイエットに関する記事を書いているので是非確認してみてください。
参考文献
Ganpule AA, Tanaka S, Ishikawa-Takata K, Tabata I. Interindividual variability in sleeping metabolic rate in Japanese subjects. Eur J Clin Nutr 61(11): 1256-1261, 2007.
田中茂穂. 総論 エネルギー消費量とその測定法. 特集:必要エネルギー量の算出法と投与の実際. 静脈経腸栄養 24(5): 1013-1019, 2009.