最近では健康のために何を食べるべきかという話題がより多くなってきているように感じます。
・このサプリを飲めば肌年齢が10歳若返える
・お肉を食べすぎると心筋梗塞の可能性が高くなる
・海藻を食べると髪の毛が増える
など、誰でも発信できるようになったことで膨大な健康に関する情報が飛び交っています。
しかしながら中には根拠に乏しい自分の実体験をもとになっている情報であったり、エビデンスが作為的な研究論文など真実であるとは断定しづらい情報も増えています。これはSNSによる発信だけでなく本でも同様の情報があるため、情報の取捨選択が大事になってきます。
何を捨てて何を拾えば良いかというのは、一番わかりやすい軸だと「権威のあるジャーナルに乗っていた情報が元ネタかどうか」です。学術論文であればどれも信憑性が高いというわけではなくお金を払えば誰でも掲載できるような学術誌もあります。
ここでは権威のあるジャーナルに基づいたデータをもとに健康でいるために食事で気を付けることについて述べていこうと思います。
健康でいるために食事で一番気をつけること
結論を先に言ってしまうと「自然な状態で極力食べる」ということです。
現代の食生活というのはいつの時代よりも衛生管理が整っているため、人間にとって無害で生き延びるために最も適した形で食事が提供されていると思ってしまいがちです。
しかしながら実際のところ、そうではないのです。
私たちの体というのは10万年前のホモサピエンスが誕生した時からさほど変化していないため、その当時食べていたものに体は適合しているという前提があります。
そもそも古来人類が何を食べていたかということ米や小麦などを想像しますが、農耕が始まってそのようなものを食べるようになったのは1万年ほど前です。それまでは狩猟採取を動物や魚、木の実を主食としていました。
もちろん生肉は人体に有害な虫や菌を駆除するために加熱が必要でしたが、基本的にはあまり手を加えることはなく自然な状態で食べるというのが基本になっています。昔の人は油を使って食べ物を揚げるなんて発想はなかったので、体はそのようなものを受け入れることを前提に成長してきていないわけです。
特に現代の食べ物はAGEが非常に多いため老化のスピードが速くなっています。このAGEは糖尿病の原因になるだけでなく、血管や内臓、皮膚などの全身を老化させる悪名高い物質です。
AGEは体内で生成されるだけでなく食べ物にも含まれています。このAGEは食材を高温で調理するほど増えることがわかっています。そのため下記の調理方法の順でAGEsの量は増えていきます。
生 < 蒸す < 茹でる < 焼く < 揚げる
例えば、野菜も生で食べるとAGEはほとんど含まれていませんが、炒め物や天ぷらにすると増えます。他にも菓子パンやカップ麺、冷凍ピザなど加工度合いが高いものを組み合わせると癌にかかりやすくなるため避けたほうが良いと言えるでしょう。
世の中に普及している食べ物というのは私たちが健康で長生き出来るものを売っているのではなく、売れるものを売っています。自分の健康を守るための知識と選択は自分で行う他ありません。
健康寿命はエピジェネティクスと深く関係している
長寿の家系、短命の家系など人の寿命は遺伝によって決まるところもありますが、もちろんそれだけではなく日々の生活で何を食べて、どれだけ動き、休むのかということも強く影響してきます。
エピジェネティクス(後天遺伝学)という領域があります。元々生まれる前に遺伝によって持っているDNAがありますが、これは体のどの部分についても基本的な構造は変わりません。しかしながらそのDNAに基づいて様々な体の部位を作ることができるようになるのはDNAに対してある情報が後発的に付加されているためです。これを「DNAのメチル化」と呼んでおり、それぞれの部位で必要のない遺伝子が働かないように制御する仕組みが働いています。
簡単にいうとこのDNAのメチル化というのが正常に行われないと、制御されているべき遺伝子が制御できずに細胞分裂を繰り返す過程でガンになったり病気になったりと体の不調につながります。
ではこのDNAのメチル化を正常に機能させるためにどうすれば良いかと言うと、やはり一番は食事になってきます。
2017年に発表された研究ではDNAのメチル化に良い影響を与える食べ物というのは以下のものとしています。
鶏肉、魚、野菜、果物、適量のアルコール
他にも運動、収入、教養というのも影響していることが挙げられています。
Epigenetic clock analysis of diet, exercise, education, and lifestyle factors
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28198702/
白い炭水化物と茶色い炭水化物
同じ炭水化物でも白い炭水化物と、茶色い炭水化物があります。
一般的に茶色い炭水化物の方が食物繊維やミネラルが多いので健康に良いと言われているため、意識的に玄米などの茶色い炭水化物を摂るようにしている人もいるかと思います。
先ほど述べたように狩猟採取の時代にはこのような炭水化物が大半を占めるような穀物はほとんどなかったため、食べるのを控えるに越したことはないですが、摂るのであれば栄養素が豊富な方を選ぶのは私も賛成です。
しかし、茶色い見た目をしていればなんでも栄養が豊富かと言われるとそうではないケースというのもあります。
例えば蕎麦や全粒粉パンなどが挙げられます。
一つ目の蕎麦について、蕎麦の中には「二八蕎麦」と言ってうどん粉2割、蕎麦粉8割で作られた蕎麦があります。
蕎麦粉だけでは粘性が足りず、ぼそぼその食感になってしまうためつなぎのためにうどん粉を混ぜています。そのような蕎麦ある一方で、町の蕎麦屋ではこのうどん粉と蕎麦粉の比率が逆転しています。実は見た目は蕎麦、中身はうどんという蕎麦が大半なのです。
全粒粉パンも同様に少しでも全粒粉が混ざっていれば「全粒粉パン」と表示して売ることが出来てしまいます。白い炭水化物の方が食べた時の甘みを感じやすいので、白い小麦粉を混ぜて安易に美味しい全粒粉パンで売った方が、売れてしまうわけです。
このような企業の目論みに踊らされることがないように注意しましょう。(何度も言いますが食べないに越したことはありません!)
豊富な栄養素は「全体食」にあり
肉や白米などスーパーに売っているものの大半というのは、動物・植物の一部を加工して売られています。
例えば白米であれば、収穫した状態だと「籾(もみ)」と呼ばれる黄色い殻に包まれています。この籾の殻を除去することを「籾すり」と言い、こうして取出したお米を「玄米」と言います。玄米はぬか層に包まれており、このぬか層のぬかを除去することで「白米」になります。
この削ったり加工する過程を経ることで様々な栄養素が削り取られて殆どが炭水化物になっています。逆に言うとそのような加工がされる前の部分も含めて余すことなく食べるようにすれば豊富な栄養素が摂れることになります。
昔の人は肉ならば脂肪から骨の骨髄まで残すことなく全部を、魚であれば頭から尻尾まで全部食べるということをしてきています。その結果、現代人よりもビタミンやミネラルなどの摂取量が物によっては10倍以上であったことが分かっています。
ここで言いたいのは何も狩猟採取時代に戻って動物の骨まで啜って生きよう!という事ではありません。肉であればももばかり食べるのではなくレバー、ハツ、ホルモン、テッポウなど色々な部位を食べて栄養の偏りを減らしましょうという事です。
ぜひ意識して日々の食生活に取り入れてみてください!