巷では糖質制限ダイエットが流行っているけど、本当に効果があるのか不安。糖質以外の食事は摂っても良いものなのでしょうか?
みなさんは今の食生活に疑問を感じたことはありますでしょうか。今朝食べたご飯を思い出してください。なぜそれを食べましたか?
- 幼少期から食べているから
- 好物だから
- 健康な状態を維持したいから
- 痩せたいから
- なんとなく
人それぞれ理由はあるかと思います。もしこの中の「健康な状態を維持したいから」「痩せたいから」という項目に当てはまるのであればこれをを実践するだけで実現できます。
主食を抜いてください。
これをするだけで大半の人は痩せて、前よりも活力のある毎日を過ごせるようになります。
なぜ主食を抜くと健康になり、痩せるのかを解説していきます。
主食を抜くと血糖値が安定して血管が傷つきづらくなる
主食を抜くことで炭水化物の摂取量が減るため血糖値が安定します。血糖値が安定すると言うことは高血糖によって血管を傷つけるリスクを抑えることにつながってきます。
そもそも、血管は体の隅々まで栄養素を運ぶ重要な役割を担っています。この血管が何かしらの理由で傷つけられたりゴミが溜まると病気につながります。
何かしらの理由というのは複数ありますが、その一つの理由が高血糖によるものです。
高血糖となる理由はシンプルでご飯やパン、スイーツなどの糖質が多分に含まれている食べ物を摂取すると血中の糖質量が多くなるため、高血糖となります。
では、なぜ高血糖になると血管が傷つくのかというと主に下記2つの理由があります。
- 血管の内壁が酸化するから
- AGEが蓄積されて血管が硬くなるから
血管の内壁が酸化するから
まず1つ目ですが、高血糖になると血管の内壁が酸化します。鉄が錆びた時を想像していただければわかるかと思いますが、金属が酸化することでボロボロになりますよね。これが血管の中でも起きています。
体内には酸化反応とこれに抗うための抗酸化反応という機能が備わっていますが、高血糖になると酸化反応が勝ってしまいます。したがって
酸化反応で血管が酸化する → 血管がボロボロになる → 弛緩・収縮の機能が悪くなる → 動脈硬化や心疾患の病気につながる
ということになるわけです。
AGEが蓄積されて血管が硬くなるから
2つ目は高血糖になるとAGEが大量に生成されるためです。AGEとは別名で「終末糖化産物」とも呼び、糖質とタンパク質が熱エネルギーで結びついた老化の原因にもなる物質です。
このAGEも血管内で溜まりすぎないように「マクロファージ」という白血球の一部が食べてくれるのですが、AGEが大量に生成されるとマクロファージが処理しきれなくて血管中に溜まっていきます。
AGEが溜まっていくと、血管が詰まったり(血栓)、血流が悪くなることで細胞への栄養供給が滞り、様々な病気に繋がってしまいます。
太る原因は油よりも糖質
油ものは高カロリーのものが多いから太ると言われたことありませんか?
確かに三大栄養素を並べてみると脂質が単位グラムあたりのカロリーは高いと言えます。
糖質 4kcal
タンパク質 4kcal
脂質 9kcal
単純にカロリーだけで判断すると「脂質」を摂ると一番太りそうですが実はそういうわけでもありません。
アメリカの全国健康栄養調査(NHANES)によると下記のことが判明しています。[1]
- (前提)食事から脂質の量を減らして糖質の量を増やして肥満度を測る
- (前提)調査前後での総摂取エネルギーは同じ
- (結果)糖質の量を増やしたところ全体の肥満度が16.9%も上昇した(14.5%→30.9%)
つまり、「脂質」よりも「糖質」を摂る方が肥満につながるという事がこの調査内容によって分かったのです。
主食を抜くだけで糖尿病発症率が1.5倍も下がる
糖質を摂りすぎると発症しやすくなるのが「糖尿病」です。
実はみなさんが当たり前のように食べている白米を抜くだけで糖尿病の発症率が激変することが分かっています。
45歳〜75歳までの男女6万人を対象としたコーホート研究(要因を持つ人と持たない人を追跡調査した結果をまとめた研究)からは次のことがわかっています。[2]
- (前提)白米の摂取量から被験者を四つのグループに分ける
- (前提)さらにその中でも1日に1時間以上の運動をしているグループとしていないグループに分ける
- (結果)女性及び運動をしていない男性は白米の摂取量が増えるほど糖尿病発症率が高くなった
つまり運動している男性のグループのように毎日摂取している糖質をエネルギーとして消費できていないグループというのは、やはり摂取している糖質に比例して糖尿病発症率も上がることが言えます。
また、女性においては、白米に雑穀などの食物繊維が豊富な食材を混ぜる人と比べて混ぜない人は糖尿病のリスクが上昇していたことから、いかにして急激な血糖値上昇を抑えるのかがポイントになってきます。
血糖値上昇を抑える方法はいくつかありますが、簡単にできるのは下記です。
- 食べる順番を変える(副菜→主菜→主食)
- 主食を玄米などの食物繊維が豊富なものに変える
- ゆっくり食べる
どれもすぐにできるものなので身に染み込むまで繰り返し行うようにして習慣化しましょう。
脂質の消費が人間本来の機能
これまでの説明で糖質によって肥満や糖尿病などの生活習慣病に繋がっていることはわかるかと思います。
これをもとに、主食を抜いて代わりに主菜を多くするような食事に変えるとどうなると思いますか?
栄養面から考えると糖質が減って相対的に高脂質・高タンパクの食事になります。先ほどのNHANESの調査結果でもありましたが、糖質が他の栄養素に置き換わることで太るどころか健康的に痩せていきます。
なぜ健康的に痩せるのかというと脂質の消費が人間本来の機能だからです。
もう少し深堀していくと、その秘密は人間の代謝にあります。
代謝というのは食べ物を取り込み、それを細胞や組織内の化学変化で様々な物質に分解・合成して吸収、エネルギーに変える過程を指します。
人がエネルギーに変える主なエネルギー源は下記二つです。
- ブドウ糖
- ケトン体
一つ目の「ブドウ糖」はグリコーゲンを分解して生成されています。「脳を動かすために糖分摂取しよう」という発想をしたことがある人は多いかと思いますが、この時に使われているものの一つがこのブドウ糖です。
二つ目の「ケトン体」は脂肪酸の代謝で作られる物質です。先ほど「脳は糖分(ブドウ糖)を使っている」と言いましたが、実際にはこのケトン体もエネルギー源として使われています。
ここで重要なポイントはどちらのエネルギー源が体を動かす主なガソリンの役割を果たしているかです。
ブドウ糖だと思いがちですが、体で使われているエネルギーの大半は、実はケトン体(脂肪酸)です。
考えてみれば当たり前なのですが、お腹周りのお肉は「脂肪」です。エネルギーとして使われる際は、分解されて「ケトン体」になることからも体のエネルギー貯蓄がブドウ糖ではないことがわかります。
もちろんブドウ糖もグリコーゲンに合成されて肝臓などに蓄えられますが、せいぜい250g程度です。10kgや20kgある脂肪の比ではないことは一目瞭然ですね。
このことから人類は進化の過程で、普段は脂肪を燃やして、急激なエネルギー消費では非常用のグリコーゲンを利用するようになっています。
主食を摂りすぎると脂肪が燃えにくくなる
普段は脂肪燃焼しているならご飯食べても良いのでは?
そう思った方もいるかと思います。先ほどの説明を補足すると「本来は」普段は脂肪を燃やして、急激なエネルギー消費では非常用のグリコーゲンを利用するようになっています。
では現代はどうなっているかというと、1日3食、白米やパンなどの精製された炭水化物を食べて、白い砂糖が大量に入ったお菓子や飲み物を摂っているような生活だとブドウ糖過剰になります。
ブドウ糖過剰になると体では以下のようなことが起きます。
- 主なエネルギー源として使われるはずだった脂肪がほとんど使われなくなる
- 血糖値を下げるためにインスリンが大量に分泌される
- ブドウ糖が骨格筋や筋肉に取り込まれて優先的に消費されるようになる
- 余ったブドウ糖が体脂肪として蓄えられる
上記より明らかなように、糖質がエネルギーとして使われるため、脂肪をエネルギーとして消費する余地がなくなってしまいます。
これが継続して毎日の食事で繰り返されているために脂肪が燃えにくくなっているのです。
主食を完全に断つというのは難しいという方へ
主食を抜くと健康的に痩せることは分かったけど、お米を食べないとお腹が満たされなさそうだし、継続するのが大変そう。
ご飯の量を減らせば痩せるなんて誰でも分かっているわけで、それが実践できていたら世の中に肥満体型の人が増えるわけはないですよね。
しかしながら、「なんとなく主食を減らしてみようとする人」と「糖質が脂肪燃焼の妨げになっているし、その分主菜を摂れば良いから主食を減らしてみようとする人」では大きな差が生まれます。
なんとなくダイエットしているだけでは結果が出ないと諦めてしまいやすいですが、根拠に基づいたダイエット法を知っていたり、人間の本来の機能を理解しているだけでも行動に違いが生まれてきます。
糖質についてもう少し知りたい方は下記を参考にしてみてください。
実践する際には徐々に主食を抜いた食事にシフトていくことがポイントかと思います。元々朝9時に起きていた人が、急に明日から朝5時に起きようと試みても続かないことと同じです。
日々の小さな変化を積み重ねて健康的にダイエットを成功させましょう。
参考文献
- Quanhe Yang , Zefeng Zhang , Edward W Gregg , W Dana Flanders , Robert Merritt , Frank B Hu. "Added sugar intake and cardiovascular diseases mortality among US adults". JAMA Intern Med. 2014 Apr;174(4):516-24.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24493081/ - Akiko Nanri , Tetsuya Mizoue, Mitsuhiko Noda, Yoshihiko Takahashi, Masayuki Kato, Manami Inoue, Shoichiro Tsugane; Japan Public Health Center-based Prospective Study Group. "Rice intake and type 2 diabetes in Japanese men and women: the Japan Public Health Center-based Prospective Study". Am J Clin Nutr. 2010 Dec;92(6):1468-77.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20980490/