今回はこのような悩みに答えていこうと思います。

先に結論を述べてしまうと、まずは下記2点を食事で取り入れば高い確率で認知症の発症を遅らせることができます。

  1. 糖質制限
  2. 抗酸化作用の強い食べ物を摂る

それでは詳しく解説していきます。

認知症の大半はアルツハイマー病によるもの

アルツハイマー病の患者割合

そもそも、認知症は何が原因でなるのでしょうか。認知症の主な原因となっているのは大半が「アルツハイマー病」によるものです。

アルツハイマー病って特殊な病気で、多くの人は罹る事なんて無いんじゃないの?

下記グラフは九州大学大学院医学科附属大学病院コーホートセンターの調査結果における、「年代別認知症発症率の推移」になります。この結果から年を重ねるにつれて認知症を発症する割合が65歳以降で急増していることが分かります。

(出典)厚生労働省研究班「日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究

また、厚生労働省老健局によると認知症患者の9割以上が三大認知症(アルツハイマー型認知症、脳血管性認知症、レビー小体型認知症)で中でも「アルツハイマー型認知症」が67.6%と大半を占めています。

(出典)厚生労働省老健局「認知症施策の総合的な推進について
アルツハイマー型アミロイドβやタウというタンパク質が脳内に蓄積されて脳細胞や神経細胞が死滅することで起きる認知症
軽度の認知症(MCI)から始まり徐々に症状が進行するため、初期段階では自覚症状が無い事が特徴
脳血管性動脈硬化などによって脳の血管が詰まることで十分に栄養が行き渡らずに脳細胞が死滅することで起きる認知症
レビー小体型脳の神経細胞にレビー小体と呼ばれる異状な物質ができることで生じる認知症

このことから、アルツハイマー病というのは誰もが罹る可能性のある病気である事が分かるかと思います。
従って、認知症にならないためにも、まずアルツハイマー病とならないように予防対策を取るという事が第一優先となります。

アルツハイマー病とは

アルツハイマー病の原因

それでは予防対策を講ずるために、まずは敵であるアルツハイマー病がどのようなものなのかを知る事から始めます。

そもそも、アルツハイマー病になる原因というのは主に下記二つのタンパク質によるものと考えられています。

  1. アミロイドβ
    脳が活動してきている時に出てくる老廃物で、インスリン分解酵素を用いて分解されて脳の外に排出されます。
  2. タウ
    脳の神経細胞に栄養を運ぶ通路を支える役割を担っている。

若い頃はインスリンの分解酵素でアミロイドβを分解して不廃物として排出されるため問題にはならないのですが、加齢などの要因でこの分解と排出のサイクルが十分に回らないと、アミロイドβが脳内に溜まるようになります。
そうするとアミロイドβ同士がくっ付いて塊となり、脳細胞を破壊する毒を持つようになります。

また、アミロイドβが固まりを作ることでタウというタンパク質も本来の栄養を運ぶ通路の役割を脱線して、同様に脳細胞を破壊する毒を持つ塊となっていきます。

つまり、アルツハイマー病というのはアミロイドβとタウが脳内で作る塊が毒を持つことによって引き起こされる病気ということになります。

アルツハイマー病の進行ステージ

先述したように、アルツハイマー病はアミロイドβとタウが脳内で溜まっていくことで進行する病気のため、ある時急に発症するというよりもじわじわと進行するものになります。

そのため、症状に応じて幾つかのステージに分けられています。大きく分けると下記3段階です。

  1. 通常
    認知機能の障害はない
  2. MCI(軽度認知機能障害)
    忘れ物や普段使っているもの(スマホやメガネなど)を置いた場所を忘れることが頻発する。加齢のせいにされることが多いため、周囲の人も認知機能の低下が進んでいることに気づきにくい程度の症状。
  3. 重度認知症
    最近のことが全く思い出せなくなったり、箸の使い方など普段行っている動作ができなくなる。人の力を借りないと背活することが困難な程度の症状

傾向として下記のことがわかっています。

  1. 「通常」→「MCI」へ遷移するのは脳にアミロイドβが溜まり始めてから二十年後ほど
  2. アミロイドβが溜まり始めるのは50歳前後が多い
  3. MCIと一度判断されても29%の人はその後「通常」状態であると判定される
  4. 「MCI」→重度認知症に遷移する可能性は五年で40%ほど

MCIは健常な人の加齢による物忘れと区別の付け辛いアルツハイマー病の入口になります。
自覚症状が出ないためアミロイドβが溜まり始めているかというのは実際に「アミロイドPET」のような検査を受けないとわかりません。

年相応とは思えないもの忘れや基本動作における記憶障害が起こっているのがMCIです。

MCIはアミロイドβが溜まり始めて二十年ほどで該当することになり、何も対策をしなければその五年後には重度認知症に移行する可能性が40%もあります。
MCIと重度認知症の違いは「独立して日常生活ができるのか」になります。
これをADLと呼び、食事・トイレ・家事・入浴・着替えなど生活する上で最低限の動作を指します。

アルツハイマー病の進行を遅らせる食事対策2選

それではアルツハイマー病の進行を遅らせる食事について解説していきます。

冒頭でも述べましたが、下記2点を食事に取り入れてみてください。

  1. 糖質制限
  2. 抗酸化作用の強い食べ物

認知症対策の食事その1:糖質制限

実はアルツハイマー病と糖尿病を予防する食生活というのは基本的に同じです。
それは、血糖値を上げない、特に食後の血糖値スパイクを起こさないような食生活をする事です。
そのために最も効果的なのが「糖質制限」なのです。
糖質の摂取を抑えれば血糖値が上がりづらくなるので直接的に効果があります。

ではなぜ血糖値を上げないとアルツハイマー病を予防出来るかというと、結論アミロイドβを分解する機能が向上するからです。
私たちの身体は血液中の糖質量をインスリンというホルモンで調整しています。
血糖値が高くなると血管を傷つけて酸化ストレスが強くなり、動脈硬化になって血管がボロボロになってしまうため、インスリンは血糖値を下げることでこの血管が傷つくのを防いでいます。

日常的に糖質が多い白米やパン、うどんなどの主食をお腹いっぱいになるまで食べていると、血糖値が上昇します。
それを正常値に戻そうと大量のインスリンが膵臓から分泌されて脂肪細胞などに吸収させます。
大量のインスリンを分泌するとそれを分解する酵素が大量に消費されるのですが、この分解酵素はアミロイドβの分解でも使われるため、インスリン分解で使われるとアミロイドβが分解しきれずに脳に溜まってしまうという事です。

とは言っても極端に糖質を制限するというのも過酷ですし、そもそも健康を害するリスクもあるので主食を血糖値の上がりづらいものに代替するのがおすすめです。
もちろん主食を抜けるに越した事はないので、主食を抜くとどのようなメリットがあるのか気になる方は下記を覗いてみてください。

主食を抜くだけで健康的に痩せるのか糖質制限ダイエットで悩んでいる人へ

認知症対策の食事その2:抗酸化作用の強い食べ物

細胞が劣化する最大の危険因子は「活性酸素による酸化ストレス」です。特に脳は酸化ストレスに弱く、この酸化ストレスを抑えることが脳の劣化に対しても認知症に対しても効果的です。

その酸化ストレスを抑える一つの手段が「抗酸化作用の強い食べ物を摂る」ということです。

体内では活性酸素という他の物質を酸化させる力の強い酸素が産出されます。
活性酸素は、細胞伝達物質や殺菌効果があるため免疫機能として働く一方で、過剰な産生は細胞を傷害し、がん、心血管疾患ならびに生活習慣病など様々な病気をもたらす要因となります。

この活性酸素が大量に発生する要因は下記の5つです。

  1. ストレス
  2. 暴食
  3. アルコール過剰摂取
  4. 喫煙
  5. 激しい運動

活性酸素は酸素と水に分解して無毒化する機能が人には備わっていますが、上記よって活性酸素が大量に生成されたり加齢によってその機能が弱体化すると分解が追いつかなくなってしまいます。

その対抗策がビタミンやポリフェノールなどの強力な抗酸化作用を持つ食べ物を継続的に摂ることなのです。

具体的にどのような食べ物を取れば良いか以下の記事に書いたので確認してみてください。

脳の老化を予防する食べ物4選 脳の老化を防ぐスーパー栄養素

その他の認知症対策

食事以外でも認知症を予防する方法はいくつかあります。
自分は物忘れはないから大丈夫と思っている人もMCIの初期に入っている事は少なくないので、予防対策を早期に実施することに越した事はありません。
ぜひ生活の一部に取り入れていただければと思います。

  1. 新しい場所に行く
    人は老化が進むと今までに経験したことがないことや慣れないことがストレスとなりやすくなるため、出来るだけ心地の良い今まで通りの環境を選択しやすくなります。(いつものスーパーに行く、同じ地域でずっと生活する等)
    しかし、脳の神経細胞は未知の出来事に遭遇することで、程よいストレスが掛かり活性化します。
  2. よく笑う
    笑顔が多い人は愚痴や妬みばかり言っている人に比べて認知症になりにくいことがわかっています。ネガディブな思考は脳にダメージを与えて認知機能が低下するため、注意が必要です。
    一方で笑うことで免疫細胞であるナチュラルキラー細胞が活性化して、心身のストレス状態が改善することがわかっています。
  3. 人と会話する
    分からないことや忘れてしまったことをスマホで調べてしまうと、自分の頭で考えたり記憶する機会が減ってしまい、認知機能の低下につながります。
    おすすめは、誰かと会話をすることです。会話をすることで何かを考えたり記憶を呼び起こすトレーニングになるのでぜひ取り組んでみてください。
  4. メモをとる
    会話同様に、記憶や思考を紙に書き出すという作業は脳の認知機能を向上させます。また、今考えている不安や悩みを書き出すとストレス低減の効果があります。おすすめは赤羽雄二さんが推奨している「0秒思考」です。

最後に

今から見直せば認知症は予防できる

認知症にならないためには何よりも、早期での発見と対策をすることが重要になります。
現時点では、認知症を完全に克服する方法はないとされています。
アルツハイマー病はアミロイドβと異常なタウが脳内に溜まって毒となり、脳細胞や神経細胞が死滅してしまう病気のため、たとえアミロイドβや異常なタウを全て排除できたとしても、それまでに失った細胞は戻ってこないからです。

また、現時点で認知症を完全に治す治療というのは見つかっていません。
全く治療法がないというわけではなく集中力や記憶力と関連のある神経伝達物質である「アセチルコリン」を薬で増やすことで症状を遅らせる処方はありますが、あくまでも進行を遅らせるためで根本的な治療薬ではありません。

従って、この病気に対して出来る事は、いかにして進行を遅らせるのか注力して健康な状態のまま生涯を全うするかという事になります。

認知症は治らない。これが現実です。
しかし自覚症状が無い方もMCIレベルの方も認知症と判断された方も、認知症の進行を遅らせるための取り組みを今から考えて実践していけば、いつまでも今の脳を維持することが可能です。

いつまでも健康な脳を維持して充実した生活が出来るよう、今から食生活を見直してみては如何でしょうか。

参考文献

  1. 厚生労働省老健局. 『認知症施策の総合的な推進について』
    https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000519620.pdf
  2. 厚生労働省研究班. 『日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究』
    https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/2014/141031/201405037A/201405037A0001.pdfhttps://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/2014/141031/201405037A/201405037A0001.pdf

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です