健康診断を受けたらコレステロール値が基準値より高かったけど、コレステロールが高いと健康に悪いの? コレステロールについて詳しく知りたい
今回はこのような悩みに応えていこうと思います。
「コレステロール」と聞くと下記のようなイメージを持っているかもしれません。
- 揚げ物などの脂っこいものに多く含まれている
- 体に悪い
- 血液をドロドロにする
健康診断でも血液検査からHDL(善玉コレステロール)値やLDL(悪玉コレステロール)値、総コレステロール値が測定されて健康の良し悪しを付けられて、高ければ動物性脂質を控えるように忠告されます。
中には、医師からコレステロールを低下させるためのスタチン系の薬をもらって飲んでいる人もいるかもしれません。
コレステロールは少ない方が良いと考えてしまいがちですが、それは大きな間違いです。
それどころか、コレステロールは人間にとって必要不可欠の物質であり、少し高いからといって危険ということもありません。
今まで「悪玉」と呼ばれてきたLDLコレステロール値も、低い値より高い値の方が死亡率が低いことが分かっています。(1)
今までのコレステロール値が高いと健康に悪い常識に振り回されてきた人もいるかと思うので、コレステロールが必要な理由と、その上で食生活で気を付けることを説明していきます。
コレステロールはなぜ必要なのか
コレステロールの役割
まず、コレステロールとはどのような役割を持っているのかについてです。主な役割は下記です。
- 人間の体にある60兆個の細胞の細胞膜の原料になる
- 男性ホルモンや女性ホルモン、副腎皮質ホルモンなど、複数のホルモンの原料になる
- 消化液である胆汁やビタミンDの原料にもなっている。
上記以外にもありますが、生きる上で必須の物質であり、毒ではないことは分かるかと思います。
またコレステロールには下記2つに大別されます。実際はカイロミクロン、VLDL、IDLなどもありますが簡略のため割愛します)
- HDLコレステロール(低比重リポタンパク)
- 全身の古くなったコレステロールを回収して肝臓に戻す「回収屋」
- タンパク質比重が高く比較的粒子サイズが小さい
- LDLコレステロール(高比重リポタンパク)
- 肝臓から新鮮なコレステロールを全身に行き渡らせるための「運び屋」
- 脂質比重が高く粒子サイズが大きい
※「リポ」とは脂質を指します。なので「リポタンパク」とは脂質とタンパク質が結びついた物質です。コレステロールは油性のため血液に溶けることはできません。そのため水溶性ののタンパク質と結合することで「リポタンパク」として血液中を流れています。
※「低比重」「高比重」というのは脂質とタンパク質に比率のことで、脂質に対してタンパク質の比重が「低比重」か「高比重」かということです。
物質的に似ている両者ですが、実は逆の役割を担っています。
LDLによって血流に乗って全身にコレステロールを運び、あるものは細胞膜になり、あるものはホルモンやビタミンDになったりと活用されます。
そして生命活動によって古くなった組織と新しい組織が入れ替わります。
HDLはその古い組織に含まれるコレステロールを回収して肝臓に戻されると、そこで再びリサイクルされることになります。
このことからも分かるように、HDLを善玉、LDLを悪玉と呼ばれていますが、どちらも脂質とタンパク質が結合してできているもので役割が違うだけで、善玉が善く、悪玉が悪い、ということはありません。
コレステロールの8割は肝臓から作られている
全身に巡っているコレステロールの8割は肝臓から作られたものが供給されており、実は食事から摂取されたものは残りの2割しかありません。
脂っこいものを摂るとコレステロール値が上がるから控えた方が良いとよく言われますが、体内のコレステロールの大半は肝臓が生成しているため、食事によって大きく変動することはありません。
LDLコレステロールが「悪玉」と言われる理由
LDLコレステロールが悪玉と呼ばれている原因の一つは「動脈硬化」を促進する要因であるとされているからかと思われます。
アメリカの死亡要因の1位が心筋梗塞ですが、これは心臓の血管が詰まり心筋細胞に酸素が行き渡らなくなって壊死する病気ですが、これは動脈硬化によって引き起こされています。
ある調査では動脈硬化を起こしている血管を調べたところ血管内にLDLコレステロールが見つかったため「動脈硬化=LDLコレステロール→悪玉」という構図ができてしまい、「心筋梗塞を防ぐにはLDLコレステロールを減らした方が良い」という考え方が広まっていったわけです。
実際は「動脈硬化=LDLコレステロール」というのは嘘で、血管系の炎症が原因であり、LDLコレステロールは炎症した細胞膜に、コレステロールを運ぶために集中していただけに過ぎない、という事が研究の結果わかっています。(2)
つまり、LDLコレステロールは体を壊すような働きをしているのではなく、細胞膜の修復という体を治すための働きを忠実に果たしているわけです。
これは私の憶測ですが、「悪玉」と広く呼ばれるようになった原因の一つは製薬会社による印象操作だと考えています。
日本の健康診断で規定されている悪玉コレステロールの基準値というのは世界的に見てもかなり厳しく設定されています。
そのため、健常者だとしても少しLDLコレステロールが高いと病人予備軍として扱われ、「悪玉」が多いと不安を煽り、本来であれば一切飲む必要のないコレステロール低下薬を服用してしまう人が少なくありません。
また、コレステロール低下薬として「スタチン」という肝臓でのコレステロール合成を阻害する薬がよく使われますが、肝機能障害やうつ症状などの副作用が強く出ることがあります。
民間病院や製薬会社も営利企業ですから、利益追求することは全く問題ないですし、そうであるべきと思っていますが、このような印象操作で健康を害されることがないように、各自が正しい常識を身につける必要があります。
コレステロール新常識5選
それでは世間で広まっているコレステロール常識を覆す新常識について説明していきます。
先に結論を述べると下記5点になります。
- 卵を食べても高コレステロールにはならない
- コレステロール/中性脂肪の多い食品を食べても太らない
- コレステロール値は高い方が死亡率は低い
- 年齢とともにコレステロール値が上がるのは正常な働き
- 健康診断は不安を煽って儲ける健康ビジネス
卵を食べても高コレステロールにはならない
コレステロール値を抑える手段として、卵を食べるのを控えるというのがよく言われます。
確かに卵は1個あたり190mgのコレステロールを含んでおり、他の食品と比較してもかなり含有量が多いことが特徴です。
そのため、卵を食べすぎるとコレステロール値が上昇すると今まで考えられていましたが、実際には何個食べても対して影響はありません。
それどころか、卵を積極的に食べる方が、体の炎症レベルが低下してLDLコレステロール値が下がることがわかっています。
また、先ほども述べたように体にあるコレステロールの8割は肝臓で生成されています。
多少コレステロールを摂取したとしても、肝臓が体内のコレステロール量を調整してくれるため、コレステロール値が高くなりすぎるということはありません。
日本脂質栄養学会のコレステロールガイドラインでも「コレステロール摂取量を増やしても血清コレステロール(TC)値は上がらない」と結論付けています。
とは言え、何事も過剰な栄養摂取はマイナスに働くことがあるので、多くても1日数個以内にしておきましょう。
コレステロールや中性脂肪の多い食品を食べても太らない
脂っこいものを食べると太るというのは幻想です。(もちろん食べ過ぎれば太りますが)
私たちのお腹周りについている脂肪は確かに中性脂肪ですが、摂取したコレステロールや中性脂肪だけがお腹周りについているわけではなく、大半は炭水化物の過剰摂取によるものです。
炭水化物のうち糖質は消化吸収される過程で中性脂肪になり最終的に脂肪細胞に取り込まれます。厚生労働省の「平成 29 年
国民健康・栄養調査結果の概要」によると現代人は「糖質:脂質:タンパク質」をおよそ「15:3:4」ほどの割合で取っています。(3)
これは博多ラーメン麺大盛を凌駕する糖質比率です。
現代人は糖質過剰であり、その影響でメタボリックシンドロームや第二型糖尿病が増加傾向にあります。
太ることを気にして油ものを気にしている人はまずは主食を抜くことから始めてみてください。
私も色々とダイエットを試してみましたが、これが一番無理なく続けられて着実に結果を得ることが出来たのでぜひ試してみてください。
詳しくはこちら>>>主食を抜くだけ糖質制限ダイエット 糖質制限をすると健康的に痩せる理由
ただし、油ものは高温で調理していることが多く、老化の原因であるAGEを多く含んでいるため食べ過ぎには注意が必要です。
詳しくはこちら>>>アンチエイジングの基本を知ろう 老化の3大原因はこれ
コレステロール値は高い方が死亡率が低い
コレステロールが高いと健康に悪影響があるとされていますが、実際にはコレステロール値が高い人の方が死亡率が低いことがわかっています。
日本脂質栄養学会のコレステロールガイドラインの調査でLDLレベルと10万人当たりの原因別死亡人数を調べたところ下記のことが分かっています。
- 男性の場合
- Lç140~159mg/dlで死亡数が最も少ない(2%前後)
- LDLコレステロールが79mg/dl以下で死亡数が最も多い(3.5%前後)
- LDLコレステロールが100mg/dl以上は総じて死亡数が少ない
- 女性の場合
- LDLコレステロールが120mg/dl以上は総じて死亡数が少ない
このことからLDLコレステロール値は高いほど、死亡率は低くなることがわかります。
今まで悪玉と呼ばれていた物質も、血中に多く含まれるほど長寿になるということになります。
年齢とともにコレステロール値が上がるのは正常な働き
人によっては年をとると共にコレステロール値が少しずつ上昇してきて、スタチンを勧められた人もいるかもしれません。
コレステロール値が上昇していくことに不安が募るかと思いますが、この体の変化は正常な働きです。
上記でも述べたようにコレステロールは体の細胞1つ1つの細胞膜をはじめとして、体を作る大事な材料になっています。
加齢で免疫力が落ちたり代謝が落ちることによって掛かる負荷を補うためにコレステロールが肝臓で生成されて補強しようと働いています。
つまり、加齢でコレステロール値が上昇するのは体にとって自然な変化であり、コレステロール低下薬で無理に食い止めるというのは自ら老化を進めようとする行動に他なりません。
もちろん例外はあるので、本当に自分に必要な処方なのかを精査するのが重要です。
そのためにも、まずは基準を知ることから始めるのが良いかと思います。
健康診断は不安を煽って儲けるビジネス
前もって断っておくと私は毎年健康診断を受けています。
かなり過激な表現にしましたが、皆さんは毎年受ける健康診断の結果に一喜一憂していませんか。
日本の健康診断は世界的にみても正常値の範囲がかなり狭く設定されています。
BMIを例えに上げると、欧米の正常値基準は18.5~29.9までの範囲に対して、日本は18.5~24.9までが正常値で24.9~29.9は肥満と分類されます。
しかしながら、この範囲は日米共に死亡率が最も低いグループなのです。
つまり、健常者でも平気で病人扱いされ、再審査・副作用のある薬を処方するようにと忠告されるといったことが起きています。
このような、誤った健康診断の基準値や誇大表現の情報に振り回されることは卒業しましょう。
最後に:正しい知識を身につけて自分の体は自分で守る
資本主義社会において、健康を謳う商品も健康より会社の利益を追求が最優先されます。
体にとって良いものよりも、より多くの人が使ってくれるものが普及するようになっています。
もちろん、それらの薬で実際に病気が改善して助かっている人がいることは事実です。
しかし、多くの人にとっては不必要な薬や治療を、不安だからという理由で服用している人が多くいるのも現状です。
したがって最も重要なことは、掛かりつけの医者やニュースで騒がれているような事を鵜呑みにするのではなく、正しい知識を身につけて自分の体は自分で守ることだと私は思います。
コレステロールは悪くはない。中性脂肪自体も体に悪いものではないし、脂肪の多い食事をしたから太るというのも極端です。
過去の常識にいつまでも縛られることなく、本当に自分の体にとって良いことは何かを見直す機会になれば幸いです。
参考文献
- 大櫛 陽一, 小林 祥. "日本人はLDL-Cが高い方が長生きする". J. Lipid Nutr. Vol.18, No.1 (2009)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jln/18/1/18_1_21/_pdf/-char/ja - SCIENTIFIC AMERICAN May 2002 Volume 286, Issue 5, p29-37
- 厚生労働省. 『平成 29 年 国民健康・栄養調査結果の概要』
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000351576.pdf - 大櫛陽一(2012). 『100歳まで長生きできるコレステロール革命』. 永岡書店
- 日本脂質栄養学会 コレステロール ガイドライン策定委員会. 『長寿のためのコレステロール ガイドライン 2010 年版』
http://jsln.umin.jp/pdf/guideline/guideline-abstractPDF.pdf