自分に自信がなく、周囲からどう思われているのかが気になってしまう。目標はなく、目の前のことに追われる日々で不安と悩みが募る一方。。どうしたらこの負のループから抜け出すことができるのか知りたい。
今回はこのような悩みを解決していきます。
大小あれど誰もが悩みや不安を持って生きているかと思います。その大半は他人との人間関係や自身のことであり、一つ解消したと思ったらまた一つ悩みが生まれてと終わりがありません。
生活する上で出会う様々な人間関係の障害を克服するためにぜひおすすめしたいのが「アドラー心理学」です。
ジームント・フロイト、カール・グスタフ・ユングと並んで心理学における巨頭であったアルフレッド・アドラーの思想である、このアドラー心理学とは一体どのようなものなのか、実生活にどのように生きるかを説明していきます。
また、自分に対する「不安」「悩み」がある方はこちらも参考にしてみてください。
詳しくはこちら>>>【今日から使えるアドラー心理学】自己理解を深めて「不安」「悩み」を解消する考え方8選
アドラー心理学とは
アドラー心理学の誕生
アドラー心理学は名前の通りアルフレッド・アドラーによって生み出された思想です。
1870年にウィーン郊外でユダヤ人家系に生まれたアドラーですが、幼い頃から喘息などの持病を持っており体つきも弱かったと言われています。
学校での成績も良かったわけではありませんが、父親の影響により身体障害や劣等感との付き合い方を教わり、精神科医になります。
その後32歳になったアドラーはジームント・フロイト、カール・グスタフ・ユングが在籍する研究会に参加し、交流するようになります。
しかしながら、性欲を重視するフロイトに対して異なる思想を持っていたアドラーは、1911年にフロイトとの対立から決別することとなり、劣等感や優越への意志に着目し、対人関係に重きを置いた思想である心理学を展開します。
この心理学はあの世界的なベストセラーである「人を動かす」のデール・カーネギーや「7つの習慣」のスティーブン・コヴィーなどの自己啓発を行う作家たちに大きな影響を与えるようになりました。
アドラー心理学の5大要素
アドラー心理学は下記5つの要素で構成されています。
- 自己決定論
自分の生き方というのは、今いる環境や過去の出来事で決まるのではなく、自分の意志で決めることができる - 目的論
人の行動にはそれを行った原因が必ずあるとする「原因論」ではなく、何かの目的を達成するために人は行動をする - 全体論
肉体と精神、感情と理性のように部分的に分けることはできず、全体で1つとして捉える - 認知論
人は自分の認知できる範囲内で世の中の出来事を、自分の考え方を通して理解し、意味付けする - 対人関係論
人の行動の先には自分を含めた相手が必ずいて、その存在が自分の行動に影響を与える
実生活での取り入れ方
職場や近所との人間関係がうまくいかない場合
- 職場で失敗が続いてしまい、チームメンバーに迷惑を掛けてしまっていると感じ、居心地が悪い
- 考え方の違いで近所の人や同僚と言い争いになって、顔を合わせるのが気まずい
- 相手の物言いに対して不快感を感じて、それ以降その相手を見るとイライラしてしまう
アドラー心理学では「人の行動は、必ず外部環境の影響を受けている」と考えています。
つまり、自分の行動は周囲の人に影響を与えると同時に、周囲の行動は自身に影響を与えているということになります。
特に日常で接点の多い職場の人や近所の人との人間関係で悩んでいるときは、まず自分の行動を変えてみることを考えましょう。ポイントは4つです。
- 共感する
自分の価値観で考えるのではなく、相手の目で見、相手の耳で聞き、相手の視点で考えることを意識して、どのような感じているのかを徹底的に考えることで、精神的な距離が近づきます。
まずは相手を本気で理解することから始めましょう。 - 信頼する
信用ではなく信頼です。相手に信じるに値する実績がなくとも、今この時点から、相手の行動や善意を信じることです。
信頼してくれる人に対しては、相手も「この人を信頼しても良いかな」と思うようになります。(返報性の法則) - 尊敬する
どんな人にでも、必ず学ぶところはあり、自分にはないものを持っています。完璧な人間はいません。
粗を探すのは非常に簡単なことです。
周囲の人の良いところを探し出し、敬意を払うことで実際の接し方も自然と変わってきます。
とはいえ、どうしても尊敬ができず、悩みが増える一方であれば、関わる人を変えるために環境を変えましょう。 - 協力する
仲間と目的を共有し、同じ課題に対して力を合わせて解決に取り組むことです。
協力するためには上記の共感・信頼・尊敬が根底に成り立っている必要があります。
周囲の人のモチベーションが低い場合
- 毎日同じ作業の繰り返しで、刺激がない日々を過ごしている
- 厳しい納期やノルマで精神的に追い込まれてしまっている
- 今までにやったことのない無理難題が降りかかって、気が休まらない(パニックゾーン)
周囲の人のモチベーションが低い場合の「勇気づけ」としては下記の5つがあります。
- プロセス重視
売上などの成果ではなく、どのような過程でその成果を上げたのか、そこまでに至る努力を認めてみましょう。 - 失敗は成功の糧
「失敗は成功のもと」と言われますが、どのような失敗でもそこから失敗した原因とどうすれば次成功できるのかを学び、再び挑戦し続ければそれは成功のための糧となります。
成功よりも失敗によって学ぶことの方が多いので、成長のチャンスと捉えましょう。 - 感謝
相手がしてくれたことに対して、申し訳なさから「すいません」と言う人と、有難い事だと思って「ありがとう」と言う人に分かれます。
日本人は前者が多い傾向ですが、自分を卑下し、相手の好意を否定してしまう行為となりうるので、小さなことでも、感謝を伝えるようにしてみましょう。(とは言え、状況に応じて使い分けはすべきかと思います。) - 加点主義
どうしても人の粗というのは目立ってしまうので、そこに着目されがちですが、「ここがこういった点で良かった」と良い点を具体的に伝えることで、相手の自己肯定感が高まり、強みを伸ばす力が育ちます。
人の弱みが強みになることはないと思っています。その人の強みと、それを活用したプロセスに着目することが重要です。
直近の悩みに直面した場合
- 友人との意見のすれ違いや、考え方の違いが最近多くなってきた
- 恋人との仲が深まるにつれて、生活リズムや趣味・嗜好、価値観の違いが浮き彫りになってきてに悩んでいる
- 今の職場が辛くて日々がしんどいと感じる。
あらゆる悩みに効果のある万能薬はありませんが、悩みを解決する一助になる考え方はあります。
悩みの根本的な原因というのは漠然とした不安が根底にあることです。
この漠然とした不安というのは考えているそれぞれの悩みが大きすぎる事に起因しています。
そのような時の対処法は次のような事です。
- 悩みを切り分ける
漠然と悩んでいることをいくつかのカテゴリーに分解すると、それぞれの悩みの原因がどこにあるのか明瞭になっていきます。
例えば「人間関係」であれば「友人」なのか「恋人」なのか「家族」なのか。。
といった感じで分解していきます。そしてさらにそのカテゴリをさらに分解していきます。
「恋人」であれば「生活リズム」なのか「趣味・嗜好」、「価値観」なのか。。
これを繰り返すことで、自分が具体的に何に対して悩んでいるのか明瞭になるため、漠然とした不安は低減します。
原因を突き止めたからといって、必ず解決策まで思いつくということは稀ですが、そのための第一歩であり、心のゆとりにつながります。
将来の体の衰えや病気にならないか不安になる場合
- 昔は寝れば次の日は体力が全快だったのに、最近は寝ても疲れが取れなくなってきた(老いることの恐怖)
- もし、癌や糖尿病などなかなか治らない病気に罹ったらどうしようといつも不安になる(病気の不安)
- いつかは死んでしまうことを想像すると、死にたくない気持ちでいっぱいになり、不安で目の前の事に集中できない(死に対する恐怖)
老いや病気というのは、医療技術が発達した現代でも人を悩ませる永遠のテーマです。
年齢を重ねるにつれてこれらに対する不安が自分の体を通じて実感するようになり、漠然とした不安に襲われる人もいるかもしれません。
しかしながら「老い」や「死」といった変えることができないものに気を取られてしまい、時間を消費してしまうのは勿体無い事です。
こういった悩みでは以下のような考え方を取り入れてみることをおすすめします。
- 受け入れる勇気
変えられないことに囚われるのでわなく、それらを全て受け入れて毎日を幸福に生きる勇気を持ち、変えることのできるものに夢中になりましょう。 - 変える勇気
老いや病気以外にも変えられないものは多くあります。
それらに着目するのではなく、自分の考え方や周囲との接し方、住む場所、日々の習慣など、変えることができることに夢中になる勇気を持ちましょう。
何かに夢中になることができれば、漠然とした不安を考えることは減ります。
心の余裕が無くなって周囲の人に強く当たってしまった場合
- 仕事が切羽詰まっており、つい他人の仕事ぶりに文句をつけてしまう
- 意見が噛み合わない同僚や上司がいて、つい敵対意識を持ってしまう。考え方の違いだけでなく相手の人格まで否定的にみてしまう
- 周りが自分の思うように動かなくてイライラしてしまう
仕事、家事、育児、介護、将来の不安、人間関係、結婚、など歳を重ねるにつれては多くの責任を抱える傾向にあります。
忙しい日々を過ごしていると、つい心の余裕が無くなってしまい、周囲のミスや気に食わないと感じてしまう部分が気になってしまいがちです。
そのような忙しくて余裕がない時ほど以下の2ステップを意識しましょう。
- 自己受容
他人を認めるためには、まず自分を見つめ直すことから始めましょう。
他人に対してつい厳しくなってしまうのも、いつも待ち合わせに数分遅れがちなのも、何かしらの劣等感を感じていることも含めて、ありのままの自分を受け止める勇気が必要です。
今の自分がどのような人間なのか、どのようなものが好きで、どのようなものが気に食わないと感じて、どのような日々を過ごしたいと思っているのか。
周囲には言えないけど、内心で思っていることをそのままの形で認識し、受容するのです。
おすすめは、思っていることを紙に書き出す「ジャーナリング」です。
誰に見せるわけでもないので思いっきり書き殴ってみると気持ちが落ち着きます。
忙しい人も寝る前の3分だけで良いので試してみてください。 - 寛大な心の器を養う
自己受容ができるようになれば、他人に対しての考え方が少しずつ変わってきます。
「自分にもこのような良い面も悪い面もあるように、周囲で一緒に働いている人ひとりひとりにも、同じように良い面も悪い面もあって当たり前」という事実に気づき、それらを全て受け止める寛大な器を養うことができます。
大は小を兼ねるという諺があるように、器は大きいほど良いです。
大きい器を養った上で、それでも捨てるのか、受け止めるのかはご自身の判断になります。
周囲の人と仲良くなれない場合
- 仕事の話はそつなくこなせるのに、飲みの場などで同僚や上司と仕事以外にどんな話をすれば良いか分からない
- グループで会話している内容についていけずに、空気を見出してしまわないか心配になり、会話に入っていくことができない
- 人に声を掛けた後に気まずくなるのが怖くて、声をかけることができない
SNSやメールによるコミュニケーションが発達するにつれて、対面での会話のボリュームが徐々に減ってきています。
最小限の対人コミュニケーションでも生活ができるようになってきている一方で「周囲の人と仲良くなれなくて、仕事だけの関係、その場限りの関係になることが多い」という悩みがあります。
そんな時は以下の2つを繰り返し実践してみましょう。
- 「けど。。」を封印する
困っている人がいるから声をかけてみよう、けど嫌な顔をされた嫌だな。自分の勘違いだったら迷惑だよな。。
と一度やろうと決めたことを、自分で否定してしまうという人もいるかと思います。
やろうと決めてから実行に移すまでの時間が長いほど、それをすることのデメリットを考えてしまうため、思い立ったらそれ以上は考えずに行動してから考えることを習慣にしてみましょう。
もし、困っている人がいて声をかけたにも関わらず煙たがれたとしても、それは自分をより良いものにするための経験です。
行動した結果上手くいっても、失敗しても自分のためになるのですから、行動しないわけにはいきません。 - 行動をしたら具体的に自分を褒める
もし行動したとして、どのような結果になったとしても、具体的に自分を褒めてください。
アドラー心理学においては他社を褒めることはその人との間に上下関係を作るため、すべきではないとしていますが、自分自身に対してはそもそも自分なので、大いに褒めてください。
上司との飲みの場に行ったのなら、上司が楽しく話すことができる話題を振った。飲み物がなくなったことに気づいて注文をするか配慮することが出来た。
どんな些細なことでも自分が行動したことに対して大いに褒めて自己肯定感を高めることが、「けど。。」と踏みとどまることを少なくし、次の行動につながります。
周囲の人をどのように褒めれば良いのか分からない場合
- 同僚や部下の仕事ぶりが良くて感心したとしても、褒めるのは偉そうに感じてしまわないか気になってしまう
- 褒めると、気に入られようとしているのではないかと周囲に思われていないか気になってしまう
- 感謝の気持ちでいっぱいだが照れ臭くて言えない
相手を讃えたい場面でも、気後れしたり、照れ臭かったり、上手く表現できない時は以下のことを意識してみましょう。
- 褒めない
少し冷たい表現になってしまいますが、何があっても他者を褒めることはやめてみましょう。
アドラー心理学では、褒めるという行為は、「評価している人」と「評価される人」というその人との間に上下関係を作り出してしまうと考えています。
また、褒められる、または怒られないようにということが先立ってしまい、相手の行動の目的が承認欲求を満たすことに変わってしまう危険性を秘めています。 - 具体的に感謝する
ではどうすれば良いかというと、褒める代わりに、相手に感謝の気持ちをなるべく具体的に伝えるようにしましょう。
「褒める」が上から目線な事に対して「感謝」は気持ちを伝えているだけなので、その人との間には上下関係を作り出すことはありません。
相手のどの行動よって自分がどう助かったのか・嬉しかったのかを伝えることを意識しましょう。
信頼していた人に裏切られてしまった場合
- 自分のいないところで、陰口を叩かれていたという噂を聞いて以来、他の人の会話が自分の悪口ではないかと不安になる
- 自分のアイデアを信頼している人に盗まれ、あたかも自分が作ったと言い張られた
- 約束を守ってくれないことが多くなった
人は一人では生きていくことはできず、周囲の人との信頼関係の上に生活は成り立っています。
信頼しているからこそ、蛇口から出る水を気にせずに使えるし、信頼しているからこそ外で買ってきた食べ物を不安になることなく食べることが出来ます。
それは周囲の人間関係においても同じことが言えます。
しかしながら、生きていると信頼していた人に裏切られるということは稀に起きます。そのような場合は以下のことを意識しておきましょう。
- 自己受容
その人のことを許す許さないの前に、先ずは裏切られるまでの間、その相手のことを信用していたこと、裏切られたことで苛立ちを感じた自分自身のことを認識し、受け止めましょう。 - 裏切った相手のことを理解する
自分を認めた後は、深く相手のことを理解することに徹しましょう。
「約束を守れなかったのはどうしても外れない急用が入ってしまったのかもしれない」「アイデアを盗まれたのではなく、向こうが先に考えついていたのかもしれない」と一度相手の視点で前向きに捉えてみることが大事です。
嫌悪感を感じている相手を皮肉が混ざらないように肯定的に見るというのは非常に難しい事ですが、だからこそ大事な考え方です。 - より多く信頼する
もし、裏切られたとしてもその上で関係修復をしたいと思うのであれば、以前よりもさらに多くの信頼を寄せましょう。
心から信頼をしているかというのは、ある程度接する機会のある相手であれば態度や表情に必ず出ます。
それを相手は読み取っていづれあなたのことを裏切るような真似はしなくなるはずです。(返報性の法則)
もちろんなりふり構わずに信頼していては、こちらのやるせない気持ちは募るので、相手の裏切りと感じた行動に対してどのように感じたのかというのは伝えると、相手も気をつけるようになります。(アサーション)
最後に:他人の人生を生きない勇気を持つ
周囲の期待に応えて、承認されることはやはり嬉しいと感じるものです。
しかしながら、周囲の期待に沿って生きることが自分の人生で良いのかもう一度立ち止まって考えてみてください。
もちろん、それが一番の幸せと感じる人を批判つもりはありませんが、周囲からの承認を求めて、評判や期待されている事を気にしていると、最終的に人の人生を生きることになります。
今日からアドラー心理学の考え方を取り入れて、自分の人生を自分のために生きてあげてください。