夜に寝付けないんだけど、夜眠れるようになる食べ物ってあるの?
また、逆に夜眠れなくなるような避けるべき食べ物があれば知りたい。

眠れるようになる食べ物

先に眠れるようになる食べ物を述べると以下の2グループの食材です。

グループ1

【魚介類】カツオ、マグロ、あじ、イワシ
【肉類】牛レバー、豚レバー、豚ロース、鶏肉
【乳製品】プロセスチーズ、牛乳、鶏卵
【豆類】大豆、豆腐
【種子類】アーモンド、カシューナッツ、くるみ

グループ2

【魚介類】エビ、ホタテ、イカ、カニ、カジキマグロ
【肉類】豚足、牛すじ、鶏軟骨

いかがでしょうか?この2グループの食べ物を見てどのような分別がされているか分かりましたでしょうか?

実は、ある栄養素に沿って分別しています。その栄養素が何なのか、またなぜ眠れるようになる食べ物なのかを解説していきます。

メラトニンを分泌させる食材が快眠の鍵

私たちの体には、メラトニンと呼ばれる睡眠ホルモンが存在しています。

このメラトニンが分泌されると体中心の温度が下がり、眠るための準備が整います。

基本的にメラトニンの分泌は太陽などの強い光が網膜を刺激すると分泌がストップして、メラトニン生成のためのセロトニンを合成し始めます。

メラトニンの生成ではセロトニンが材料になるので、日中にセロトニンの合成がより活発に行われるほど、メラトニンの分泌量が多くなり、夜の眠りやすくなるということです。

このセロトニンは脳や腸壁で合成されるのですが、その合成に必要なのがトリプトファンと糖質です。

メラトニン分泌にはトリプトファンと糖質が必要

メラトニン生成のためのセロトニンの材料は、アミノ酸の1種であるトリプトファンです。先ほど挙げたグループ1というのはこのトリプトファンが多く含まれている食材です。

トリプトファンは必須アミノ酸の一種で、前述のセロトニンの材料になるほか、免疫力を高めてくれる働きがあります。

このトリプトファンを食事から摂取し、脳に送ることで、セロトニンが合成されるのですが、トリプトファンを摂っただけでは脳に送られていかず、筋肉の合成や活動エネルギーとして消費されてしまいます。

ここで重要になるのがインスリンです。インスリンは血糖値が上昇した際に膵臓のβ細胞から分泌されるホルモン物質で、このインスリンがトリプトファンを脳まで運んでくれるのです。

これによって脳内でセロトニンが合成されて、夜になるとメラトニンが合成されるのです。

したがって、セロトニンの合成を促すためにも、トリプトファンを多く含む食べ物とインスリン分泌のために糖質を摂取するようにしましょう。

ただし、糖質はつい摂りすぎてしまう傾向があるため、低GI値のものを摂ることをおすすめします。GI値については下記の記事で掲載しているのでチェックしてみてください。

詳しくはこちら>>>【保存版】GI値とは? 低GI食品がダイエットに最適な理由【GI値一覧掲載】

朝食でメラトニンの元を摂取するのが効果的

夜ぐっすり眠るための準備は朝から始まっています。

休日はお昼すぎに起きたり、朝支度に手間取ったりして、朝ごはんを食べないことがあるなんて方も多いかと思います。

つい抜いてしまいがちな朝食ですが、睡眠の質を高めるという観点では非常に重要です。

寝ている間も脳は動いていますが、睡眠が深くなるほど脳波の振幅は大きくてゆっくりとしたものになります。この間に日中に見たことや聞いたことなどの情報を記憶として定着させようと働いたり、アルツハイマー病の原因となるアミロイドβなどのゴミを掃除する働きがあります。

こうした睡眠中の働きを正常にするためには、朝食が大きな影響を与えています。

先ほどのメラトニン分泌には、セロトニンの材料であるトリプトファンの摂取が必要であると述べました。

このトリプトファン→セロトニン→メラトニンの合成の流れはおよそ15時間ほどかけて合成されます。

したがって、夜22時に寝ている人というのはその15時間前の朝7時ごろにトリプトファンを摂取することで、寝るタイミングでメラトニンの分泌を強く促すことが出来るようになります。

夕食ではグリシンを多く含む食材を食べる

グリシンについて説明する前に、前提のとして、眠りを導くポイントは深部体温と表面体温の差にあります。

深部体温のとは脳や心臓、五臓六腑などの体の内側の温度のことです。体温計で測ろうとしている温度もこの深部体温です。表面体温とはその名の通り体の表面上の温度です。

基本的に深部温度の方が高く、空気に触れている表面体温の方が低くなります。健康体であれば覚醒時の体温差は2度ほどになります。実はこの深部体温と表面体温の差が小さくなると睡眠圧が高くなります。

眠くなると手足が温かくなりますが、これは深部体温の熱が手や足などの末端の毛細血管に移動して熱放出が起きているためです。これによって深部温度が下がり表面体温との差が縮まり睡眠圧が高くなっていきます。

つまり、寝るタイミングで深部体温を下げ表面体温を上げるための工夫をすることが、質の良い眠りにつくためのポイントになります。

そこで話を戻しますが、朝にトリプトファンが含まれる食材を摂ってメラトニンの材料を吸収することもそうですが、夕食に意識して摂取したいのがグリシンと呼ばれる成分です。

コラーゲンの30%を構成していると言われるグリシンですが、主に運動や感覚などの体の調整を行う働きを持っている非必須アミノ酸の一種です。グループ2の食材はこのグリシンを多く含んでいる食材になります。

また、グリシンはタンパク質を構成するアミノ酸の中でも最も単純な形をしており、体の末端部分の血行量を増やすという働きもあります。

体の末端部分の血行量が増えると、深部温度を下げることが出来るため、前述の通り表面体温との差が縮まり、質の良い眠りにつくことが出来るようになります。

眠れなくなる食べ物

コーヒー、紅茶、ほうじ茶、玄米茶、エナジードリンク、チョコレート

こちらはシンプルですが、カフェインを多く含む食材は眠りの妨げになります。

脳内には神経を落ち着かせ、脳内の覚醒を抑える働きのあるアデノシンと呼ばれる物質が存在します。このアデノシンはヒスタミンと呼ばれる覚醒効果のある物質を抑えるため眠気を誘います。

カフェインはアデノシン受容体と結合して、このアデノシンの働きを抑える効果があるため、ヒスタミンの分泌抑制が解けるため、眠気を感じにくくなります。

そのため、眠気を感じる時にカフェインを摂取すると、30分ほどでアデノシン抑制効果が働き始めて眠気が冷めるのです。

カフェイン自体には様々な効用がありますが、睡眠前の摂取は上記の理由からおすすめしません。カフェインの体内半減期(効果が半分になる時間)は体質によって大きく異なりますが、摂取からおよそ4時間かかります。

そのことを意識して、夕方以降はカフェインが含まれる食べ物の摂取は控えるようにしましょう。

参考文献

  1. NCNP病院. 『カフェインと睡眠』
    https://www.ncnp.go.jp/hospital/guide/sleep-column14.html