仕事でミスしてお客さんからクレームの電話がきた。恋人のちょっとした行動や言動についイライラしてしまう。信頼していた友人に裏切られた。ストレスで毎日が辛いのですが、少しでも和らげる方法があれば知りたい。
今回はこのような悩みに応えていこうと思います。ストレスに対処するときの方法は3点です。
- ストレスを軽減する
- メンタルを強化する
- ストレスの原因を解消する
「ストレスの原因を解消する」というのは、例えば人間関係が上手くいかない、仕事で成果が出ない・責任が大きいといったストレスの原因となっているものに対して何かしらの手段で解消するという事です。
これは原因によって対処法が異なってきますが、「ストレスを軽減する」「メンタルを強化する」という対処法は、あらゆるストレスを抱えた時にも使える汎用的な手段になります。
では早速、ストレスを軽減する方法からご紹介します。ストレスを抱えて辛い時、落ち込んだ時、まずはどれか一つ実践してみましょう。
ストレスを軽減する方法7選
現代はストレス社会とよく言われています。毎日更新される情報の大波に流され、高頻度なコミュニケーションができるツールが発達で人間関係が複雑となり、多様な役割・責任を担う事で今までになく大きなストレスを抱えるようになってきています。男は狩に出て獲物をとっていた狩猟採取時代と比べると、関わる人の数、食べるもの、触れる情報の量、どれをみても全く異なるものになっています。
そんな現代でもストレスフリーで生活できたらどれだけ快適か、と考えることもあるかもしれませんが、現実問題として生活していく上で、完全にストレスを排除するというのは困難です。しかしながら、ストレスを完全に消すことはできなくても軽減することは可能です。ストレスを軽減する方法の中でも効果の高い方法について、今回7つご紹介します。
瞑想する
瞑想はストレス軽減効果があることが様々な研究で判明しています。現在ではGoogleやUCLAなど誰もが知っている企業や大学で導入されているストレス軽減法です。
瞑想にはいくつか方法がありますが、私のおすすめの瞑想法は下記5つです。まずは1日5分から、ストレスで辛い時、朝起きた時、仕事する直前、夜寝る前などの時間を使って実践してみてください。
- マインドフルネス呼吸法
- モンキーマインド解消法
- ムーブメント瞑想法
- RAIN
- メッタ瞑想法
具体的なやり方は下記の記事に書いているので、瞑想に取り組んでみようと思った方は確認してみてください。
詳しくはこちら>>>【マインドフルネス】不安や悩みが解消する瞑想法5選 科学的に脳を休ませる方法とは?
本を読む
今ではyoutubeやpodcastなど様々な媒体で情報を収集することができますが、それに対して、読書は自分のペースで読み進めることができるという特徴を持っています。
読書の中でも、特に登場人物の心理が事細かに描かれていたり、共感できるような小説は共感能力を一時的に高め、ストレス軽減につながります。
それ以外だと、バイクやガーデニング、旅行の雑誌など自分の趣味や読んでいてワクワクするようなジャンルは一定のリラックス効果があり、そのようなものを選択することが望ましいです。
それ以外に読書でストレス軽減させるためのポイントは4点あります。
- 音読と同じくらいゆっくり読む(速読しない)
- フロー状態に入るまで継続する(最低30分ほど)
- 紙の媒体を使う(電子書籍だとブルーライトで交感神経が活性してしまうため)
- ネガティブな情報媒体はNG(新聞やニュース記事など)
サウナに行く
サウナと聞くとおじさんが娯楽で楽しんでいるイメージがあるかもしれませんが、最近では「サ道」の影響もあって若者もサウナに行く人が増えています。
サウナは脳の疲労がなくなって頭がスッキリするという効果が1番大きい要素です。頭がスッキリすると言われると少しざっくりしすぎですが、しっかりと理由があります。
何かに集中していない時にぼーっとしていても何か思い浮かんだりすることはありませんでしょうか?
仕事のことや人間関係での悩み事、過去の辛い経験など、考えようと思ってなくても何となくふと思った瞬間に頭に思い浮かぶ経験は誰でもあるかと思います。
これはDMNによばれる考え事をしていない間も無意識のうちに機能してしまっている脳回路によって引き起こされています。
サウナにはこのDMNの活性化を抑止する効果があり、これによってストレスの元になっている不安や苛立ちなどの雑念を取り払ってくれます。
最近はサウナ施設も増えてきて、気軽に利用出来るようになっているので、サウナに行ってみようと思った方は下記記事を参考に1度試してみてください。
詳しくはこちら>>>サウナは健康に良いのか? サウナの健康効果と正しい「ととのえ方」について解説
自然の中で過ごす
近くの公園・庭園に行く、河川敷でゆっくりする、植物園に行く、休日に山まで出かける、場所は問いませんが自然の中で過ごすことはストレス解消につながります。
ハーバード大学医学部のスーザン・アボーカイル氏によると、週に120分以上自然の中で過ごすと健康レベルと幸福度が向上することがわかっています。
特に森林浴など緑一色の大自然の中で過ごすことでストレスホルモンであるコルチゾールの分泌が抑制され、過度な不安や悩みが和らぎます。
森に行く時間が取れないという方は家に観葉植物を置いたり、スマホの壁紙を自然を感じるものに変えたりすることで、視覚的に緑を増やすだけでも効果があるので試してみてください。
紙に書き出す
パソコンやスマホが普及してきて、紙に文字を書くというのをあまりしなくなった人も多いかと多いますが、ストレス軽減という観点では、自分の思いや感情を紙にありのまま書き出すということが効果的です。
これはジャーナリングと呼ばれており、書く瞑想のようなものです。ひたすらに自分の思いや感情と向き合って、ありのまま紙に書き出す、これを思いや感情が溜まってくる夜にできれば毎日10分以上続けてみてください。
これを継続して行うとストレスが大幅に消えていくことが実感できます。初めはそのまま書き出すというのは少し恥ずかしいと感じるかもしれませんが、我慢する必要はありません。誰が見るわけでもないのでおもいっきり書いてみてください。
おすすめは水性ボールペンとA4の印刷用紙を買ってきて、1枚2分くらいのペースで書いてみましょう。
書いたものは捨ててしまっても問題ないですが、自分自信の気持ちを客観的に見返す材料になるので、時間が立ったら見直してみるのも効果的です。「前に自分はこのような感情になっていたのか」であったり「そう言えばこんな事をずっと考えてたな」と思い返すことで気が楽になります。
特に私たちは、普段自分の感情や思いをなかなか伝えずに抑え込んでしまうことが多いので、このジャーナリングで自分の気持ちを表現する機会を増やしてみましょう。
しっかり寝る
睡眠というのは体を休めるというだけでなく脳を整理整頓し、日中のストレスによる傷を修復してくれる時間でもあります。
寝ている間も脳は動いていますが、睡眠が深くなるほど脳波の振幅は大きくてゆっくりとしたものになります。この間にストレスで傷ついた細胞の修復や、日中に見たこと・聞いたことの情報を記憶として定着させようと働きます。
深い睡眠に関わらず、どの睡眠の段階でも記憶の定着や消去には関係しています。
新しい記憶はまず「海馬」に入って短期記憶として整理されたのち、脳が覚えておくべきと判断した内容が大脳皮質へと入っていき長期記憶として定着していきます。この海馬から大脳皮質への情報の伝達は、眠り初めの深いノンレム睡眠の時に行われます。
また、しっかり寝るといっても無理に長時間寝るのも健康上良くありません。
カリフォルニア大学のDaniel Kripke氏が実施した100万人規模の追跡調査によると、病気で亡くなった人が最も少なかったのは睡眠時間が7時間の人たちでした。最も死亡率が高かったのは睡眠時間が短いグループ(3時間未満)ではなく、なんと睡眠時間が長いグループ(10時間以上)でおよそ1.3倍ほどに増加することがわかっています。
基準は7時間ですが、体質によって大きく異なるので、自分が自然と目が覚める時間(2度寝は含まず)がどれくらいかを把握して、その時間はしっかり寝るようにしましょう。
良質な睡眠を取りたい方はいくつか方法を書いているので確認してみてください。
詳しくはこちら>>>【睡眠の質】良質な睡眠をとるためにすべきこと4選
日光を浴びる
朝外に出てみて、晴天だと気持ちが晴れ晴れとしますよね。実際に日光を浴びることはストレス解消にもつながります。
ここで鍵を握るのは神経伝達物質のセロトニンです。別名「幸せホルモン」と呼ばれるセロトニンには、精神的なバランスを整える働きがあります。そのため、このセロトニンが多く分泌されることによって、ストレスやイライラといった感情が減り、多幸感を得ることができます。
このセロトニンは日光を浴びることで体内で合成され、脳や腸壁で分泌されます。
お昼過ぎにセロトニンの合成量が最大となるため、その前の午前中にしっかり日光を浴びるようにしましょう。日光量の多い夏場は10分、日光量の少ない冬は30分を目安に日光を浴びるようにしましょう。
タンパク質をしっかり摂る
タンパク質というのは、炭水化物(主に糖質)、脂質と並び「三大栄養素」の一つとして、人の生命活動に欠かせないエネルギー源です。
そのタンパク質の中でもあるアミノ酸を摂取することがストレス解消につながります。
そのアミノ酸というのはアミノ酸の1種であるトリプトファンであり、先ほどの幸せホルモンであるセロトニンの材料です。そのため日光浴に加えて、セロトニンの分泌量を増やすためにも、材料であるトリプトファンを十分に摂取してあげることが重要になります。
トリプトファンを多く含む食品は以下のようなものがあります。ぜひ意識して摂取してみてください。
トリプトファンを多く含む食品
【魚介類】カツオ、マグロ、あじ、イワシ
【肉類】牛レバー、豚レバー、豚ロース、鶏肉
【乳製品】プロセスチーズ、牛乳、鶏卵
【豆類】大豆、豆腐
【種子類】アーモンド、カシューナッツ、くるみ
他のアミノ酸の働きについて知りたい方は下記記事も確認してみてください。
詳しくはこちら>>>【アミノ酸一覧あり】ダイエットを本気で成功させるためのタンパク質基礎知識①
メンタルを強化する方法5選
瞑想する
ストレスを解消するだけでなく、長期的な瞑想はメンタルを強化してくれます。瞑想を一種の精神力鍛錬と考える方もいますが、物理的に脳の構造を変える働きがあります。
瞑想をおこなっている間には前頭葉と呼ばれる額あたりにある脳機能の血流量が増加します。この前頭葉は「アイディアを出す」「論理的に説明する」「苛立ちを抑える」など、思考や感情コントロールなど非常に高度な機能を担っている部位です。
瞑想を行うことで、ここに血流が集中することで前頭葉は発達していきます。ただし、筋トレと同じように目に見えて脳が成長していることを実感するにはおよそ2ヶ月から3ヶ月ほど掛かりますが、継続することで大きな効果を得ることは間違いありません。
ぜひ今日から取り組んんでみてください。
運動する
運動で体を動かすことと、メンタルを強くすることに何か関係あるのかと思う方もいるかもしれませんが、運動はメンタルを強化するという点に置いて非常に効果的な方法です。
特に有酸素運動は脳を強くします。
運動をするとニューロンのつながりを強めて脳回路をより強固なものとすると同時に、海馬でニューロンの親である幹細胞を生成してくれるようになります。また、ニューロンの新生に欠かせない栄養因子であるBDNFやVEGFなどが盛んに供給されるようになり、脳の成長を後押ししてくれます。
このような変化は最終的に脳の能力を向上させ海馬や前頭前野が発達し、記憶力や論理的思考、感情のコントロールがより上手くできるようになりメンタル向上に繋がります。
また、脳回路をより強固なものとすることでダメージを受けた際にも深刻な症状につながることを防いでくれます。
おすすめの運動の一つにHIITと呼ばれる「高強度インターバルトレーニング」で負荷の高い(高強度)運動と休憩(インターバル)を短いスパンかつ短時間で交互に行うトレーニングがあります。
このHIITは短時間で行えるだけでなく「有酸素運動」と「無酸素運動」それぞれの運動効果を得られる非常に効率的な運動法です。
やり方が気になる方は下記記事を確認してみてください。
詳しくはこちら>>>【コスパ最強】人生を変える超効率的運動法「HIIT」とは ~少しの努力で最大の成果を~
価値観・人生の目的を決める
何か挑戦しようとしていることに対して、「やめた方が良いよ」と周りから否定されたり、違う価値観を押し付けられたりしたことはないでしょうか。そのようなことを言われ、「本当は間違っているのかな」「やめておいた方が良いかな」と不安になったり、辛い気持ちを抱く人もいるかと思います。
しかしそのような周囲の発言は、確固たる価値観を持ち、人生の目的が定まっていると、全く気にならなくなってきます。
また、明確な価値観を持っている人は死亡率が低くなることが分かっています。
2014年にカナダのカールトン大学で価値観に関するコーホート研究が行われました。
※コーホート研究とは対象集団(コホート)を決め,その特性を持った群と持たない群に分け,疾患の罹患や改善・悪化の有無などを一定期間観察する研究のこと
この研究では、約6000人、20歳〜75歳の平均年齢47歳の男女を対象として価値観を持って生きているかとその後の死亡率の相関関係を調査したものになります。結果としては価値観を持っているかの問い対して、「イエス」と答えた人は14年後の死亡率が15%も低いことが分かりました。
このことから確固たる価値観を持つことは、ストレスに対する耐性を高めるだけでなく、長寿にもつながることがわかります。
ではどうすれば確固たる価値観を持つことができるのか。その一つの方法としてPPA法と呼ばれるフレームワークがあります。
具体的な手順は下記の記事で書いているので、価値観を固めたい方はぜひ確認してみてください。
詳しくはこちら>>>【価値観】人生の満足感を上げてくれる自己分析手法「PPA」に基づく価値観の決め方
アドラー心理学の考え方を取り入れる
アドラー心理学は名前の通りアルフレッド・アドラーによって生み出された思想です。
ジームント・フロイト、カール・グスタフ・ユングと並んで心理学における巨頭であったアルフレッド・アドラーの思想は以下の5つの要素で構成されています。
- 自己決定論
自分の生き方というのは、今いる環境や過去の出来事で決まるのではなく、自分の意志で決めることができる - 目的論
人の行動にはそれを行った原因が必ずあるとする「原因論」ではなく、何かの目的を達成するために人は行動をする - 全体論
肉体と精神、感情と理性のように部分的に分けることはできず、全体で1つとして捉える - 認知論
人は自分の認知できる範囲内で世の中の出来事を、自分の考え方を通して理解し、意味付けする - 対人関係論
人の行動の先には自分を含めた相手が必ずいて、その存在が自分の行動に影響を与える
対人関係の悩みや不安を強く感じている人に特におすすめしたい考え方なので、アドラー心理学の活用方法について詳しく知りたい方は下記の記事を確認してみてください。
詳しくはこちら>>>【アドラー心理学】自己理解を深めて「不安」「悩み」を解消する考え方7選
詳しくはこちら>>>【アドラー心理学】人間関係の「不安」「悩み」を解消する考え方8選
ストレスに対する認識を変える
世間では「ストレス」という言葉を悪いものとして表現することが多くあります。事実、ストレスに悩みうつ気味になったり不調を引き起こすこともあります。
しかしながらストレスが完全に体にとって悪いものかというとそういうわけではありません。それどころかストレスはうまく利用すれば私たちの生活をより良いものに変えてくれるものなのです。
また、ストレスに対してポジティブな印象を持っている人が、適度なストレスを受けると以下の2つのどちらかの反応をすることがわかっています。
- 思いやり、絆反応
ストレスを受けるとオキシトシンと呼ばれる幸せホルモンが分泌され、人と繋がりたいという気持ちを高めてくれます。 - 挑戦、闘争反応
ストレスを受けるとそれをバネに、何かにチャレンジしようと行動しようとする気持ちが強くなります。
このように、ストレスを受けることでプラスの行動や感情を作り出すことができるようになります。
したがって、重要なことは「ストレスは良いもの」と認識して、共存して行くことです。
ただし、慢性的なストレスは心身に深刻なダメージを残す可能性があるため、実害が大きすぎる場合はストレスの原因を特定し、最大限解消するような工夫をしましょう。
まとめ
参考文献
- Susan Abookire, BSEE, MD, MPH, FACP, Contributor. "Can forest therapy enhance health and well-being?". May 29, 2020. Harvard Health Publishing Resources.
https://www.health.harvard.edu/blog/can-forest-therapy-enhance-health-and-well-being-2020052919948 - Patrick L. Hill1 and Nicholas A. Turiano. "Purpose in Life as a Predictor of Mortality across Adulthood". May 8 2014. PubMed Central.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4224996/ - Daniel F. Kripke, MD; Lawrence Garfinkel, MA; Deborah L. Wingard, PhD;. "Mortality Associated With Sleep Duration and Insomnia". February 2002. JAMA Phychiatry.
https://jamanetwork.com/journals/jamapsychiatry/fullarticle/206050