長寿の秘訣でテロメアが重要と聞いたけど、どうすればテロメアの消費を抑えることができるのか知りたい。特にテロメアを縮めてしまう行動を知りたい。
今回はこのような悩みに応えていこうと思います。テロメアとは何かを理解して、少しでも良い方向に行動するきっかけになってもらえたら幸いです。
テロメアとは
テロメアの仕組み
テロメア(Telomere)という言葉を聞いたことがありますでしょうか。テロメアとは私たちの体のDNA染色体の末端(Telos)にある粒子(Meros)のことを指します。
最近の研究ではこのテロメアが人の寿命に関連性があると言われています。それは以下のような仕組みがあるからです。
- 人間の細胞は分裂できる回数に制限がある(ヘイフリック限界)
- 細胞分裂の過程でDNAが複製されるとき、新生した細胞のDNAの末端は元のDNAよりも短くなる。
- 細胞分裂の過程でテロメアが短くなっていく。
- テロメアがおよそ半分くらいの長さになると細胞分裂上限となる。
- 細胞分裂ができない細胞は老化するだけの老化細胞となり細胞死(アポトーシス)が促進する。
- 老化細胞からは炎症誘発性の物質が漏れ出す可能性もあり、慢性疾患に罹りやすくなる。
上記のような仕組みから、DNAのテロメアがどれだけ残っているのかを見ることで、あとどれだけ細胞分裂ができるのか、健康な状態を維持することができるのか予測することができるため、寿命と大きな関連性があると言われています。
テロメアを短くしないことが長生きすることのポイント
テロメアの長さが細胞分裂ひいては長寿に繋がるとすれば、テロメアを縮めないように日々の行動を見直すことが重要です。
人間の細胞は分裂できる回数に制限があり、その回数はおよそ50回程度です。しかし、細胞分裂は時にこの回数に届く前に止まってしまうことがあります。つまり、早い段階で老化細胞となることがあり、そうなると若いうちから慢性疾患にかかるリスクがあがってしまうということです。
細胞分裂がヘイフリック限界まで達しない理由が大まかに分けて2つです。
- 細胞を傷つけることでテロメアが短くなるスピードが早まっている。
- 遺伝子によって生まれた時にテロメアの長さやテロメアが短くなるスピードに影響を与える。
後者は先天的なもので生まれた瞬間に決定されるものですが、前者は日頃の行動を見直すことで改善することができます。
テロメラーゼとは
DNA染色体の末端にあるテロメアは、「TTAGGG」という6つ塩基配列が繰り返されています。細胞分裂をするとこの塩基配列が徐々に短くなっていきますが、テロメラーゼはその配列を伸長してくれる酵素です。
つまりテロメラーゼはテロメアを伸ばす酵素であり、細胞分裂の上限を増やしてれると考えられています。
基本的に細胞が2つに分裂すると染色体も2つに増えることになりますが、テロメラーゼがないと分裂した際にテロメアが短くなるわけです。
テロメアを伸長させるにはこのテロメラーゼ呼ばれる酵素が必要になりますが、人の細胞にはごくわずかにしか含まれていません。ただし、以下のような例外の細胞があります。
- がん細胞
- 生殖細胞(精子、卵子になる細胞)
がんという病気が人にとって有害なのは、テロメラーゼによってテロメアが無限に伸長することで永遠に細胞分裂を続けて体を蝕むためです。
これらの細胞を除く細胞は細胞分裂によってテロメアが短くなり続けてしまいます。この短くなるスピードというのは遺伝によって決まってしまうところも大きいですが、日々の行動である程度コントロールすることができます。
テロメアを短くしてしまう行動11選
活性酸素による細胞の酸化
酸化とはいわば体が錆びる事です。
自転車のチェーンが買ったばかりの時は色褪せない銀色だったのに対して茶色に変化していくのは鉄が大気中の酸素や水と結合して酸化鉄になっているからです。酸化鉄になると頑丈だったチェーンも軋み出しボロボロと崩れやすくなってしまいます。
簡単に言うと体でも同じような事が起きます。
悪習慣やストレスによって、体内では活性酸素という他の物質を酸化させる力の強い酸素が産出されます。活性酸素は、細胞伝達物質や殺菌効果があるため免疫機能として働く一方で、過剰な産生は細胞を傷害し、テロメアを短くする要因となります。
活性酸素の過剰な産生を抑制する方法として抗酸化作用のある食べ物を食べるというものがあります。抗酸化作用の強い食べ物の一例を下記で紹介しているので、気になる方は確認してみてください。
長時間の有酸素運動
健康維持のために定期的な運動をしているという方もいるかと思います。運動は肥満予防となり、体の血流を良くし、BDNFと呼ばれる脳を成長させる因子の分泌をしてくれる等の様々なメリットがあります。
最近はフルマラソンやトライアスロンなどに参加する人が増えており、健康志向となっている傾向です。
これは非常に良いことですが、長時間の有酸素運動や過度な運動は健康において逆効果となる可能性があります。
運動をすると、必然と心拍数が上がり体の中により多くの酸素を取り込もうとします。酸素を取り込むとそのうちの1%〜2%が活性酸素になります。
活性酸素は、細胞伝達物質や殺菌効果があるため免疫機能として働く一方で、過剰な産生は細胞を傷害し、がん、心血管疾患ならびに生活習慣病など様々な病気をもたらす要因となります。
スポーツ選手は短命と言われますが、これは活性酸素によるものです。20代までは活性酸素の毒を中和してくれるSODという酵素が十分に作られますが、加齢とともに体内で産生されるSODは減少するため、相対的に活性酸素の影響を受けやすくなっていきます。
特に長時間の有酸素運動は大量の酸素を取り込み活性酸素を産生してしまうので、テロメアの消費を抑えるという観点では出来るだけ避けるようにしたほうが良いでしょう。
おすすめはHIITと呼ばれる短時間でできる高効率な運動法です。実践してみたい方は下記を確認してみてください。
喫煙
喫煙が細胞を傷つけるというのはなんとなく想像できることかもしれませんが、やはり喫煙はテロメアを短くする行動の一つになります。
ロンドンのセント・トマス病院が女性1122人を対象に行った調査によると、たばこを毎日20本、10年間吸い続けると5歳分のテロメアが短くなっていることが分かっています。
また、タバコの煙には数十種類もの発がん性物質が含まれており、これらの物質が活性酸素を発生させ細胞を傷つけてしまいます。
他にも様々な悪影響があるため、テロメアを維持するという観点ではあまりおすすめできないです。
紫外線を長時間浴びる
太陽から届く光のおよそ6%が紫外線と言われています。紫外線は光の波長が短く可視光線の紫色よりも外側にある光線のため紫外線と呼ばれています。光のエネルギーは波長の振動数に比例するため、波長が短いほどエネルギーが大きくなります。
紫外線は波長が短くエネルギーが大きく、直接浴び続けると下記のような問題を引き起こす可能性があります。
- 細胞の遺伝子を傷つけるため、皮膚がんになる可能性が上がる。
- 目の水晶体に含まれるタンパク質は紫外線を吸収して酸化するため、白内障になる恐れがある。
特に10時〜14時で紫外線量がピークとなるのでサングラスをかける、日焼け止めクリームを塗るなどで対策しましょう。
慢性的なストレスを受ける
ストレスの原因は人間関係や将来の不安など様々ですが、現代社会においては精神的なストレスが大半を占めているかと思います。
連日ニュースでは暗い情報が流れ続け、SNSを通して攻撃的な言い争いが目に入ってくるようになっていることから、ストレスを絶え間なく受けるようになってきています。
ただ、ストレスというのは下記のような効果もあるため一概に悪い物であるわけではありません。
- 思いやり、絆反応
ストレスを受けるとオキシトシンと呼ばれる幸せホルモンが分泌され、人と繋がりたいという気持ちを高めてくれます。 - 挑戦、闘争反応
ストレスを受けるとそれをバネに、何かにチャレンジしようと行動しようとする気持ちが強くなります。
一時的なストレスは何かを成し遂げたり、挑戦するためには必要な要素になりますが、慢性的なストレスはテロメアを短くすることに繋がってしまいます。
慢性的なストレスはコルチゾールを活性化させ酸化ストレスを強くします。そうした酸化ストレスが細胞を傷つけテロメアが短くなることがカルフォルニア大学サンフランシスコ校の研究結果でわかっています。
現代はどうしてもストレスを受けやすい環境なので、自らストレスを軽減してメンタルを強化する術を身につけていることが必要になります。下記の記事でその方法を記載しているので参考にしてみてください。
アルコールの過剰摂取
お酒は大人になれば1度は誰もが飲んでいる飲み物かと思います。お酒に含まれるアルコールは気分を良くし、周囲の人とのコミュニケーションを円滑にするのに大いに役に立っています。
しかしながら、アルコールというのは飲み過ぎると体に悪影響を与えるため注意が必要です。
特にアルコールの過剰摂取で起きる体の害というのは下記のようなものがあります。
- 肝臓に負担を掛ける
アルコールは肝臓で分解されて、頭痛や吐き気の原因となるアセトアルデヒドになります。これを繰り返すと肝臓に大きな負担を掛けることになり、肝硬変などの病気につながります。 - 胃を荒らす
アルコールは水分を奪うため、胃の粘膜から水分を奪って胃を荒らします。 - 栄養失調になる
肝臓に負荷をかけることで体内で十分にタンパク質の合成がされずに筋肉に栄養が行き渡らずに栄養失調となります。また、ビタミン不足により脳機能の低下も招きます。 - 認知症のリスクが上がる
アルコールは有害物質が簡単には入れない血液脳関門と呼ばれるフィルターを通って脳に入っていきます。そして脳を萎縮させ認知症のリスクを上げることが分かっています。
このような悪影響は最終的に細胞を劣化させてテロメアを短くしてしまうことに繋がるため、お酒はほどほどにしておきましょう。
睡眠不足
規則正しい生活が健康で長生きするために重要であることは周知の事実かと思います。逆に言えば規則正しくない生活は健康に長生きするためには良くないということです。
その一つの典型例として睡眠があげられます。
睡眠は私たちの脳の情報整理して老廃物を除去したり、体の疲れを取り除いて翌日も1日元気に活動ができるように回復する重要な役割を果たしています。
そのため、質の良い睡眠をとれていないと、頭がぼーっとしたり、身体が重く感じてベッドから出ることができなくなり、その後の1日の生活が狂ってしまいます。
不規則な生活は慢性的なストレスを受けることとなり、その酸化ストレスが細胞にダメージを与えテロメアを短くすることにつながってしまいます。
テロメアを短くしないためにもまずは睡眠の質を高めることから始めてみましょう。
動物性タンパク質の過剰摂取
元々日本人は農耕文化で穀物や野菜、魚を中心とした食生活をしてきました。今ではマックなどの肉中心の外食チェーン店が幅を利かせており、それに伴って私たちが食べているのも牛肉、豚肉、鶏肉などの肉の比率が多くなってきています。
肉類には動物性タンパク質が多く含まれており、体づくりには重要な栄養素です。しかしながらこの動物性タンパク質には注意が必要な点があります。
それがアレルギーの存在です。特にタンパク質とアレルギーの間には密接な関係があり、アレルギーの原因の大半はタンパク質が占めていると言われています。アレルギーが発症する一つの理由にタンパク質の過剰摂取があります。植物性タンパク質は過剰摂取してもアレルギー症状は起きづらいですが、動物性タンパク質はその構造の複雑さからも様々なアレルギーを起こすことがあります。
また、動物性タンパク質の傾向として、脂質や糖、ミネラルなどの栄養素がタンパク質と複雑に絡み合っているという点があります。これは、動物性タンパク質を体内でアミノ酸に分解する際に、結合している脂質が複雑に絡み合っている影響で、活性酸を発生させ、有害物質を生成します。
タンパク質は比較的消化にかかるため、腸内に長く滞留していると大腸がんのリスクが高くなります。これが肉を多く食べる欧米に大腸がんの疾患者が多い理由の一つになっています。
もちろん十分なタンパク質を摂取しようとすると、どうしても動物性タンパク質を摂取することが有効ではありますが、上記のような理由から抑えるようにしたほうが良いでしょう。
栄養不足
今は飽食の時代で、お金を払えばいつでも食べきれないほどの食べ物を手に入れることができます。このような環境にもかかわらず、多くの若者がファストフードに通い、十分なタンパク質、ミネラル、食物繊維、良質な脂質、これらを十分に摂れておらず、栄養不足に陥っているのが実状になります。
特にタンパク質と、糖質を消化吸収するために必要なビタミンB1,B2が不足していると言われています。
これらの栄養不足で細胞に十分な栄養が行き渡らないとテロメアを短くしてしまう原因になります。
どうしても十分なタンパク質やビタミンを摂取できないという方はプロテインやサプリなどで必ず補うようにしましょう。
コレステロール不足
コレステロール」と聞くと下記のようなイメージを持っているかもしれません。
- 揚げ物などの脂っこいものに多く含まれている
- 体に悪い
- 血液をドロドロにする
健康診断でも血液検査からHDL(善玉コレステロール)値やLDL(悪玉コレステロール)値、総コレステロール値が測定されて健康の良し悪しを付けられて、高ければ動物性脂質を控えるように忠告されます。
中には、医師からコレステロールを低下させるためのスタチン系の薬をもらって飲んでいる人もいるかもしれません。
コレステロールは少ない方が良いと考えてしまいがちですが、それは大きな間違いです。
それどころか、今まで「悪玉」と呼ばれてきたLDLコレステロール値も、低い値より高い値の方が死亡率が低いことが分かっています。
コレステロールは60兆個ある細胞の細胞膜の原料や、ビタミンD、各ホルモンの原料にもなっており、細胞の健康を維持する上でも非常に重要な役割を持っています。
そのようなコレステロールですが、不足すると下記のような悪影響があります。
- 貧血になる
血管の壁面が脆くなり、十分な血液が生成されなくなるため - 骨粗鬆症になりやすくなる
ビタミンDの生成が不足してカルシウムの吸収力が低下するため - 免疫力の低下
コレステロールには免疫力を高めてくれる働きがあるため - 動脈硬化・心筋梗塞のリスクが上がる
血管に柔軟性を持たせる効果があるため、不足すると血管が硬くなり血流が悪くなるため
細胞を傷つけないためにもコレステロールが十分に産生されるように食生活の見直しをするようにしましょう。
酵素不足
酵素というとアミラーゼ、リパーゼ、ペプシンなど消化器官で働く消化酵素をイメージする方もいるかもしれません。
実は酵素というのは数千種類あり、人間の細胞一つ一つにも酵素が含まれており、分解、吸収、合成、排泄に関わり、生命活動を支えています。
この酵素は体内で作られますが、その量には限りがあります。特に下記のような理由で酵素が不足する可能性があります。
- 暴飲暴食
食べ過ぎにより、消化酵素として酵素が使われてしまう。 - 加齢
25歳を境に酵素を生成する力が衰える。 - 病気
病気で細胞や遺伝子が傷つくと、酵素が修復するために使われてしまう。 - 高温なものを摂取する
酵素は48度で活動が止まってしまうため、加熱した食べ物には生きた酵素が含まれておらず、体内の酵素を消費する。 - 腸内環境の悪化
リッキーガットなど腸内で炎症を起こしていると、酵素を生成する力が弱まる。
酵素が不足すると以下のような問題が発生します。
- 消化不良
- 免疫力の低下
- アレルギーの発症
- 慢性疲労
- 老化
- テロメアの短縮
したがって、酵素不足とならないように暴飲暴食を避け、生で食べれるものは加熱せずに食べる、腸内環境を整えるなどして酵素不足とならないように注意しましょう。
まとめ
参考文献
- 国立病院機構. 『お酒とうまく付き合うために』
https://kurihama.hosp.go.jp/research/pdf/al_4_4_4.pdf - 大櫛 陽一, 小林 祥. 『日本人はLDL-Cの高い方が長生きする』
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jln/18/1/18_1_21/_pdf/-char/ja - 白鳥 早奈英(2017). 『テロメア 生命の回数券──健康長寿の秘密おしえます』. 自由国民社
- エリザベス・ブラックバーン, エリッサ・エペル (2017). 『細胞から若返る! テロメア・エフェクト 健康長寿のための最強プログラム』. NHK出版