入浴が健康に良いって聞いたことがあるけど、効果の出やすい方法があれば知りたい。

今回はこのような悩みに答えていこうと思います。

みなさんは毎日お風呂に入っていますでしょうか。夏場は暑いので、シャワーで済ませてしまっている人が多いかもしれません。

私も学生時代は家ではシャワーしか使ったことがなく、ボタンで操作するタイプのお風呂のため方はよく知らないほどでした。社会人になってからサウナにハマり、温冷法が体に良いことを知り、今ではほぼ毎日のように湯船を張って入浴するようになっています。

お風呂は体に良いというのは聞いたことがある人も多いかと思いますが、なんとなく入っている人が多いのではないでしょうか。

入浴による健康効果を高めたければ、その効果を最大化するための入浴法というのがあります。

先に結論を述べると、複数の論文や本を調べた結果、以下の入浴法を行うと健康効果を最大化することができます。

  • 温度は40度から41度
  • 入浴時間は15分
  • しっかり肩まで浸かる
  • 就寝の1時間前には入る
  • 入浴剤で入浴効果を高める
  • 湯船を出たらコールドシャワーで締める

まずは、入浴にどのような健康効果があるのかを確認して、それぞれの入浴法について説明していきます。

入浴による健康効果

血流向上

第一の健康効果は、温熱効果によって体が温まり、凝り固まった筋肉が解れて血流が向上することです。

血液には熱を運ぶ以外にも栄養分や水分、酸素を運ぶといった事以外に、二酸化炭素や老廃物質などの不要な成分を回収するといった働きがあります。これによって血流の悪くなりやすい肩や腰の筋肉を疲弊させる物質を回収してスッキリさせてくれます。

シャワーでも血流は向上しますが、温熱効果を得るためには高温で長時間浴びないといけず、効率が悪いので湯船に浸かる方が効率が良いと個人的には思います。

お湯を張ってしっかりと肩まで浸かることで温熱効果が上がり、血流がさらに良くなります。

一つ注意点として、長時間の入浴は脱水症状を起こしたり、体温が上がることで体調を崩す可能性があるため、後に説明する入浴時間を目安に入るようにしましょう。

むくみ解消

第二の健康効果は、全身に水圧がかかることでむくみの解消になることです。

体にかかる水圧は水深と体の表面積に比例して大きくなります。お風呂に浸かった時の平均水深が30cm、体の表面積はデュポン式で計算するとして、身長170cm、体重60kgであれば約1.7㎥です。水深30cmの水圧は1㎥あたり300kgなので、約500kgの力が全身にかかることになります。

500kgで押されていると考えると、むくみ解消どころか骨が折れてしまいそうですが実際にそのような事になっている方はいないですよね。むくみを解消するために水圧以外でこの力を捻り出すためには、指圧師を17人以上呼んで一斉に指圧してもらう必要があります。(指圧はおよそ15kg前後です。)

それほどにお風呂に入っている時の水圧は強く、この全身にかかる水圧によって表面付近、特に足先に滞留している水分や血液が押し出されて心臓に戻るために、むくみが解消するという事です。

免疫力向上

第三の健康効果は、体温上昇によって免疫力が向上することです。

お風呂に入ると免疫力が向上するというのは誰もが聞いたことがあるかと思いますが、この理由の一つに、体温上昇に伴い、体内でのNADの生産量が増加することが挙げられます。

NAD(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)とは、細胞内で起こる化学変化で使用される化学物質であり、長寿遺伝子と関連のあるサーチュイン遺伝子が細胞を保護するときの材料にもなる物質です。また、健康的な食生活とこのNAD濃度は相関関係があることが分かっており、「健康度≒NAD」として考える方もいます。

つまり、お風呂に入る事でNAD生成量が増加するということは、体内にとってプラスに働いている行動であるという裏付けになっているということです。

2018年に発行されたNature誌にも掲載された論文(De novo NAD+ synthesis enhances mitochondrial function and improves health)でも書かれていますが、このNADの生産量増加によって以下のような作用が働くとされています。

  • 老化予防
  • 筋肉機能回復
  • 脳の神経再生
  • 代謝性疾患に対する保護(免疫力向上)

したがって、お風呂に入って免疫力が上がるというのは、体温上昇に伴うNAD生成量の増加が一因になっていると考えられます。

ストレス解消

第四の健康効果は、副交感神経優位の状態となることでストレス解消につながることです。

日中の仕事や人間関係、SNSによるストレスで興奮状態となっている体は、交感神経が優位の状態となっています。この交感神経が優位の状態というのは、何かに立ち向かう行動のエネルギーとなったり、脅威を避けるために注意力を高めるなどの積極的な活動を行うために、体をコントロールする働きがあります。

しかし、この交感神経が強く働き続けると慢性的にストレスがかかってしまうため、副交感神経に切り替える必要があります。

適切な水温であれば、自律神経が交感神経から副交感神経にスイッチするため、ストレスを和らげる効果があります。

入浴すると疲れが取れるとよく言われますが、これは副交感神経が優位の状態となり、血圧が低下してリラックスモードに入る事でストレスが小さくなるためと考えられます。実際に体と脳が回復するのは次に説明する睡眠が大きく影響しています。

睡眠の質向上

第五の健康効果は、深部体温の温度変化による睡眠の質向上です。

睡眠の質を向上させるためには、深部体温と表皮体温が睡眠にどのような影響を与えているのかを理解していることが重要になります。

  • 深部体温
    脳や心臓、五臓六腑などの体の内側の温度
  • 表面体温
    皮膚の表面上温度

良質な眠りを導くポイントは深部体温と表面体温の差にあります。基本的に深部温度の方が高く、空気に触れている表面体温の方が低くなります。健康体であれば覚醒時の体温差は2度ほどになります。

実はこの深部体温と表面体温の差が小さくなると睡眠圧が高くなります。

眠くなると手足が温かくなりますが、これは深部体温の熱が手や足などの末端の毛細血管に移動して熱放出が起きているためです。これによって深部温度が下がり表面体温との差が縮まり睡眠圧が高くなっていきます。つまり、寝るタイミングで深部体温を下げ表面体温を上げるための工夫をすることが睡眠圧を上げ、睡眠の質を向上させる効果的な方法となるのです。

入浴すると表面温度と同時に深部温度も一時的に上昇していきます。人にはホメオスタシスと呼ばれる、元の状態に戻ろうとする力が働くため、入浴後に深部温度が反動で下がっていきます。

これによって深部温度と表面温度の温度差が縮まり睡眠圧が高くなるため、良質な睡眠をとることができるようになるというわけです。

補足:ダイエット効果はほぼない

「汗をかく=ダイエット」と思われている方もいるかもしれませんが、残念ながら入浴にダイエット効果はほとんどありません。

なぜこれらは汗をかいているにも関わらずダイエットに効果がないかというと、汗をかくということ自体に大きなエネルギーを使っているわけではないからです。お風呂の後に体重が落ちてるというのも、ただ単に汗で体の水分が排出されたからです。これは、岩盤浴やサウナ、真夏で汗をかいている時も同様です。

国立健康・栄養研究所の改訂版『身体活動のメッツ(METs)表』によると、入浴は「1.5メッツ」です。皿洗いが「1.8メッツ」なので皿洗いよりもエネルギー消費が小さいということです。ジョギングが「4.0メッツ」、ウェイトトレーニングが「5.0メッツ」なので、エネルギー消費という観点では、運動の方が効果的であると言えます。

メッツ:安静時を「1」としたときに、その何倍のエネルギーを消費するかで、それぞれの行動の強度を数値化したもの

健康効果を最大化するおすすめの入浴法

温度は40度から41度

健康効果を最大化するおすすめの入浴法一つ目は、お風呂の温度を40度から41度に設定するということです。

なぜこの温度帯が良いかというと以下のような理由があるからです。

  • ヒートショックが起こりづらいから
    ヒートショックはお風呂と浴室の温度差によって血圧が乱高下することで、心臓や血管の疾患が起こることです。お風呂好きは温度を上げたくなりますが、少しぬるいと感じる程度が体への負担も小さくなります。
  • 乾燥しづらいから
    表皮の角質層にはセラミドと呼ばれる、皮膚の保湿において重要な役割を担っている成分があります。この天然保湿成分はお風呂が高温になるほど流出して皮膚が乾燥しやすくなります。
  • 5つの健康効果を得るには十分な温度だから
    特に温熱効果は体感として温度が高い方が上がりやすいと思う方もいるかもしれません。実際には、40度と42度以上のお風呂で体温上昇に大きな差が出ないことが、東京都市大学の研究によってわかっています。
  • 交感神経が刺激されづらいから
    42度以上の温度になると強い熱刺激によって交感神経が刺激されます。早朝であれば目を覚ますのに効果的ですが、夜は副交感神経が優位とならずに睡眠の妨げになる可能性があります。

最近は自動で温度を調整してくれる機能がついた浴室が多くなってきていますが、一昔前の設備ではまだないところもあります。体感として、少しぬるいと思う、10分以上入っているのがきついと感じない程度を目安に温度調整してみてください。

入浴時間は15分

健康効果を最大化するおすすめの入浴法2つ目は、入浴時間は15分に設定するということです。

入浴時間は長ければ健康効果が大きくなるというわけでもありません。40度から41度の湯船に15分ほど浸かると深部温度が約1度ほど緩やかに上昇します。この深部温度の上昇が緩やかであればあるほど、入浴後の湯冷めが起こりづらくなります。

普段、仕事や家事で忙しく動き回っている人も、湯船に浸かっている間はゆっくりすることで筋肉や凝りがほぐれてリラックスできます。是非とも効果を最大化するためにも、この15分は何もせずにゆっくりすることをおすすめしますが、十数分もじっとしているのは苦痛という方もいるかもしれません。

そこで入浴中に何かしようと考えている人は、以下のようなやっても良い事と控えた方が良い事に気をつけてやることを選ぶようにしましょう。

やっても良いこと

  • 読書
    お風呂は誰にも邪魔されず、読書するには最適の空間です。本が濡れてしまうのではないかという懸念については、防水の『Kindle Paperwhite』を使うか、以下のようなバスラックを使うことで対策することができます。
  • 音楽を聴く
    リラックス時間を加速させるために自分の好きな音楽を流してみましょう。特に好みがなければ、「チルアウトミュージック」で調べて見つけたものを流してみてください。
  • アロマの香りを嗅ぐ
    アロマの香りの中でも、ラベンダーの香りは副交感神経を活性化してくれるため、睡眠前の入浴におすすめです。

控えた方が良い事

  • SNSを利用する
    TwitterやFacebook、TikTokなどのSNSは過激な発言や嫉妬、妬みによってストレスを受ける可能性が高いアプリです。交感神経が優位となり、自律神経が乱れる原因となるので控えた方が良いでしょう。
  • 寝る
    お風呂での死亡者は交通事故より多いと言われており、意識がなくなると溺れて命に関わることがあります。お風呂でリラックスしていると気持ちよくて眠りたくなってしまうかもしれませんが、危険なのでやめましょう。
  • アルコールを飲んだ後に入る
    アルコールを飲んだ後に入ると脱水症状となる可能性があるため、そもそも入浴を控えた方が良いでしょう。アルコールを分解する過程で生成されるアセトアルデヒドは毒性があるため、肝臓で分解されるのですが、分解に水分が必要なため、水分不足となりやすくなります。

しっかり肩まで浸かる

健康効果を最大化するおすすめの入浴法3つ目は、しっかり肩まで浸かることです。

理由は、肩まで浸かる事で温熱効果を十分に受けて深部体温を上昇させることができるからです。

肩まで浸かっていない半身浴だと、上半身から体の熱が逃げてしまうため、深部体温を上昇させることができなくなってしまうからです。

あくまでも健康効果を最大化するためなので、体への負荷を減らしたい人、本を読んだりタブレットで映画を観ている人は半身浴で少し長めに入るのが良いかと思います。

一つ注意点として、全身浴による体への水圧は大きいため、息苦しいと感じる場合や心疾患系の病気がある方は、負荷が高すぎる場合があります。その場合は、かかりつけの医師と相談することをおすすめします。

就寝の1時間前には入る

健康効果を最大化するおすすめの入浴法4つ目は、就寝の1時間前には入ることです。

これは、健康効果の中でも睡眠の質向上に繋がります。その理由は深部温度と表面温度が近づくことによって睡眠圧が上昇するからです。

上記で説明した、40度から41度のお風呂に15分、肩までしっかり浸かることで深部温度が一時的に上昇します。ホメオスタシスによって温まった深部温度を下げようと、手足の末端部から熱を放出していくのですが、入浴の1時間後にこの深部温度が表面温度に近づきます。

この深部温度と表面温度の温度差が小さいタイミングというのは睡眠圧が高くなっており、良質な入眠に最適です。

したがって、良質な睡眠をとるためにも、就寝の1時間前に入浴することでうまく深部温度を下げて意図的に睡眠圧を上げるようにしてみましょう。

入浴剤で入浴効果を高める

健康効果を最大化するおすすめの入浴法5つ目は、入浴剤で入浴効果を高めることです。

家のお風呂で使われている水は基本的に水道水を使っています。比較して温泉はカルシウムやマグネシウム、ナトリウムやカリウムといったミネラル分が豊富に含まれているため、肌触りが良く、さまざまなメリットがあります。

温泉に通うというのは多くの人にとって難しいため、擬似的に温泉同様の水質を再現する方法が入浴剤を使うことです。入浴剤の主な効果は以下の4つです。

  • 肌触りを柔らかくして、肌への刺激を和らげる
  • 深部体温の保温効果を高める
  • 保湿効果を高める
  • 血流が向上する

市販で販売されている入浴剤の大半は薬事法に基づいた有効成分が含まれています。その有効成分には「無機塩類系」「炭酸ガス系」「生薬系」「酵素系」などがあり、それぞれの有効成分の効果も異なります。

どれを選ぶべきかは人によって異なるため、断定はできませんが、私の個人的には入手のしやすさ、温泉に近い成分を多く含んでいることから「無機塩類系」をよく使っています。

無機塩類系は硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、炭酸ナトリウムなどを含む入浴剤です。硫酸塩は末梢血管を広げて血流が向上する作用、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウムなどのアルカリ塩類は汚れを落とすがあるため、そのような成分を含んんでいる入浴剤がおすすめです。

私は発泡系ではないため低刺激で、入浴後の保温効果が高いと感じている『コモライフ 天然湯の花』をずっと使い続けています。

湯船を出たらコールドシャワーで締める

健康効果を最大化するおすすめの入浴法6つ目は、湯船を出たらコールドシャワーで締めることです。

これは昔からヨーロッパの温泉療法で行われていた温冷法を真似した方法です。

湯船に浸かることで得られる健康効果と同じくらい、冷水による健康効果は大きいものがあります。具体的には下記のようなものです。

  • 免疫力が向上する
  • 疲労回復
  • 炎症性物質の抑制

やり方としては、湯船に浸かった後、冷水シャワーを浴びる。これだけです。

注意点として、冷水シャワーを浴びると湯船で温まった体との温度差で、急激な血圧上昇につながってしまいます。そのため、心疾患の病気がある人や体への負担を減らしたい人は30度程度のぬるま湯を浴びるようにしましょう。

注意点

ヒートショックが起きないようにする

注意点の一つ目はヒートショックが起きないようにすることです。

冬になるとテレビでヒートショックに注意しましょうと呼びかけることが多くなります。

ヒートショックとは急激な温度変化が体へ大きな刺激を与えることで血圧が急上昇することで起きる現象です。特に冬場だと脱衣所は暖房器具がないため冷えやすく、一方でお風呂は熱々の温度設定にしたくなってしまいます。そのため冬にヒートショックが起きてしまうことが多いのです。

血圧の急上昇は脳卒中や心筋梗塞のリスクがあります。お風呂場でそのようなことが起こると意識を失って溺れてしまう危険があります。

そのようなヒートショックを予防する方法として、下記のような方法があります。

  • 入浴前に水分補給をする
  • 湯船を張った浴室を開けておき、脱衣所を温めておく事で温度差を減らす
  • シャワーもしくはかけ湯をして表面温度を上げてから入る
  • 飲酒して血圧が下がっている時は入らない

入浴時間は15分までにする

注意点の二つ目は入浴時間は15分までにすることです。

入浴時間が長くなると、体温上昇に伴って交感神経が刺激されて眠れなくなる、脱水症状の可能性が高くなってしまうためです。

したがって、入浴による健康効果を得た上で、交感神経が刺激されたり脱水症状となることを回避するためにも入浴時間は15分までにすることをおすすめします。

入浴後は早めに保湿する

注意点の三つ目は入浴後は早めに保湿することです。

入浴後は肌が潤っているから保湿しなくても大丈夫と思っている人いないでしょうか。実は、入浴後というのは逆に肌が乾燥しやすくなっている状態です。

お風呂上がりの肌の水分量は、お風呂の水分を吸収して一時的に多くなっていますが、表皮のセラミドが流失したことによって、水分が蒸発しやすい状態になっています。

入浴後10分が経過すると入浴前と肌の水分量が同じ程度、30分が経過すると入浴後よりも水分量が減るという調査が東京都市大学の発表で明らかになっています。そのため、入浴後はできるだけ早めにクリームやオイルで保湿した方が良いでしょう。

私は、浴室にホワイトワセリンを置いておき、浴室を出る前に使って保湿するようにしています。水分量が少ないと皮膚科で言われたことがあり、実際に入浴後の乾燥で皮膚が痒くなることがしょっちゅうありました。入浴後の方が乾燥するということを知って、入浴後すぐ保湿するようになってから肌トラブルはほとんどなくなってきています。もちろんその他食生活やストレスなどの影響もあるかと思いますが、すぐ保湿は明らかに乾燥対策として効果があり、おすすめできる方法です。

ついでにですが、私はホワイトワセリンの中でも不純物が少なく純度の高い「サンホワイト」を、薄く伸ばして塗るようにしています。塗りすぎると毛穴詰まりで肌が荒れる可能性があるので、使うときは注意しましょう。

まとめ

健康寿命を伸ばして元気で生きるための具体的な方法9選

  1. 入浴による健康効果
    • 血流向上
      お湯を張ってしっかりと肩まで浸かることで温熱効果が上がり、温熱効果によって体が温まり、凝り固まった筋肉が解れて血流が向上する
    • むくみ解消
      お風呂に入っている時の水圧は強く、この全身にかかる水圧によって表面付近、特に足先に滞留している水分や血液が押し出されて心臓に戻るために、むくみが解消する。
    • 免疫力向上
      体温上昇に伴い、体内でのNADの生産量が増加する。NADの増加は免疫力向上に相関関係があることがわかっている。
    • ストレス解消
      適切な水温であれば、自律神経が交感神経から副交感神経にスイッチするため、ストレスを和らげる効果がある。
    • 睡眠の質向上
      入浴すると表面温度と同時に深部温度が一時的に上昇していきます。人にはホメオスタシスと呼ばれる、元の状態に戻ろうとする力が働くため、入浴後に深部温度が反動で下がる。これによって深部温度と表面温度の温度差が縮まり睡眠圧が高くなるため、睡眠の質が向上する。
    • 補足:ダイエット効果はほぼない
      汗が出ているだけでエネルギー消費量は安静時とほとんど変わらない。入浴は「1.5メッツ」です。皿洗いが「1.8メッツ」なので皿洗いよりもエネルギー消費が小さい。ジョギングが「4.0メッツ」、ウェイトトレーニングが「5.0メッツ」なので、エネルギー消費という観点では、運動の方が効果的。
  2. 健康効果を最大化するおすすめの入浴法
    • 温度は40度から41度
      「ヒートショックが起こりづらい」「乾燥しづらい」「健康効果を得るには十分な温度」「交感神経が刺激されづらい」の理由から40度から41度が最適である。
    • 入浴時間は15分
      40度から41度の湯船に15分ほど浸かると深部温度が約1度ほど緩やかに上昇する。この深部温度の上昇が緩やかであればあるほど、入浴後の湯冷めが起こりづらい。
    • しっかり肩まで浸かる
      肩まで浸かっていない半身浴だと、上半身から体の熱が逃げてしまうため、深部体温を上昇させることができなくなってしまう
    • 就寝の1時間前には入る
      40度から41度のお風呂に15分、肩までしっかり浸かることで深部温度が一時的に上昇する。ホメオスタシスによって温まった深部温度を下げようと、手足の末端部から熱を放出していくが、入浴の1時間後にこの深部温度が表面温度に近づく。この深部温度と表面温度の温度差が小さいタイミングというのは睡眠圧が高くなっており、良質な入眠に最適。
    • 入浴剤で入浴効果を高める
      入浴剤には「肌触りを柔らかくして、肌への刺激を和らげる」「深部体温の保温効果を高める」「保湿効果を高める」「血流が向上する」などの効果がある。
    • 湯船を出たらコールドシャワーで締める
      「免疫力が向上する」「疲労回復」「炎症性物質の抑制」などの効果がある。
  3. 注意点
    • ヒートショックが起きないようにする
      ヒートショックがおこならないようにする方法として「入浴前に水分補給をする」「湯船と脱衣所の温度差を減らす」「シャワーもしくはかけ湯をして表面温度を上げてから入浴する」「飲酒して血圧が下がっている時は入らない」がある。
    • 入浴時間は15分までにする
      入浴時間が長くなると、体温上昇に伴って交感神経が刺激されて眠れなくなる、脱水症状の可能性が高くなってしまうため。
    • 入浴後は早めに保湿する
      入浴後10分が経過すると入浴前と肌の水分量が同じ程度、30分が経過すると入浴後よりも水分量が減るという調査が東京都市大学の発表で明らかになっている。保湿剤を浴室に置いておくのがおすすめ。

参考文献

  1. 一般財団法人 中央調査社. 「「入浴に関する世論調査」結果から」 .
    https://www.crs.or.jp/backno/old/No566/5662.htm
  2. 国立健康・栄養研究所. 「改訂版『身体活動のメッツ(METs)表』」. 2011.
    https://www.nibiohn.go.jp/files/2011mets.pdf
  3. "De novo NAD+ synthesis enhances mitochondrial function and improves health" Elena Katsyuba, Adrienne Mottis, Marika Zietak, Francesca De Franco, Vera van der Velpen, Karim Gariani, Dongryeol Ryu, Lucia Cialabrini, Olli Matilainen, Paride Liscio, Nicola Giacchè, Nadine Stokar-Regenscheit, David Legouis, Sophie de Seigneux, Julijana Ivanisevic, Nadia Raffaelli, Kristina Schoonjans, Roberto Pellicciari & Johan Auwerx
    https://www.nature.com/articles/s41586-018-0645-6
  4. クラウディア・ハモンド(2021). 『休息の科学 息苦しい世界で健やかに生きるための10の講義』. TAC出版.
  5. 阿岸 祐幸(2013). 『入浴の辞典』. 東京堂出版.