糖尿病になる人が最近増えていると聞くようになった。自分も糖尿病にならないか心配で、日々の生活で血糖値を上げないように気を付ける具体的な方法があれば実践してみたい。
今回はこのような悩みに応えていこうと思います。
- 1. 血糖値とは
- 1.1. そもそも血糖値とは何か
- 1.2. HbA1cで平均値を調べる
- 1.3. 高血糖の原因はインスリン
- 2. 血糖値に関する注意点
- 2.1. 高血糖の症状
- 2.2. 低血糖にも注意
- 3. 血糖値を上げない方法20選
- 3.1. 白米やパンの量を制限する
- 3.2. 主食を玄米やライ麦などの低GI食品に置き換える
- 3.3. 甘い飲み物全般をやめる
- 3.4. 食物繊維をしっかりとる
- 3.5. 野菜を一日350g以上食べる
- 3.6. レジスタントスターチで高血糖を抑制する
- 3.7. ビタミンB1を摂取する
- 3.8. 亜鉛とクロムを摂取する
- 3.9. 酢の物を摂取する
- 3.10. 油はオリーブオイルを使う
- 3.11. 青魚からDHA、EPAを摂る
- 3.12. お酒は糖質量の少ない蒸留酒を選ぶ
- 3.13. 白ワインで血糖値上昇を抑える
- 3.14. 糖質量の多い食べ物を買い置きしない
- 3.15. ベジファースト・カーボラストを徹底する
- 3.16. 栄養成分表示をチェックする
- 3.17. 夕食後に入浴する
- 3.18. 運動する
- 3.19. 血糖値を定期的に測る
- 3.20. かかりつけ医に相談する
- 4. まとめ
血糖値とは
そもそも血糖値とは何か
「血糖」の「値」と書くように、血液中に含まれるブドウ糖(グルコース)を血糖と呼び、その濃度を示すのが血糖値です。
ブドウ糖は基本的に、私たちが食べたものが腸で消化・吸収されて血液の流れに乗って全身に運ばれ、エネルギー源として消費されます。そのため、ある一定のブドウ糖が血液中に含まれている状態とし、体を動かすためのエネルギーとして消費していくためにも、一定の範囲で維持されるように体がコントロールしてくれます。
しかし、体に負荷を掛けすぎると、この血糖値コントロールが上手くいかずに、血糖値が高くなりすぎたり、低くなりすぎる、といった状態となってしまうことがあります。特に血糖値が高くなっている状態を「高血糖」と言います。高血糖には食後に一時的に血糖値が高くなる「食後高血糖」と、何も食べていない時にも高血糖となる「空腹時高血糖」があります。
食後もしくは空腹どちらか一方の血糖値が基準を超えている人は糖尿病に当てはまります。具体的には、下図の「食後血糖値」と「空腹時血糖値」の値をもとに「正常型」「境界型」「糖尿病型」のいづれかに判定されます。健康診断では当日断食してから検査するように、測っているのは空腹時血糖値です。まずは直近の健康診断の結果を確認して、下図のどこに位置しているかを調べてみましょう。
HbA1cで平均値を調べる
HbA1cとはブドウ糖と結合したヘモグロビンを指しています。
全体のヘモグロビンのうち、このHbA1cになっている割合を調べることで、過去1~2ヶ月の血糖値がどうだったのかを調べることができます。
つまり、先ほどの「食後血糖値」「空腹時血糖値」と言うのは今の状態を調べているのに対して、HbA1cは過去の平均の状態を調べており、直前の食事で大きく変動することがないため、より慢性的な高血糖となっているかが分かる、という特徴があります。
一般的にHbA1cの割合が4.6%〜6.2%は「正常型」、6.2%〜6.5%は「境界型」、6.5%以上は「糖尿病型」になります。これも健康診断で検査される対象の一つです。ご自身の健康診断の結果と見比べてどこに位置するか調べてみましょう。
高血糖の原因はインスリン
そもそもですが、なぜ高血糖となってしまうのでしょうか。原因としては3つあります。
- 糖質の過剰摂取
当たり前ですが、大量の糖質を摂取すると血液中のブドウ糖も一時的に多くなります。健常者であれば、この高血糖状態を検知して膵臓が血糖値を下げるために、ホルモンの一種であるインスリンを分泌しします。これによって、血糖値は正常な範囲に収まるように体がコントロールしてくれています。 - インスリンの分泌が悪い
血糖値を下げるためにはインスリンと呼ばれる膵臓のβ細胞から生成されるホルモンが必要になります。血糖値が上がるとそれを検知してインスリンを分泌するのですが、先天的な理由などによってインスリンの分泌が悪い場合があります。そうなると、血糖値を下げるために必要なインスリンが十分に分泌されずに慢性的な高血糖になってしまう場合があります。簡単に治せるものではないので、必ずかかり医に相談して処方してもらうことをお勧めします。 - インスリン抵抗性が高い
インスリン抵抗性とは、インスリンに対する耐性ができてしまい、で肝臓や筋肉、脂肪細胞にブドウ糖を効率的に取り込みづらくなる働きを指します。このような場合も、血液に取り込まれたブドウ糖をうまく処理することが出来ずに血液中に滞留してしまい、慢性的な高血糖状態となってしまいます。
この中でも2つ目と3つ目は先天的な理由や不健康な食生活の積み重ねで発症することがあります。そのため、すぐに解消できるという問題ではないことが多いです。
一方で、1つ目の過剰摂取は自分の食生活を今日から見直すことで、解消することのできる問題です。デパートやスーパー、街中、ありとあらゆるところに甘い食べ物やほぼ炭水化物の食べ物は溢れかえっています。食事に対するリテラシーを高めることで、知らないうちに高血糖状態を作ってしまう、ということにならないように注意しましょう。
血糖値に関する注意点
高血糖の症状
風邪をひいたり、捻挫をすると発熱や痛みとして症状が出ますが、高血糖というのは分かりやすい症状というものがありません。血液検査で「血糖値が高く糖尿病の疑いがあり」と言われても実感が湧かないものです。
そのため、高血糖となっているときにどのような症状が出るのかを知っておくことは、いち早く高血糖状態となっていることに気づくためには重要になってきます。具体的には下記のような症状です。
- 口内が乾燥する
唾液が少なくて、食べ物を飲み込みづらい・舌にくっつきやすいと感じることが多い - 喉が乾く
すぐに水を飲みたくなってしまう。夜中も喉が渇いて水を飲むことがある - 頻尿である
尿の量が増えて、トレイの数がかなり多い。夜中も何回もトイレに行く - 食べているのに体重が減る
いつもと同じ食生活なのに体重が急激に下がり始めている
もちろん、体質や年齢によってはこういった症状が現れないこともあります。
毎年の健康診断で少しでも血糖値異常が見られた時には、血糖値を上げない食生活を実践することが大事です。本記事では自身でできる血糖値を上げない方法を中心に書いているので、血糖値を気にしている人は一つでも取り入れてみてください。
低血糖にも注意
高血糖が体に悪影響を及ぼすことと同じように低血糖にも注意が必要です。
低血糖は血糖値が70mg/dL以下となっていることを指します。自覚症状としては、発汗、不安感、動悸、頻脈、手指の震え、顔面蒼白などが挙げられます。これらの症状は血糖値が正常な範囲を下回った場合に、体がSOSサインとして発する症状です。
体質を除き低血糖になってしまうタイミングというのがあります。具体的には、下記のようなタイミングが挙げられます。
- 食事の糖質量が極端に少ない
- 高強度の運動を長時間行った
- 入浴中、入浴後
- 飲酒後
このようなタイミングで低血糖の症状が出る場合は、吸収速度の速い糖質の入った飲み物を飲んだり、アメを舐めるのが良いでしょう。また、グルカゴンと呼ばれる薬を医師から処方されていれば、それをとることおすすめします。
その場はなんとか対処したとしても、再発する可能性もあるので、落ち着いたらかかりつけ医に相談して食生活の見直しや治療法を検討してもらうようにしましょう。
血糖値を上げない方法20選
それでは、本題の血糖値を下げる方法です。先ほども述べたように許容範囲を超えて血糖値を下げることは、逆に健康に悪影響を与えるので、適度にコントロールする必要はあります。ただ、少しでも高血糖で悩んでいる人や血糖値を上げたくないと思っている人に対して、一つでも役に立てればと思いますので、実践できそうなものがあれば今日から取り組んでみてください。
白米やパンの量を制限する
血糖値を上げないためには、そもそも高血糖となる原因となっているを控えるのが効果的です。
特に、白米やパン、麺類などの炭水化物が多いものは満腹感が出るまで食べると、明らかに糖質の過剰摂取となります。
2010年に国立国際医療研究センター病院で行われた45歳〜75歳までの男女6万人を対象としたコーホート研究(Rice intake and type 2 diabetes in Japanese men and women: the Japan Public Health Center-based Prospective Study)では、白米摂取量と糖尿病発症率の関係を調べました。結果としては白米の摂取量が増えるにつれ、糖尿病発症率が増加するということが分かっています。
一般的に1食あたりで摂取しても良い糖質の目安は、成人男性で70g、成人女性で50gになります。白米で計算するとおよそ200g、150gほどになります。
まずは、この目安を目指して主食の量を制限していきましょう。もし、慣れてきたら1日100gに抑えると、血糖値スパイクが起こりづらく、血糖値がより安定してくるようになります。
主食を玄米やライ麦などの低GI食品に置き換える
主食の量を制限する以外にも、低GI食品に置き換えるのも血糖値を上げないためには有効です。
「GI」というのは「グリセミック・インデックス」の略で、食品に含まれる糖質が血糖値をどれだけ上げるのかを、グルコースを「100」として相対的に数値化した指標になります。
このGI値は100に近いほど、血糖値の上昇が急激になり、GI値が100よりも低いほど、血糖値の上昇は緩やかになります。
低GI食品というのは下記のような特徴を持っています。
- 糖質の量が少ない傾向にある(脂質、タンパク質の比重が高い)
- 食物繊維を多く含んでいる
- 茶色・黒い傾向にある
- 甘味が少ない(人工甘味料は除く)
例えば、白米であれば玄米や胚芽米、パンであればライ麦や全粒粉などに置き換えることになります。
他の低GI食品は下記で確認してみてください。
甘い飲み物全般をやめる
コカコーラやタピオカ、フラペチーノなどの甘い飲み物はどれも、急激な血糖値上昇を引き起こすため避けるべきでしょう。
これらの飲み物の成分表示を見ればどれだけ血糖値を上げるものなのか分かります。例えばコカコーラであれば100mlに含まれる糖質はおよそ12gです。これはスティックシュガー4本分に相当し、500mlのペットボトルタイプであればスティックシュガー20本分です。ただの水にスティックシュガーを20本も入れたら甘すぎて飲めたものではありませんが、炭酸にすることで爽快感を足すことで飲めるようになっています。
また、固形食べ物と比較して、水分は腸での吸収スピードが速いので血糖値が一気に上昇し、インスリンが大量に分泌されることため、糖尿病の発症リスクを上げてしまいます。
これはコーラに限った話ではなく、スポーツドリンクやエナジードリンクにもかなりの砂糖が含まれています。運動している時や徹夜しているとこのような甘い飲み物を飲みたくなる人もいるかもしれませんが、極力控えるようにしましょう。
その代わりに、水かお茶、砂糖を入れていないコーヒーを飲むようにしましょう。特にコーヒーはおすすめです。
食物繊維をしっかりとる
食物繊維は糖質、脂質、タンパク質に対して腸で吸収されることはないため、人のエネルギー源となるものではありませんが、健康を維持する上では非常に重要な役割を担っています。
食物繊維は大きく分けて2つあります。
- 水溶性食物繊維
炭水化物の分解と消化を緩やかにして食後の血糖値上昇を抑えたり、血管の柔軟性が低下する動脈硬化の予防をする働きがある。 - 不溶性食物繊維
水分を吸収して膨らむ性質を持ち、便通の改善や大腸癌の予防をする働きがある。
直接血糖値に影響するのは水溶性食物繊維ですが、腸内環境を整えて死亡リスクを下げるという観点から不溶性食物繊維を摂ることも重要になります。
2020年に国立がん研究センターで行われた45歳〜74歳の日本人約9万人を対象とした約17年にもわたる追跡調査(Dietary fiber intake and total and cause-specific mortality: the Japan Public Health Center-based prospective study)によると、食物繊維の摂取量が増えるほど、総死亡率、がん死亡率、循環器疾患死亡率が20%近く下がることがわかっています。
また、食物繊維は熱に強く、加熱調理によって消失することがないため、煮物や炒め物からも十分に摂取することができます。
食物繊維の多い食材は下記に載っています。ぜひ、毎日の食事に意識的に取り入れて見てください。
野菜を一日350g以上食べる
野菜を取るということは血糖値を下げる上でも有効な食事法の一つになります。
一度昨日の食事を思い返してみてください。その食事にはどれくらいの野菜が入っていましたでしょうか。朝は菓子パンを食べ、昼は会社近くでパスタを食べ、夜は会社の同僚と居酒屋に行って塩辛いものを食べていたりしないでしょうか。
残念なことに、現代人の食生活はどの年代でも野菜の摂取量が不足しています。厚生労働省による国民の健康を増進させるための施策である、『健康日本21』では一日に野菜350gを目安に摂りましょうと勧められていますが、実際の平均摂取量は280.5gと大幅に足りていないことが分かっています。
実際にやってみるとわかりますが、生野菜で毎日350g食べることを考えると、ドレッシングやオイルを使ったとしてもかなり大変だということが分かります。そこで下記のような工夫をしてみることをおすすめします。
- 炒め物にする
炒めることで野菜の水分が蒸発するためカサを減らすことができます。ただ、熱に弱いビタミンが消失するというデメリットはあります。 - スープや鍋にする
味噌汁やスープカレー、鍋に野菜を入れればカサを減らしつつ、水溶性ビタミンを消失することなく摂取することができます。 - スムージーにする
ミキサーを持っているという方は、粗く切ってミキサーに入れてスムージーにするのも有効です。
ほかにも効率的に野菜を350g食べる方法をこちらで紹介しています。
レジスタントスターチで高血糖を抑制する
レジスタントスターチはでんぷんの一部ですが、小腸では消化されずに大腸まで届き食物繊維と似たような働きをしてくれるものです。
ご飯やいも類などに含まれているでんぷんは通常、消化酵素の働きでブドウ糖に分解されて小腸で吸収されますが、このでんぶんは冷えると一部がレジスタントスターチとなり、消化されにくい性質(難消化性)を持つようになります。
この性質があるため、ご飯やそば、ラーメンなどは温製よりも冷製の方が血糖値が上がりにくくなります。血糖値上昇を気にされている方は外食でこの観点でメニューを選んでみるとよいでしょう。
注意点として、レジスタントスターチは再加熱によって分解されてしまうため、おにぎりや弁当のご飯などは温め直さないで食べるようにしましょう。
ビタミンB1を摂取する
体内で吸収したブドウ糖をエネルギーとして代謝するためにはビタミンB1が必要となります。そのため、ビタミンB1を十分に摂取することで効率的に血液中のブドウ糖を消費してくれます。
逆に言うと、ビタミンB1が不足していると高血糖状態を促したり、エネルギーの代謝が落ちて疲れやすくなってしまいます。
ビタミンB1を多く含む食材としては、豚ヒレや鶏モモなどの肉類、玄米や大麦などの穀類があげられます。主食を玄米にすることで、安定して摂取することが出来るので、ぜひ取り入れてみてください。
また、野菜や果物に含まれている「硫化アミル」と呼ばれるファイトケミカルはビタミンB1の吸収効率を上げてくれることが分かっているので、これらを併せて摂るとより効果的です。
亜鉛とクロムを摂取する
血糖値を下げるためには、膵臓から分泌されるインスリンが必須です。インスリンの材料として亜鉛とクロムが使われており、この亜鉛とクロムを摂取することで、血糖値を下げるために必要なインスリンが十分に分泌されるようになります。
この亜鉛とクロムは、主に魚介類や豆類に多く含まれています。いずれも必要量は微量なので食事で十分に摂取できますが、不足している時はサプリで補うようにしましょう。
注意点として、ファーストフードやコンビニ弁当などの加工食品に含まれる食品添加物には、亜鉛の吸収を阻害するものもあるため、出来るだけ控えましょう。
酢の物を摂取する
酸味を感じる酢酸には、高血糖を抑制する効果があります。
これは、酢酸の働きによって胃から小腸に送り出されるのに時間がかかるようになり、消化・吸収が緩やかになるためです。
酢酸は高血糖を予防する以外にも、血中の余分な脂質を減らして脂質異常症の予防、免疫力向上にも役立ちます。
選ぶものとしては砂糖が入っていない米酢や穀物酢がおすすめです。他にも、砂糖は使いますが、ザクロ酢は他の健康効果が非常に高いので個人的にはおすすめです。ザクロの健康効果は下記でまとめています。
油はオリーブオイルを使う
料理でよく使う油には大きく分けて2つあります。
- 動物性油脂
バターやマーガリン、ラードなど - 植物性油脂
サラダ油やオリーブオイル
血糖値を下げるという観点では、後者の植物性油脂を使うことが有効です。動物性油脂は確かに美味しいのですが、飽和脂肪酸が多く、血中の脂質を増やすため脂質異常症を引き起こしたり、動脈硬化のリスクも高まってしまいます。
一方で植物性油脂は反対の効果があります。特に、オリーブオイルに多く含まれているオレイン酸は血中のコレステロールを減らして動脈硬化を減らしれくれる効果があるため、とりあえず悩んだらオリーブオイルを使えば間違いないかと思います。
もし買うとしたら、加熱処理がされておらず、酸化率の低いエキストラバージンオリーブオイルを選びましょう。エキストラバージンオリーブオイルの中でも「酸度」と呼ばれる値が低ものほど酸化しておらずより良質な油となるので、下記のようなものを選ぶことがおすすめです。
青魚からDHA、EPAを摂る
サバやイワシなどの青魚に多く含まれているDHA(ドコサヘキサエン酸)、EPA(エイコサペンタエン酸)はさまざまな健康効果がある良質な油です。
DHAとEPAはどちらも不飽和脂肪酸の一種です。脂質の一種ではありますが、摂取することで体内に溜まっている中性脂肪を減少させ、内臓脂肪をつきにくくするという肥満防止にはもってこいの効果があるとされています。他にも血管内の悪玉コレステロールを減らすため、動脈硬化の予防にも効果があります。
1日の摂取量は1000mgが適量とされていますが、油は油なので取りすぎは厳禁です。煮たり、焼いたりするとDHA、EPAが落ちてしまうため、刺身やホイル焼きにして食べるのがおすすめです。
私は青魚を食べれなかった日は以下のようなサプリメントでDHA、EPAを補うようにしています。
お酒は糖質量の少ない蒸留酒を選ぶ
毎日お酒を飲んでいる人も多いかと思いますが、血糖値を下げるという観点では糖質量の少ない蒸留酒を選ぶのが良いです。
お酒に含まれる糖質は種類によって全く異なります。例えば、焼酎やウイスキー、ブランデーのような醸造酒を蒸留して作った蒸留酒はほとんど糖質が含まれていません。一方で、ワインや日本酒、ビールなど醸造酒や梅酒やリキュールは糖質が多く含まれている場合があります。
そのため、糖質量の観点では蒸留酒が好ましいと言えます。
白ワインで血糖値上昇を抑える
先ほど糖質量の観点で蒸留酒を選ぶのが良いという事を説明した直後で矛盾する話に聞こえるかもしれませんが、糖質量の多い食べ物を一緒に食べる時に限っては、醸造酒である白ワインが血糖値の上昇を抑えるということもわかっています。
その根拠として、2007年にシドニー大学で行われた研究(Effect of alcoholic beverages on postprandial glycemia and insulinemia in lean, young, healthy adults)では、約90gの糖質を摂った時の血糖値の上昇をアルコール別に調査しています。その結果として最も血糖値上昇を抑えたのは白ワインで、最も血糖値上昇したのが水だったということがわかっています。
つまり、アルコール全般は糖質上昇を抑える効果があり、その中でも白ワインがその効果が高いということになります。
このことからも糖質を多めに摂るというときは白ワインと一緒に摂ることがおすすめです。
糖質量の多い食べ物を買い置きしない
ここからは、行動を変えて改善する方法についてです。
手に届く範囲に糖質量の多いお菓子や飲み物があるとつい食べたくなってしまいますよね。
どれだけ食べてはいけないとわかっていてもすぐに食べれる場所にそのようなものが置いてあると、つい気になってしまいいつの間にかに食べてしまうという事があります。
とはいえ、糖質量の多い食べ物を買い込まない、そのような禁欲的な食生活を続けることはストレスになりますし、「空腹で頭が食べ物のことでいっぱいになる」「目の前のことに集中できない」という人もいるかと思います。
何かをやめる時には、その隙間を埋める代替手段を併せて考えるようにすると、克服できる確率が高くなります。今回であれば、糖質量の多い食べ物の代替手段として、ナッツやガムなどの糖質が少ないものを食べるようにすることです。
これらの糖質が少ないものは、食べることでレプチンが分泌され、満腹中枢神経が刺激され、食欲が収まり、結果として、血糖値を上げるようなお菓子や飲み物を衝動的に食べることを回避することができます。
特にナッツは、ビタミンEやオメガ3を多く含んでおり、脳の老化予防にもつながります。ナッツが健康に良いとはいえ、脂質が多くカロリーが高いので、下記のような素焼きかつ個包装になっているようなものがおすすめです。
ベジファースト・カーボラストを徹底する
ベジファーストとは野菜を食事の最初に食べること、カーボファーストとは、糖質量の多い食べ物を食事の最後に食べることを指します。
理由は、野菜には、糖の吸収を緩やかにする水溶性食物繊維を多く含むものが多く、糖質を摂取したときの血糖値スパイクを防ぐためです。血糖値スパイクを起こすと、その後の集中力低下や肥満となりやすくなり、長期的には第二型糖尿病の発症リスクを上げます。
野菜を先に食べて水溶性食物繊維を摂取した後に糖質を摂ることでより、糖質の吸収が緩やかになり、血糖値上昇を抑えることにつながります。
実際に、2014年に大阪府立大学で行われた調査(Effect of eating vegetables before carbohydrates on glucose excursions in patients with type 2 diabetes)で、炭水化物を中心とした主食を摂取する前に、野菜を摂取することで60分後までの血糖値上昇を抑えられたことが分かっています。
またその理由として、食物繊維の消化が遅いという点が挙げられます。同年に北京協和医院にて、食物繊維は胃での滞留時間が長いことが報告されているため、食物繊維を多く含む野菜を先に摂取することで、後に摂取する炭水化物の消化・吸収を遅らせることで血糖値上昇が緩やかになると考えられます。
同じものを食べるとしても、順序を変えるだけで血糖値をコントロールできるので次の食事から先に野菜を食べるように心がけましょう。
栄養成分表示をチェックする
栄養成分をチェックすることは、実際にどれくらいの糖質を摂取しているのかを把握して意識づけすることにおいて有効です。
特に毎日の仕事や家事で忙しい人はコンビニ弁当やスーパーの惣菜で食事を済ませてしまう場合もあるかと思います。
その中で食べたいものを選ぶとき、一度裏に貼ってある栄養成分表示のシールを確認するようにしてみてください。そこには、必ず熱量、たんぱく質、脂質、炭水化物、ナトリウムの順で主要な栄養成分を記載するこが食品表示基準で義務付けられています。
その栄養成分表示に記載されている糖質量を確認して、1度の食事で摂る糖質をコントロールするようにしましょう。冒頭でも記載したとおり、一つの目安は成人男性で70g、成人女性で50gです。これを超えないように何を食べるか選ぶと必然と血糖値の上がりづらいものを選ぶ癖を身につけることができます。
夕食後に入浴する
お風呂でさっぱりした後に夕ご飯を食べるという方も多いかと思いますが、血糖値を上げないという観点では夕食の後に入浴することが有効です。
その理由は血流の変化にあります。胃や腸が食べたものを消化するためには血液が必要になりますが、入浴することで全身に血流が回ることによって、胃や腸での消化・吸収が緩やかになるということです。
実際に、食後に血糖値が高くなると脂肪細胞に取り込まれて体内に蓄積されますが、食後の入浴は高血糖を防ぐ効果があるということが分かっています。
高血糖が気になる人は今日から夕食の後に入浴するように変えてみましょう。
運動する
運動には様々な効果がありますが、血糖値を下げる観点でも良い効果があることがわかっています。
一つ目の効果はインスリンの働きを高めることです。インスリンは胃腸の後ろにある膵臓で作られ、血液中のブドウ糖を調整する働きをしています。糖尿病というのはこのインスリンをうまく分泌できない場合と、インスリンの働きが弱くなっている場合があります。運動に後者のインスリンの働きを改善してくれます。
二つ目の効果は筋肉量を増加させることで、血液中のブドウ糖吸収を助けることです。筋肉細胞は、肝臓や脂肪細胞と比較しても血液中のブドウ糖を取り込むことのできるキャパシティが大きいという特徴があります。そのため、運動によって筋肉量を増やすと、筋肉にブドウ糖をグリコーゲンの形で吸収されて消費されるため、結果的に血糖値が下がりやすくなります。
運動と言っても散歩程度の軽度の負荷でも十分なので、まずはその程度の負荷から始めてみましょう。慣れてきたら筋トレやHIITのような高強度の負荷をかけるとより効果を得やすくなります。
HIITについて知りたい方は下記を確認してみてください。
血糖値を定期的に測る
体重を落とすために体重を定期的に測るのが有効なように、血糖値を下げるには定期的に血糖値を測るのが有効です。
実際に自分の血糖値が今どの値で、どのくらいまで下げる必要があるのかを数値で理解しておくことは、血糖値を上げる行動をしなくなることにつながるため、直接血糖値を下げる方法よりも重要だと考えています。
定期的に血糖値を測ることで、どのような行動が血糖値を上げているのか、血糖値を下げているのかを明確にすることができるようになります。それによって、血糖値を下げて安定させるためにはどのような生活スタイルにすべきか、という今後の食生活の指針を立てることにもつながります。
では、実際に血糖値はどのように測るのかについてです。
血糖値の測り方は大きく分けると2種類があり、皮膚に血糖値センサーをつけるタイプ・採血して直接測定するタイプがあります。糖尿病患者など一部の人を除いて保険適用外という前提で、どちらも医療機関や一部の薬局で入手できるものです。利用してみたい人はまずは病院で医師に相談してみるようにしましょう。
個人的には皮膚にセンサーをつけるタイプがおすすめです。皮膚にセンサーをつけるタイプは間質液を使うので直接血液で測定する採血するタイプと比較して精度が落ちますが、都度血液を摂取する必要がないことから手軽であり、持続しやすいというメリットががあります。
かかりつけ医に相談する
自分で血糖値が上がらないように工夫したとしても、時によっては血糖値が改善しないという場合はあります。
そのようなときは、症状がなかったとしても医療機関で相談するようにしましょう。病院なんか行かなくても放っておけば治る精神の人が時々いますが、自分の自己回復能力と知識に頼るよりも、専門家に頼るほうが改善する可能性は確実に高いです。
いきなり総合病院や大学病院に行くのは抵抗があるかもしれないので、家の近くにある内科の診療所やクリニック、もしくはかかりつけ医に健康診断の結果を持参して相談するのがよいでしょう。
内科で受診すると問診や診察のほかに、血液検査、尿検査、超音波検査、振動覚検査など様々な検査を受けることができます。その結果によっては、日本糖尿病学会に認定されている糖尿病の専門医を紹介してもらうこともできます。
まとめ
参考文献
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