1日3食しっかり食べてるのに、元気が出ない、集中力が続かない、いつもぼーっとしてしまう。食事には気をつけているはずだけど、集中力を維持するために改善できる余地があれば知りたい。
今回はこのような悩みに応えていこうと思います。
規則正しい生活習慣を送っているにもかかわらず、元気が出ず集中力が続かない、といったことが慢性的に起きているとすると、多くの場合、何かを無意識のうちに悪い習慣を良い習慣としてしてしまっている可能性があります。
もちろん、ADHDやうつ症状など、生活習慣以外に原因がある場合もありますが、今回は日々の食生活で改善できるポイントに絞って説明していきます。
まずは、元気が出ず集中力が続かない原因について触れて、その対策としてどうすれば良いのか、理想論ではなく今日から実践可能な方法について解説していきます。
集中力が維持出来ない原因:糖質の摂りすぎ
先に結論を述べてしまうと、集中力が維持できない原因の大半は「糖質の摂りすぎ」にあります。
飽食の時代に生きている現代人は糖質を摂りすぎています。朝は食パンやグラノーラを食べ、昼は職場近くの定食屋で白ごはんと唐揚げの定食を食べ、おやつに軽くお菓子を食べ、夜は家で野菜とカレーを食べる。
これは一例ですが、偏食だと指摘されるような食事ではないように見えます。しかし、このような食事に含まれている糖質は日々の集中力を奪い、寿命を削るには十分な量です。
もちろん、糖質を一切取らない方が良いといっているわけではありません。
糖質は、約4kcal/g のエネルギーを産生し、血液を通って、脳、神経組織、赤血球、ぶどう糖(グルコース)しかエネルギー源として利用できない組織にエネルギーを供給しています。特に脳はエネルギーの大食漢と言われ、1日に100g前後のぶどう糖を消費します。
また、2018年にアメリカのボストンで行われたメタ分析(Dietary carbohydrate intake and mortality: a prospective cohort study and meta-analysis)では、糖質の摂取比率と死亡リスクの関係を調べています。結果としては、全体に占める糖質量の割合が50〜55%で、死亡リスクが最も低くなることが分かっています。
つまり、死亡リスクを下げるという観点で、糖質は摂りすぎても摂りすぎても摂らなすぎても良くないということです。
ただ、糖質を気にしていない人の多くはパスタやそば、ラーメン、チャーハン、ドーナッツなど、糖質の塊のような食べ物を頻繁に食べているため、糖質の摂取比率がゆうに50%を超えて90%近くになっている、なんてことはザラにあります。
心当たりがある人は、この糖質の摂りすぎの食生活を改善することが、集中力維持には有効です。
集中力を維持するための心構え5選
では、糖質の摂りすぎを改善するためにはどのような方法があるのでしょうか。
具体的には以下の方法が有効であると考えられます。
- 低GI食品を食べる
- 食後30分以内に運動する
- 糖質量の多い食べ物を買い置きしない
- 朝食を抜く
- 野菜を最初に食べる
それでは一つずつ説明していきます。
低GI食品を食べる
糖質を摂りすぎると集中力が削れるというのは、血糖値の乱高下が関係しています。
糖質は胃腸で分解・消化吸収されると血液にぶどう糖として取り込まれますが、この時に脳内ではドーパミンが分泌され、気分が高揚してきます。
しかし、急激に上がった血糖値はインスリンの大量分泌によって急激に低下するため、この落差で集中力が削られています。
つまり、集中力を維持するためにはこの血糖値の乱高下の少ない食品を選ぶことが、集中力維持には有効である、ということになります。
その血糖値上昇の上がり幅を示す指標として「GI」というものがあります。
「GI」というのは「グリセミック・インデックス」の略で、食品に含まれる糖質が血糖値をどれだけ上げるのかを、グルコースを「100」として相対的に数値化した指標になります。
このGI値は100に近いほど、血糖値の上昇が急激になり、GI値が100よりも低い低GIほど、血糖値の上昇は緩やかになります。
低GI食品というのは下記のような特徴を持っています。
- 糖質の量が少ない傾向にある(脂質、タンパク質の比重が高い)
- 食物繊維を多く含んでいる
- 茶色・黒い傾向にある
- 甘味が少ない(人工甘味料は除く)
例えば、白米であれば玄米や胚芽米、パンであればライ麦や全粒粉などに置き換えることになります。
他の低GI食品は下記で確認してみてください。
食後30分以内に運動する
食後に運動すると消化吸収に悪いとよく言われますが、集中力を維持するという観点では効果的です。
立命館大学で行われた食後の運動と血糖値の関係について調べた研究(食後に行う有酸素運動が血糖値の変動に及ぼす影響 -連続運動と間欠運動の比較-)では、食後30分間でこまめに休みながら有酸素運動を行うと血糖値上昇が抑えられる、ということが分かっています。
これは、運動することによって、まさに消化吸収が遅くなり、血糖値の急激な上昇を防いでいると考えられます。
また、他にも血糖値を下げるという観点で運動には以下の2つの効果があります。
- インスリンの働きを高める
インスリンは胃腸の後ろにある膵臓で作られ、血液中のブドウ糖を調整する働きをしています。糖尿病というのはこのインスリンをうまく分泌できない場合と、インスリンの働きが弱くなっている場合があります。運動に後者のインスリンの働きを改善してくれます。
- 筋肉量増加によって血液中のブドウ糖吸収を助ける
筋肉細胞は、肝臓や脂肪細胞と比較しても血液中のブドウ糖を取り込むことのできるキャパシティが大きいという特徴があります。そのため、運動によって筋肉量を増やすと、筋肉にブドウ糖をグリコーゲンの形で吸収されて消費されるため、結果的に血糖値が下がりやすくなります。
運動と言っても散歩程度の軽度の負荷でも十分なので、まずはその程度の負荷から始めてみましょう。慣れてきたら筋トレやHIITのような高強度の負荷をかけるとより効果的です。
HIITのやり方については以下の記事を参考にしてみてください。
糖質の塊を買い置きしない
手に届く範囲にお菓子や甘い飲み物があるとつい食べたくなってしまいますよね。
どれだけ食べてはいけないとわかっていても、目の前に砂糖たっぷりのドーナッツをずっと置かれたら、私も心が折れて食べます。
糖質を摂りすぎないためには、糖質が摂れない環境をいかにして作るか、ということが重要です。
とはいえ、糖質量の多い食べ物を買い込まない、そのような禁欲的な食生活を続けることはストレスになりますし、「空腹で頭が食べ物のことでいっぱいになる」「目の前のことに集中できない」という人もいるかと思います。
何かをやめる時には、その隙間を埋める代替手段を併せて考えるようにすると、克服できる確率が高くなります。今回であれば、糖質量の多い食べ物の代替手段として、ナッツやガムなどの糖質が少ないものを食べるようにすることです。
これらの糖質が少ないものは、食べることでレプチンが分泌され、満腹中枢神経が刺激され、食欲が収まります。結果として、血糖値を上げるようなお菓子や飲み物を衝動的に食べることを回避することができます。
特にナッツは、ビタミンEやオメガ3を多く含んでおり、脳の老化予防にもつながります。ナッツが健康に良いとはいえ、脂質が多くカロリーが高いので、下記のような素焼きかつ個包装になっているようなものがおすすめです。
私は小腹が空いた時は単に食欲を我慢するのではなく、このナッツを食べるかガムを噛むことで、できる限り集中力が削られないようにしています。
朝食を抜く
これは健康上賛否が分かれるということは重々承知の上ですが、朝食を摂らないということは集中力維持に非常に有効です。
「朝の1時間は夜の3時間に値する」と言われるほど、1日の中で最も集中力が高く、生産性が高いのは朝の時間帯です。この時間帯の集中力を安定的に維持するためには、血糖値の乱高下を防ぐことが要になります。
特に朝食は「beadk-fast(断食を断つ)」という意味からも、睡眠中に消化・吸収されて空腹の状態で食べる食事ということです。
空腹の状態で朝からガッツリ白ごはんや食パンを食べるとどうなるのか。消化器官が活発に働き始め、勢いよく消化が進み、血糖値スパイクが発生させます。
よく寝たのになぜか朝から集中力が続かないと感じている人は、朝食を抜くか、軽めの食事、もしくは糖質量の少ない食事してみましょう。その日から日中の集中力が大きく変わることを実感出来るかと思います。
私自身、その日動き回るような予定がなければ、朝食を抜くか、ナッツやヨーグルトだけ食べるなど最小限にするようにしています。
野菜を最初に食べる
家族がいる方は、パートナーが食事を作ってくれているから自分で選ぶことはできないという方もいるかもしれません。
ただ、同じものを食べるとしても、食べる順序を変えることでその後の集中力を保つことができます。それが野菜を最初に食べることです。
野菜を最初に食べることで集中力を保つことができる理由というのは、野菜には糖の吸収を緩やかにする水溶性食物繊維を多く含むものが多く、糖質を摂取したときの血糖値スパイクを防ぐためです。
実際に、2014年に大阪府立大学で行われた調査(Effect of eating vegetables before carbohydrates on glucose excursions in patients with type 2 diabetes)で、炭水化物を中心とした主食を摂取する前に、野菜を摂取することで60分後までの血糖値上昇を抑えられたことが分かっています。
またその理由として、食物繊維の消化が遅いという点が挙げられます。同年に北京協和医院にて、食物繊維は胃での滞留時間が長いことが報告されているため、食物繊維を多く含む野菜を先に摂取することで、後に摂取する炭水化物の消化・吸収を遅らせることで血糖値上昇が緩やかになると考えられます。
このことからも同じものを食べるとしても、順序を変えるだけで血糖値上昇をある程度抑制できます。次の食事から野菜があったら真っ先に食べるよう心がけましょう。
まとめ
今回は血糖値の観点から、集中力を維持するための方法を5つ紹介しました。血糖値を上げないという観点では他にもさまざまな方法があるので気になる方は下記もチェックしてみてください。
参考文献
- 厚生労働省. 『日本人の食事摂取基準(2020 年版)』
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf - Sara B Seidelmann , Brian Claggett , Susan Cheng , Mir Henglin , Amil Shah , Lyn M Steffen , Aaron R Folsom , Eric B Rimm , Walter C Willett , Scott D Solomon. "Dietary carbohydrate intake and mortality: a prospective cohort study and meta-analysis". Lancet Public Health. 2018 Sep;3(9):e419-e428.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30122560/ - 後藤 一成 ,高松 薫 ."食後に行う有酸素運動が血糖値の変動に及ぼす影響 -連続運動と間欠運動の比較-".
https://corp.mizuno.com/sites/corp/files/2022-10/zaidan_josei_2010_2010_goto_kazunari.pdf - Saeko Imai, Michiaki Fukui, and Shizuo Kajiyama. "Effect of eating vegetables before carbohydrates on glucose excursions in patients with type 2 diabetes". J Clin Biochem Nutr. 2014 Jan; 54(1): 7–11.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3882489/