いつも前に失敗したことを思い出して落ち込んでしまう。仕事や勉強に集中したいけど、いつの間にか先のことを考えて不安になってしまう。このような苦悩を抱えないためにできることがあれば知りたい。

今回はこのような悩みに応えていこうと思います。

日々の生活をしていると、他人の小さなことにイライラしたり、告白が失敗して落ち込んだり、明日のプレゼンのことを考えて不安になったりと、色々な悩みに突き当たることはよくあります。

これらの悩みの大半は考える必要がないものとは分かっていても、つい頭の中に浮かんできてしまうという人も多いかと思います。

そのような時は無理に考えないようにするのではなく、苦悩を理解することに徹する、ことが有効です。

具体的にどういうことなのか以下で説明していきます。

悩みの根本は「刺激と反応」

そもそもですが、なぜ人は悩むのか考えたことはありますか。

悩みの根本は、外部からの刺激に対して過剰に反応していること、だと考えています。

人も人以外の動物も外部からの刺激に対して反応します。

反応にもいくつか種類があります。大きく分けると2つです。

  1. 反射的反応
    :天敵を見つけた時に心拍数が上がる、目の前に物が急接近すると目を瞑ってしまうなど、咄嗟に出る反応
  2. 主体的反応
    :外部の刺激に対して何かしらの意味づけをして「解釈・判断」を行い、それに対して行う反応

大半の動物は前者の「反射的反応」しかできないのに対して、人は「主体的反応」をすることができます。

この「主体的反応」は、刺激に対して適切に対処するための行動を選択するという、人によってどのように反応するのかを選択することができます。

そのため、同じ外部刺激に対しても人それぞれ別の解釈・判断をしていることは多々あります。

例えば、地域のボランティア活動をしている人を見て「素敵だな」「自分もこの方のような利他的な人になりたい」と思う人もいれば、「偽善だな」「自分ならこうやるのに」といったことを思う人もいるかもしれません。

こういった事に限らず、目や耳、手や舌などの五感から絶えず刺激が入力されるとそれを解釈・判断をして、反応を繰り返しています。

この「刺激→解釈・判断→反応」を繰り返している事が、悩みの元になっていると考えています。

苦悩は無くすのではなく、理解する

刺激→解釈・判断→反応」を繰り返している事が悩みに繋がっているとすると、このループを止めれば悩みは解消するかといったらそう簡単なものでもありません。

車内で大声で会話している人がいたら多少なりとも気にはなってしまいますし、目の前から車が突っ込んできていたら反応せざるを得ません。

刺激に対して完全に反応をなくすということはできないのであれば、どうすべきか。

それは悩みを真正面から理解することです。

例えば、以下のような状況を考えてみます。

  • 仕事が思い通りにいかない事に苛立ちを感じている
  • 過去のトラウマをまた思い出して目の前の事に集中していない
  • 将来の漠然とした不安が心の中に渦いている
  • 親から頻繁に連絡が来て鬱陶しいと感じている

こういった事が頭の中に思い浮かんだら、その思いを俯瞰して観察し、ありのまま理解することが非常に重要です。

人によっては「現実を受け入れるのが辛い」と思うかもしれません。

ただ、その必要はなくて「受け入れる」のではなくて、そのような思いが自分の頭の中に「存在している」としっかり認識するだけです。

「今自分は悩んでいる。おそらく、明日のプレゼン発表の方針が決まっていなくてしっかりやり遂げられるのか、恥ずかしい思いをするのではないかを考えているのかもしれない」と自分が思っていることを自覚します。

悩みというのは漠然とした状態で残りがちです。この悩みが漠然としたままであるからこそ、いつまでも心の中にこびり付いたカサブタのように残り続けてしまいます。

たとえ、悩みをしっかりと自覚した上ですぐに解決策が思いつかなかったとしても、何に悩みを感じているのかを理解しているだけでもそのことに対する心の負担は小さくなると思います。

悩みの原因に着目する

自分の悩みを真正面から理解したら、次は悩みの元になっている原因が何なのかに着目します。

先ほどの例で考えると、直接的な原因は以下のようになります。

  • 仕事が思い通りにいかない事に苛立ちを感じている → 仕事
  • 過去のトラウマをまた思い出して目の前の事に集中していない → 過去のトラウマ
  • 将来の漠然とした不安が心の中に渦いている → 将来
  • 親から頻繁に連絡が来て鬱陶しいと感じている → 

ご自身の不満や悩みを書き出してみていただければ分かりますが、おそらく悩みの直接的な原因は、自分ではコントロール不可能なものかと思います。

自分だけでどうにか出来る話であれば、やることは自ずと見えてくるのでそこまで悩むことは多くないかと思います。

上記のような自分ではコントロールができないものについては、もっと悩みの原因となっている元が何なのかを深掘りすることが重要です。

そしてその悩みの原因は、満たされたいという心の欲求によって反応しているものが大半です。

マズローの欲求段階説」「ブッダの七大欲求」「マレーの欲求リスト」など欲求に関する理論は複数ありますが、今回は「マズローの欲求段階説」を参考に考えます。

  1. 生理欲
    :生命維持に関する欲求で、最も根源的な欲求
  2. 安全欲
    :安全な環境を求めたり、身を安定させたいと願う欲求
  3. 所属欲
    :他人との繋がりを求める欲求
  4. 承認欲
    :他人から認められたい、自尊心を満たしたい欲求
  5. 自己実現欲
    :自分らしさを追求したい欲求

これらの欲求を先ほどの例に当てはめるとしたらこうなります。

  • 仕事が思い通りにいかない事に苛立ちを感じている → 仕事で成果を出して周囲の人から認められたい(承認欲
  • 過去のトラウマをまた思い出して目の前の事に集中していない → 同じことを繰り返して辛い思いをしたくない(安全欲
  • 将来の漠然とした不安が心の中に渦いている → 自分の思い描いた生き方をしたい(自己実現欲
  • 親から頻繁に連絡が来て鬱陶しいと感じている → 他人に自分の生活を邪魔されたくない、自分らしく生きたい(自己実現欲

これは一例ですが、人は満たされたいという心の欲求が一日に何度も繰り返し発生していて、その度に心が反応しては悩みに繋がっています。

ここでのポイントは、満たされたいという心の欲求とどう折り合いをつけていくかということです。

残念ながらこの欲求を無くすことは人間である以上出来ません。

大切なのは、「心というのはそもそもそういうものだ」というマインドを持ち、受け入れることです。

心の状態を客観視する(マインドフルネス)

満たされたいという心の欲求があるということを理解した上で悩みを消すためには、心の状態を客観視する手段を身につけることが有効です。

心の状態を客観視する方法は3つあります。

  1. 言語化
    :心の状態がどうなっているのかを言葉にする
  2. カテゴリ化
    :何に分類できるのかを考える
  3. 感覚に集中
    :体がどのような反応をしているのかに意識を向ける

言語化

言語化とは、心の状態がどうなっているのかを言葉にすることです。

例えば、明日にプレゼンを控えていて緊張していたら「今わたしは緊張している」と言葉にします。

他にも休日に一日中スマホを触っていて満たされない気持ちがあったら、「心が満たされないな」「退屈しているな」と言葉にしてみます。

このように、思っていることを言語化することを「ラベリング」と呼びます。

言語化が悩みを消すのに有効な理由は、言語に感情を乗せて悩みを心から切り離すことができるからです。

これは、自分の心の状態を客観的に観察することで、自分の感情ではないという錯覚を利用して切り離しています。

実際に声に出す必要はないので、「今キーボードを打っている」「上司に声を掛けられた」「駅に向かって歩いている」と日常生活の動作も含めて言語化する習慣を身につけることが、悩みから解放されるための第一歩です。

カテゴリ化

心の状態を言語化したら、今度はそれをいくつかの種類にカテゴライズします。

カテゴリ化は自由ですが、今回は欲求に応じて分類することにします。

おさらいですが、マズローの欲求5段解説は以下の通りです。

  1. 生理欲
    :生命維持に関する欲求で、最も根源的な欲求
  2. 安全欲
    :安全な環境を求めたり、身を安定させたいと願う欲求
  3. 所属欲
    :他人との繋がりを求める欲求
  4. 承認欲
    :他人から認められたい、自尊心を満たしたい欲求
  5. 自己実現欲
    :自分らしさを追求したい欲求

例えば、先ほどの4つの例を参考に心の状態をカテゴリ化すると以下のようになります。

  • (言語化) → 仕事が思い通りにいかない事に苛立ちを感じている → 仕事で成果を出して周囲の人から認められたい → 承認欲
  • (言語化) → 過去のトラウマをまた思い出して目の前の事に集中していない → 同じことを繰り返して辛い思いをしたくない → 安全欲
  • (言語化) → 将来の漠然とした不安が心の中に渦いている → 自分の思い描いた生き方をしたい → 自己実現欲
  • (言語化) → 親から頻繁に連絡が来て鬱陶しいと感じている → 他人に自分の生活を邪魔されたくない、自分らしく生きたい → 自己実現欲

ポイントは今の心の状態が「どの欲求に分けられるのか機械的に決めること」、「良し悪しで心の状態をカテゴリ化しないこと」です。

そして、一度カテゴリ化したものは頭から捨て去りましょう。

特に今の心の状態が妄想によって生まれているのだとしたら、その状態をリセットする必要があります。

妄想をリセットする基本は、「今、考えているのは妄想だ」とラベリングをすることです。妄想は無意識のうちにはまっているものなので、妄想をしていると気づいた瞬間にラベリングをするようにしましょう。

妄想をラベリングしたら、そのことを忘れるくらい目の前のことに集中するようにしましょう。これを習慣的に続けることで頭がクリアになって、妄想する癖を徐々に減らすことができます。

目の前のことに集中する方法は下記で紹介しています。

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感覚に集中

体がどのような反応をしているのかに意識を向けると溜まった疲れやストレスが軽減される効果があります。

まず、落ち着いて座れる椅子に座ったら目を閉じて意識を全身に向けます。

例えば、足の関節・筋肉の動き、地面と足裏が接触する感覚はどうなのか。裸足だから床から冷たい感覚が伝わってくるのか、靴を履いていて足の甲が締め付けられる感覚があるのか、座っているから足の筋肉はリラックスしているか。

今度は呼吸に意識を向けると、お腹の膨らみや縮み、鼻先を通る空気の感覚は感じるか。

こういった日常の中で意識していない体の感覚に集中して、感じ取っていく方法を「ムーブメント瞑想法」と呼びます。

体の感覚に集中することで、体の余計な反応は低減していき溜まった疲れやストレスを軽減することが可能になります。

まとめ


【辛い】悩みと向き合い乗り越える方法 | 悩みの原因と対策を解説

  1. 悩みの根本は「刺激と反応」
    目や耳、手や舌などの五感から刺激が入力されるとそれを解釈・判断をして、反応を繰り返している。
    刺激に対して反応を繰り返していることが悩みを生まれる要因。
  2. 苦悩は無くすのではなく、理解する
    悩みを俯瞰して観察し、ありのまま理解することが重要。
    「受け入れる」のではなくて、そのような思いが自分の頭の中に「存在している」としっかり認識する。
  3. 悩みの原因に着目する
    悩みの原因は、満たされたいという心の欲求によって反応しているものが大半。
    欲求を無くすのは困難であるため、満たされたいという心の欲求とどう折り合いをつけていくかを知り、上手く折り合いをつける方法を身につける。
  4. 心の状態を客観視する(マインドフルネス)
    満たされたいという心の欲求があるということを理解した上で悩みを消すためには、心の状態を客観視する手段を身につけることが有効。
    • 言語化
      言語化とは、心の状態がどうなっているのかを言葉にすること。
      言語に感情を乗せて悩みを心から切り離すことができるため、客観的に悩みを見ることができる。
    • カテゴリ化
      言語化したものを分類分けすること。
      カテゴリ化することで悩みがどのような心の欲求から発生しているのかを分析することができ、漠然とした悩みを解消させることができる。
    • 感覚に集中
      日常の中で意識していない体の感覚に集中して、感じ取っていく。
      体がどのような反応をしているのかに意識を向けると溜まった疲れやストレスが軽減される効果がある。

今回は悩みの原因が何なのか、悩みを乗り越えるためにどのような対策が有効なのかについて解説していきました。

悩みを消す最も有効な方法は何かに没頭することだと私は考えていますが、もし没頭することがないという人は瞑想を強くおすすめします。

気になるかたは以下から実践方法を確認してみてください。

【マインドフルネス】不安や悩みが解消する瞑想法5選 科学的に脳を休ませる方法とは?

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参考文献

  1. 社会人の教養. 『【どれ使う?】欲求の種類を8つの理論から濃厚解説|欲求を満たせばビジネスは成功する』
    https://asu-yoku-laboratory.com/theories-of-desire