今日からダイエットすると覚悟決めたのに家でくつろいでいる。

資格の勉強を始めると決めて本を買ったのに手をつけていない。

やろうと決心したけど行動がなかなか伴わない。

行動する人になるための要素と身につけるための方法を知りたい。

今回はこのような悩みに答えていこうと思います。

やろうと思っていたけど面倒になって後回しにしてしまう、というのは誰もが一度は経験があるかと思います。

例えば以下のようなことを後回しにしたことはないでしょうか。

  • 皿洗いをする
  • 洗濯をする
  • ジムに行く
  • 資格の勉強をする
  • 免許の更新をする
  • 親に感謝の手紙を書く

平日は仕事で時間がないし、休日は家族や友人との予定で時間がないからと、心の片隅にはずっと残っているけど、面倒でいつも後回しにしてしまっていないでしょうか。

では、上記のような面倒なこともすぐ実行する人になるにはどうすれば良いのか。

結論を先に述べてしまうと、以下の3つの力を磨くことです。

  1. 実行力
  2. 回避力
  3. 意志力

この3つの力について、スタンフォード大学で健康心理学についての実践的戦略を提供する講義で有名なケリー・マクゴニガル氏も以下のように述べています。

Willpower is much more than the ability to say “no” to temptation. It’s actually made up of 3 powers to help you become better:
I will” power: Doing things that improve your quality of life;
• “I won’t” power: Not doing things that impairs your happiness, well-being or success; and
• “I want” power: Focusing on your most important long-term goal.

The Willpower Instinct: How Self-Control Works, Why It Matters, and What You Can Do to Get More of Itより引用

ざっくり言うと、人生をより良いものにするためには「する力」「しない力」「望む力」が役に立つというメッセージです。

今回紹介する「実行力」「回避力」「意志力」というのは正にこの「する力」「しない力」「望む力」に該当します。

では具体的に「実行力」「回避力」「意志力」とは何なのか、この力を磨くにはどうすれば良いのかについて解説していきます。

実行力

実行力を一言で説明すると「目標や夢に近づくための力」です。

ビジネスマンであれば、目的や目標に対する計画を設定して確実に行動する力というのは身につけることで仕事の成果が大きく左右されるものかと思います。

ビジネス番組に出ている経営者やスポーツ選手など、世間一般的に何かしらの功績や成功を収めていると称賛されている人がよく言っている言葉の一つが

みんなやっていないだけ

人の基本能力に大した差はないのだから、あとは自分自身の弱い心に負けずにやり続けたかが重要である。

まさにその通りであると私も感じており、やるかやらないかという実行力は能力以上に重要な素養だと思っています。

学生時代の話ですが、あの人は才能はあるから勉強したら絶対良い学校に行けるのにと言っている人がいました。

多少勉強はしてきた身からすると、どれだけ才能があってもその勉強を継続することが一番大変なんだけどな、と思ってしまいます。

スポーツ選手やアーティスト、経営者や政治家などにおいて、ある一定の功績を上げている世界的に有名な人の伝記では、途中投げ出したくなるようなとてつもない挫折や失敗をしながらも、行動をし続けている人が多くいます。

つまり、やり続ける実行力というのは目標に近づくためには必須であり、絶対的に必要な力と言えます。

実行力を磨くためには

では実行力を磨くにはどうしたら良いのか。

実行力を磨く方法は多くありますが、以下の方法がおすすめです。

  1. 小さいことから始める
  2. 習慣になるまでの日数を知る
  3. 午前中に実行する
  4. 目的を明確にする
  5. 難しい方を選択する

一つずつ説明していきます。

小さいことから始める

目標を立てる時に重要なのは実行可能性が高くなるように計画を練ることです。

自己啓発本やセミナーに行って気持ちが高ぶり「本を月100冊読もう」「明日からジムに毎日行こう」と無理な予定を立てたり、「100億で会社をバイアウトして悠々自適な暮らしをする」「いつかテレビに出て芸能人の仲間入りをする」といった大半の人が達成不可能な高すぎる目標を設定していませんでしょうか。

もちろん人によってそれが可能な人もいると思います。

しかし、多くの場合は気持ちが先行しており何から行動すれば良いのか迷ってしまうくらい高すぎる目標を自分に課してしまっていることがあります。

また、いつかそれが実現できると信じてそのことについて考え続けていると、目標に近づいていると錯覚します。

行動の伴わず目標に近づいていると錯覚する一方で、心の内ではそのハードルの高さから強い抵抗を感じて「やっぱりやめておこうかな」「自分には無理かもな」と投げ出すことに繋がりかねません。

まずやるべき事は目標を今日にでも達成できる最小の単位まで分解して行動することです。

  • 本を100冊読む → 1冊の本を開いて各章のタイトルを読む
  • ジムに毎日行く → スクワットを今すぐ1回する
  • 100億で会社をバイアウトして悠々自適な暮らしをする → 会社を設立する
  • FIREする → 証券口座を開設する

行動を分解することで今の自分が何をすべきなのかが明確になります。

やることが明確になることで心理的ハードルが低くなり実行に移しやすくなります。

習慣になるまでの日数を知る

小さなことから始めたら次は習慣になるまで続けましょう。

ただし、新しい行動を習慣まで昇華するには大きなエネルギーを使います。

「死ぬまでこれをずっと続けるのか」「いつになったら楽になるのか」と考えてしまうと、つい力が緩んでしまって挫折する原因になります。

歯磨きや朝シャワー、朝食を摂る、出勤するなどは毎日意識しなくても取り組みます。同じように新しい行動も徐々に習慣になると意識しなくても取り組めるようになります。

では、同じように新しいことが意識しなくても取り組めるようになるためにはどれくらい日数がかかるのでしょうか。

2009年にロンドン大学で発表された習慣化の形成に関する調査(How are habits formed: Modelling habit formation in the real worldy)では、平均年齢27歳の被験者約100人に対して、食事や運動についての新しい行動を取り入れてもらい、習慣として定着したかを判定する指標であるカチッサー効果が現れるようになった日数を調べています。その行動のハードルの高さによって効果が現れるまでの日数は変動しますが、中央値として66日かかるという結果が出ました。

したがって、何か新しい事を習慣化することで、行動を自動化するために必要な日数というのがおよそ66日であり、これが一つの目印になります。

この行動してから最初の66日間を継続することができれば、あとは実行力に関係なく自動的に取り組むようになる可能性をこの調査から読み取ることができます。

どのような行動も「やっても意味ないんじゃないか」という精神的なブレーキが初めのうちは強くかかります。

個人的経験則ですが、新しい行動を続けて1ヶ月ほど経つと、精神的なブレーキは小さくなり自然と取り組むようになってきます。

なかなか新しい習慣を身につけることができずに挫折してしまう人はこの66日という数字を意識して、この日数までは根気強く取り組んでみましょう。

午前中に実行する

あなたが実行しようとしている事に時間帯の制約がないのであれば、午前中に取り組むことで実行しやすくなります。

その理由は、人が行動するためには意志力が必要であり、午前中が1日の中でも最も意志力が高い時間帯だからです。

人は一日に35,000回もの意思決定をしていると言われています。布団から出るか、どの服を着るのか、何を食べるのか、誰に投票するのか、このような意思決定をする上で正しい判断をするために意志力を使います。

この意志力は無限に湧いて出てくるものではなく、消費するほど意志力は低下していきます。

そのため、習慣化しようと考えている行動を一日の後半に持ってくると、その時には意志力が低下してしまっており、実行力がなくなってしまっています。

逆にいうと午前中は意志力がそれほど消費されておらず、新しい行動を起こすためには最適な時間帯です。

朝は早ければは早いほど、仕事や家事などの用事で新しい行動を妨害される危険が少なくなるため、集中する環境も整いやすいことから非常におすすめです。

自身の価値観を整理する

あなたがどのようなことが重要だと考えているか、価値観を整理して実行したい行動を結びつけることは習慣化が成功する可能性を上げてくれます。

あなたが何かを実行しようと考えているとき、「何故それをするのか」を説明できますか?

体に悪いだろうからお菓子食べるのを止めよう、痩せないとなんとなく健康に悪そうだから運動しよう、といった曖昧な状態になっているのであれば、より目的を明確にすることが重要です。

自分にとってどのようなところにモチベーションを感じるのか、どのような意味を持つのかを深堀してみましょう。その先に本当にやりたいと思っている根本の理由があります。

進む方向を決めるために価値観を固めましょう。

ついでにですが、明確な価値観を持っている人は死亡率が低くなることが分かっています。

2014年にカナダのカールトン大学にてこの価値観に関するコーホート研究(Purpose in Life as a Predictor of Mortality across Adulthood)では約6000人の男女を対象として「価値観を持って生きているか」といった問いかけに対して「イエス」「ノー」のどちらに答えるかでその後の死亡率の推移を調査しています。結果としてはイエスと答えた人は14年後の死亡率が15%低いことが分かっています。

価値観を整理する方法としてPersonal Projects Analysis(PPA)と呼ばれる手法が有効なので、気になる方は下記もチェックしてみてください。

【価値観】人生の満足感を上げてくれる自己分析手法「PPA」に基づく価値観の決め方

今回は人生の満足感を上げてくれる自己分析手法「PPA分析」に基づく価値観の決め方について紹介しようと思います。 自己分析とは自分がどのような事に重点を置いているか…

難しい方を選択する

行動を続けていると徐々に人は慣れてきます。

行動が慣れてくると考える必要がなくなり流れ作業のようにこなすことができるようになるため成長がなくなってしまいます。

例えば筋トレでも10kgのダンベルをずっと使っていては筋肥大はある一定の所で頭打ちになってしまいます。

より筋肉を大きくしたい、高重量を持ち上げたい、という上の目標を達成するためには高重量のダンベルを使う必要があります。

筋トレに限らず、自身の選択を都度見直しをして簡単な方ではなく難しい方を選択することが実行力を磨く上で非常に重要です。

難しい方を選択する際に考えるべきなのが、人の成長における4つの領域です。

この領域の中でも、実行力を磨き自分を成長させるには「Lerning Zone」に身を置くことが重要になります。

先ほどの筋トレを例に挙げると、今まで10kgの重量を扱っていたとしたら12kgに重量を変えてみる、30回のスクワットを35回に変えてみるといった感じです。

今までやったことのない難しい事に取り組むことで適度に脳に負荷が掛かり、実行する力を継続的にを磨くことができます。

常にやったことのない難しい方を選びましょう。

注意点としては、難しすぎる選択をとってしまい「Panic Zone」とならないように難易度の調整をする必要があることです。

元々10kgのダンベルを使っていた人が30kgのダンベルに変えると怪我したりと全く成長に繋がらなくなってしまいます。

難しい方を選択するときには急に大きな変化を加えるのではなく今の自分が対処できる領域を見極めて選択するようにしましょう。

回避力

回避力を一言で説明すると「妨げとなりうるものを予め避ける力」です。

これはつまり、やりたいことに取り組むための環境を整える「環境構築力」とも言えます。

私たちは感情のある人間なので、日によって落ち込んだり、イライラしたり、誘惑に負けそうになることもあります。

精神論でなんとかするというだけでは、あまりにも目標を達成するには困難な道を辿ることになります。

目標に対してより効率的に到達するためには工夫することが重要です。

その一つが目標に向かって進む際に妨げとなっているものを予め避けるということになります。

例えば、甘い香りのしたドーナッツが目の前に出てくることを考えると、ドーナッツが出てきたらどうやって耐えるべきかということではなく、そもそもドーナッツが出ない状態を作る方法を考えるということです。

目の前に出てこないようにするにはどうしたら良いのかという事を一歩引いた視点で改善策を講じていくことが回避力を磨き目標達成に近づくためのポイントです。

回避力を磨くためには

回避力を磨くための方法としては以下のようなことが挙げられます。

  1. スマホの通知はOFFにして隔離する
  2. モノを減らす
  3. 高糖質なお菓子を近くに置かない
  4. 不要なストレスから逃げる
  5. やらないといけない環境を作る

それでは一つずつ説明していきます。

スマホの通知はOFFにして隔離する

現代において、最も集中力を奪うと考えられるのがスマホです。

勉強しようと図書館に行ったのに、勉強の合間についついスマホに通知が来ていないか確認してしまう。そういった経験がある方は多いかと思います。

サイレントモードに設定して、すぐ使わないようにバックの中にしまっとけば良いと考えますが、実際にはスマホを使わなかったとしても、近くに置いておくと人の注意を引きつけてしまう力を持っている事がわかっています。

これはスマホに手を伸ばして確認出来るという選択肢が頭に残ってしまい、注意が目の前のことに全て向かないことが原因です。これは空腹の中、甘い匂いのするフレンチトーストを目の前に置かれているのと同じようなものです。

ついでにですが、これは寝ている時も同じようなことが起きており、寝室にスマホを置くだけで睡眠の質が低下するという報告もされています。

身近に置いてしまいがちなスマホですが、近くに置かない習慣をつけるようにしましょう。

おすすめは玄関に充電スタンドを設置して、離れた場所にスマホの居場所を作ることです。

これによって基本的に生活範囲とスマホを物理的に隔離することが出来るので、集中力を維持することができます。

スマホはいますぐ隔離しましょう。

モノを減らす

ものが散らかっている部屋というのは、それだけで人の集中力奪います。これは、周囲に何か障害となるものが視界に移ると、それを不安や恐怖などの感情を司る扁桃体が活性化してしまうからです。

目の前のことに集中したくても、無意識でそのものに注意が向いてしまうため、物が多くある部屋というのはそれだけで集中力を奪ってしまいます。

つまり、デスクの上や家の中に余計なものが出ていてキレイに保たれていないと、勉強や仕事に向かう集中力が低下してしまいます。

部屋をきれいにする・物が少ない環境を作るということは集中する上で重要なことです。

つい部屋にものが散らかってしまう人はものを持ち過ぎているのかもしれません。

まずは必要のないものを捨てる習慣をつけましょう。

モノを捨てる上での一つの基準は以下になります。

それが売っていたらまた買うか

もちろん人からもらった手紙や写真など2度と手に入らないものもありますが、購入できるものだとしても買わないのであれば生活には必要のないものであると言えます。

まずはクローゼットを開いて、捨ててもまた買わないなと思うものがないかチェックしてみましょう。

高糖質なお菓子を近くに置かない

高糖質なお菓子というのは高GIなものが多く、集中力が低下する原因となります。

「GI」というのは「グリセミック・インデックス」の略で、食品に含まれる糖質が血糖値をどれだけ上げるのかを、グルコースを「100」として相対的に数値化した指標になります。

このGI値は100に近いほど、血糖値の上昇が急激になり、GI値が100よりも低いほど、血糖値の上昇は緩やかになります。

つまり、同じ100gの糖質を取った場合でも、すぐに消化されて血糖値が急激に上がるものと、ゆっくり消化されて緩やかに上昇する食品があるということになります。

パンやご飯、麺類などの糖質中心の食事を摂ると、食後30分ほどで、「血糖値スパイク」が体の中で起こります。

血糖値スパイクによって急激に血液中の糖質量が増え、インスリンの大量分泌により、血液中のブドウ糖が減ると、脳の活動エネルギーとして十分に供給されなくなるため、集中力低下につながります。そして何より眠くなります。

端的にいうと高糖質なものを食べると集中力が低下するということです。

対して低GI値の食品は血糖値の上昇が緩やかなので、脳に継続的にエネルギーを供給できるようになり、集中力を保つことができるようになります。

お腹が空いたときの間食としておすすめしたいのが個包装になっている素焼きナッツです。

ナッツはビタミンEやオメガ3を多く含んでおり脳の老化予防につながります。

また、1袋食べるだけでもレプチンが分泌されて満腹中枢神経が刺激されるため食欲が収まります。

結果として血糖値を上げて集中力を削ぐような高糖質な食べ物が食べたくなる衝動を抑えることができます。

不要なストレスから逃げる

隣人との劣悪な人間関係、睡眠不足、座りっぱなしの生活スタイル、その他慢性的なストレスを引き起こす要因は新しいことをするための実行力を奪います。

嫌なことから逃げるというのは恥ずかしいことだと思う人もいるかもしれませんが、それは間違っていると私は思っています。

嫌なことや苦手なことでも我慢してやりなさいと小さい頃は教わった人もいるかも知れませんが、我慢するのではなく逃げるというのは一つの解決策です。

自分の実行力が奪われる原因になっているのであれば、我慢する方が失うものが大きいと考えられます。

ストレスとはいっても逃げるべきではないストレスもあります。例えば、未知のことに挑戦する時もストレスが一時的に掛かります。

それは目標達成のために必要な精神的負荷なので自分のためになるストレスです。

自分のためになるストレスなのか、不要なストレスなのか見定めて不要なものであれば全力で逃げましょう。

やらないといけない環境を作る

集中したい環境を作るために、「食事・寝る部屋」「集中する部屋」のように、空間的に分けるという方法があります。

ものが散らかっていると集中できない、という話と似た話ですが、座り心地の良いソファやベットがある近くに作業机があると、それらの誘惑に意識が取られて集中できないということが起きてしまいます。

理想はそれ以外できない集中部屋を作ることです。

ただ、自宅で集中するためだけの部屋を作るというのは難しいので、近くのカフェを代わりに集中する環境として使うのがおすすめです。

もし、カフェを集中する環境として使うのであれば、必要なもの以外持ち歩かないようにしましょう。できればスマホも必要なければ家に置いておきたいところです。

そのようにして勉強や仕事など、それ以外できない環境を作り出すことで他のことに気を取られなくなるので、集中力を持続出来るようになります。

意志力

意志力を一言で説明すると「己の信念を貫く力」です。

一度自分の信じるべきもの、価値観、考え方を決めたらあとはそれを疑わずに信じ続けることです。

海外での一人旅や独立、起業などの新しいことをしたり、一定のリスクのあることに挑戦しようとすると、周囲の人はネガティブな面を見て「やめた方が良いんじゃないか」と止めることがよくあります。

それを聞いて「自分のためを思って言ってくれているし心配掛けたくないから止めておこう」と思って立ち止まるのか「それでも自分が決めたことだから悔いが残らないように挑戦してみたい」と考えて変わらずに挑戦をするのかは、その人が揺るぎない信念を持っているか、ひいては強い意志力を持っているかで決まってきます。

もちろんどちらの方が正しいかというのはその人の価値観、考え方によって異なりますが、少なくとも周りに言われた通りに動いたり期待された通りに動くような生き方は意志力を全く持たない生き方となっている可能性があります。

他人に振り回されない強い意志力を持つということは、自分のための人生を全うするためには必要不可欠な能力であると言えます。

意志力を磨くためには

意志力を磨くためには以下のような方法が有効です。

  1. 良質な睡眠をとる
  2. 運動する
  3. 瞑想する
  4. デジタルデトックスをする
  5. 限界を越える

それでは一つずつ説明していきます。

良質な睡眠をとる

日中の集中力と意志力を持続するために不可欠なのが良質な睡眠です。

睡眠不足は前頭前野機能が低下するため、判断能力の低下、ストレス耐性の低下、そして集中力の低下につながります。

睡眠を軽視して徹夜して勉強したり仕事をする方がいます。しかしながら睡眠不足の状態では生産性は落ちていますし、記憶の定着もしづらくなっているので非常に効率が悪い状態と言えます。

睡眠には体を休めるというだけでなく脳を整理整頓する役割があります。

寝ている間も脳は動いていますが、睡眠が深くなるほど脳波の振幅は大きくてゆっくりとしたものになります。この間に日中に見たことや聞いたことなどの情報を記憶として定着させようと働きます。

睡眠のポイントは沢山ありますが、特に重要だと考えているのが以下のポイントです。

入眠90分の睡眠の質を上げる

入眠して初めの90分間は睡眠の中でも最も眠りが深いノンレム睡眠となっており、睡眠全体に占めるノンレム睡眠の大半が90分間のノンレム睡眠です。

ノンレム睡眠の質が良いほど心身ともにリラックスすることができ、自律神経が整うだけでなくホルモンバランスが良くなります。

特に人の成長に関わるグロースホルモンはこの90分のノンレム睡眠時に睡眠全体における70%が分泌されます。

これによって日中の疲労回復や損傷した神経細胞の補強をしてくれます。

したがって、日中消耗した集中力を回復し、翌日も高い集中力を発揮するためには、入眠90分の睡眠の質を上げることが重要になります。

運動する

脳を鍛える上で最も効果的なのは何だと思いますか。

  • パズルゲームをプレイする
  • クロスワードパズルを解く
  • 数独を解く
  • ジグソーパズルを組み立てる
  • 囲碁や将棋などのボードゲームをプレイする
  • 記憶力トレーニングを行う
  • 新しい言語を学ぶ
  • 日記をつける
  • ディベートや討論に参加する
  • アナグラムを考える

脳の成長のために色々な方法が試されていますが、最も効果的だと考えているのが運動です。

2009年に出版されたジョン J. レイティ氏とエリック ヘイガーマン氏が著書の 『脳を鍛えるには運動しかない! 最新科学でわかった脳細胞の増やし方 』の中でも運動が脳に良い影響を与えるということが述べられています。

運動をするとニューロンのつながりを強めて脳回路をより強固なものとすると同時に、海馬でニューロンの親である幹細胞を生成してくれるようになります。

また、ニューロンの新生に欠かせない栄養因子であるBDNFやVEGFなどが盛んに供給されるようになり、脳の成長を後押ししてくれます。

このような変化は最終的に脳の能力を向上させ海馬や前頭前野が発達し、記憶力や論理的思考、感情のコントロールがより上手くできるようになります。

運動が健康に良いとわかったところで、実際にどのような運動をすることが効果的なのでしょうか。

圧倒的に効果のある方法が「HIIT」です。

HIITとはHigh Intensity Interval Trainingの略で直訳すると「高強度インターバルトレーニング」で負荷の高い(高強度)運動と休憩(インターバル)を短いスパンかつ短時間で交互に行うトレーニングのことを指します。

このHIITというのは短時間で行えるだけでなく「有酸素運動」と「無酸素運動」それぞれの運動効果を得られる非常に効率的な運動法です。

具体的なやり方は以下の記事で書いています。

【コスパ最強】人生を変える超効率的運動法「HIIT」とは ~少しの努力で最大の成果を~

今回は人生を変える超効率的運動法ついて解説していこうと思います。 みなさん運動はしていますでしょうか。厚生労働省「国民健康・栄養調査報告」によると、運動習慣のあ…

瞑想する

「瞑想」という言葉を聞いて宗教的な怪しさを感じた人もいるかもしれませんが、それは大きな誤解であることを先に述べておきます。

瞑想の効果は科学的に証明されており、GoogleやUCLAなど誰もが知っている企業や大学で導入されるようになってきています。

過去にしてしまった失敗や未来にする不安など、人それぞれ悩みを持っています。その悩みで目の前のことに集中できず、意志力を消耗しています。

瞑想には悩みを低減させて今この瞬間に集中するための意志力を磨くことができます。

具体的には以下のような瞑想法が意志力を磨くのにおすすめです。

  • マインドフルネス呼吸法
  • モンキーマインド解消法
  • ムーブメント瞑想法
  • RAIN
  • メッタ瞑想法

ここでは基本的な瞑想法であるマインドフルネス呼吸法のやり方を説明します。

基本姿勢をとる

  • 椅子に座ったら背筋を伸ばす(骨盤から首筋まで背骨がまっすぐになっている感覚)
  • 腹筋に力を入れずに手は太ももの上に置く
  • 意識に集中するために目を閉じる
STEP
1

意識を体の感覚に向ける

  • 手が足に触れている感覚、お尻が椅子に触れている感覚に意識を向ける
  • 体が重力で下に引っ張られる感覚に意識を向ける
STEP
2

呼吸に注意を向ける

  • 鼻呼吸をする時に、鼻を通る空気、空気が出入りして上下する胸・お腹の感覚を意識する
  • 無理に深呼吸しない
  • 呼吸をカウントするのも不要
STEP
3

呼吸に雑念が浮かんできたら

  • 雑念が浮かんできたことに「気づき」注意を呼吸に意識的に戻す
  • 雑念は脳のDMN(デフォルトモードネットワーク)の活動で生じるのは当然なので自分を責めない
STEP
4

毎日続ける

  • 1日5分から始める
  • 毎日同じ場所、同じ時間に行う
STEP
5

瞑想は継続することで強い意志力を身につくので、毎日時間を取って取り組んでみましょう。

他の瞑想法のやり方と瞑想の効果について、下記で書いています。

【マインドフルネス】不安や悩みが解消する瞑想法5選 科学的に脳を休ませる方法とは?

基本的な瞑想法であるマインドフルネス呼吸法から説明します。この瞑想法はこのような時におすすめです。 注意散漫になっている時 無気力で何もやる気にならない時 ちょ…

限界を越える

筋トレをしている人であれば実感すると思いますが、自分が限界だと思っていた回数を意志力で超えることがあります。

これをよく「限界突破」と表現しますが、正確には「限界だと思っていた壁を突破」したということです。

何が言いたいかというと、私たちが限界だと思っているラインというのは実際には限界ではない場合が多いということです。

これは、筋トレに限らず意志力についても同様のことが言えます。日中に仕事や勉強で考え尽くした脳は意志力を失ってもう考えられないと自分で限界のラインを作っています。

限界と感じているということは諦めるための理由を見つけようとしているということでもあります。

今日は仕事を一生懸命頑張ってもう限界だと感じると、それを良いことに私たちは筋トレや資格の勉強、家族とのコミュニケーション、健康的な食事に気を遣うといったことを「今日は頑張ったし」と理由を付けて放棄してしまいます。

「もう無理だ」と思ったら、あと10秒で良いので粘ってみましょう。

実際にここで気力を振り絞って、少しでも粘ってくらいつくのか、諦めて後回しにするかで、数年後の意志力に天と地の差が生まれます。

精神論にはなってしまいますが、最終的には己との精神的な戦いです。一つずつ限界を超えていきましょう。

参考文献

  1. Kelly McGonigal(2011). 『The Willpower Instinct: How Self-Control Works, Why It Matters, and What You Can Do To Get More of It』. Avery.
  2. Patrick L. Hill and Nicholas A. Turiano. "Purpose in Life as a Predictor of Mortality across Adulthood". Psychol Sci. 2014 Jul; 25(7): 1482–1486.
    https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4224996/
  3. ジョン J. レイティ, エリック ヘイガーマン(2009). 『脳を鍛えるには運動しかない! 最新科学でわかった脳細胞の増やし方 』. NHK出版.
  4. アンデシュ・ハンセン (2020). 『スマホ脳』. 新潮社.
  5. アンデシュ・ハンセン (2022). 『運動脳』. サンマーク出版.