今回は「科学的根拠というのは目安でしかない」という話をします。
「科学的根拠が強いものを知りたい」「誤った情報を避けたい」という人はぜひ最後まで読んでいってください。
科学的根拠の強さ
論文や雑誌などで情報を収集するときに、どの程度の根拠に基づいているのかを考えたことはありますか?
その情報が正しいかどうかというのは、自分の知識として取り込んで良いものかを判別する上で重要です。
たとえば、バスケの試合を例に考えてみます。観客席で応援しているバスケ経験のない一般人が「ゴール下を制するものは試合を制す!」と言っていたらどうでしょうか。「この人が言っていることは本当なのか?」と疑いたくなりませんか。
それがスラムダンクの安西先生が言っていたら?リバウンド成功率とチーム勝利率に正の相関があることを示す調査があったとしたら?
恐らく一般人の発言よりもそちらの情報の方が正しいと思うでしょう。
これは情報に裏付けとなる根拠がどれだけあるかが、正しさを判断するためには重要だと示しています。
では、どのような情報が科学的根拠が強く信憑性の高いものなのでしょうか。
信憑性という観点において、情報は以下の4つに分けることができます。
メタアナリシス
「メタアナリシス」とは複数の研究結果を統合して、統計的にどのようなことが言えるのかを分析・解析する手法です。
つまり研究の研究です。
研究によって実験条件が偏っていたり、営利目的の恣意的な結果になっていることも少なくありません。
その点メタアナリシスは複数の研究の統計を見るので、単体の研究結果よりも科学的根拠の強いものになります。
注意点として、統計的傾向を捉えるので少数派の研究結果が報告されないという特徴があります。
そのため、重要な知見やネガティブな情報を取りこぼす可能性があります。
観察研究
「観察研究」とは研究に参加している被験者を定期的に調査したり、データを提供してもらうことで、研究対象の情報を収集して知見を見出す方法です。
「10000人を対象とした実験では〜」など人を対象とした研究は基本的に観察研究になります。
注意点として、実験条件や結果などは研究を行っている人が自由に設定できます。
ある企業にとって有利なように見せたり、特殊すぎる条件であったりすることで信憑性に欠けるものがあるため「メタアナリシス」と比較して科学的根拠は弱くなる傾向にあります。
専門家の意見・動物実験
「専門家の意見」について、専門家はその道のプロフェッショナルであることから深い知見と能力を持っている人の事を指します。
そのような人の意見はその領域を知り尽くしているので信頼できそうですよね。
しかし注意すべきことがあります。それは偏った意見となる可能性があるという点です。
糖尿病の専門家であれば「糖質は摂りすぎない方が良い」と警告するかもしれませんが、パーソナルトレーナーであれば「糖質はしっかり摂った方が良い」とアドバイスするかもしれません。
どちらもその道の専門家で信頼できそうですが、発言の言葉尻を捉えると矛盾していることを言っていますよね。
つまり、専門家の意見はある視点からのポジショントークであり、一方の意見だけを信用するというのは情報に偏りが発生して信憑性が低くなりやすいという事です。
「この専門家が言っているから絶対大丈夫」といった判断をしているとしたら一度見直ししてみるのが良いでしょう。
次に「動物実験」とは猿やマウスなどの動物を対象とした実験であり、医療、化粧品や食品などの安全性や有効性を検証する重要な研究プロセスとなります。
ただ、体も思考も行動も異なる動物の実験結果がそのまま人にも当てはまるのかというと疑問が残ります。
条件を揃えることができれば人を対象とした観察研究もされるので、あればそれを参考にした方が良いでしょう。
個人の経験則
「個人の経験則」は経験したり学んだりしたことに基づいた意見や考え方のことです。
SNS時代の現代は個人が自分の考えや趣味を発信するのが当たり前になっています。有名インフルエンサーが「この化粧品が良い!」と言えばその化粧品が大量に売れ、「このダイエット法で20kg痩せた!」と言えば同じようなダイエット法を実践します。
一参考情報にはなり得ますが、科学的根拠があるかというと怪しいところです。(人が良いと言っているものに対して水を差したいわけではないです。)
科学的根拠の高い情報を収集したいとしたらサンプル数1の情報である「個人の経験則」は避けるべきでしょう。
上記では4つの区分で表現しましたが、細分化したものとしてエビデンスピラミッドというものが存在します。(残念ながら「個人の経験則」は載っていません)
より詳しく知りたい方はそちらを参考にしてみてください。
情報に絶対はない
メタアナリシスは科学的根拠が最も強いと言いましたが、必ず正しいかというとそうではありません。
メタアナリシス的には「タバコを20年以上吸っている人は早死にする」ということを示唆していたとしても、健康に影響が出ていない人が1人でもいる限り、絶対にタバコを吸っていると早死にするとは100%言い切ることはできません。
数学の方程式や物理の定理のように必ずしも答えが1つになるわけではありません。
論文を読んでいると実感しますが、1000人を対象とした研究をすれば「○」の人もいれば「×」となる人も出てきますし、研究結果において「100%」になっているものは殆ど見たことありません。サンプル数が少ないものであればありますが。
世の中的には正しいと思われていることも科学的根拠を辿ると思ったより白黒はっきりしていないことがよくあります。
個人的にはどれだけ正しいと言われていることも「本当にそうなのか」と疑ってかかるくらいが丁度良いと思っています。