今回は「全粒穀物がなぜ体に良いと言われているのか」について解説していきます。

結論を先に述べてしまうと以下の3つが理由になります。

  1. GI値が低く血糖値の上昇が緩やかだから
  2. 精製しないため栄養が損なわれないから
  3. 全粒穀物を食べている人はそもそも健康的な生活をしているから

それでは一つずつ解説していきます。

全粒穀物がなぜ体に良いと言われている理由

GI値が低く血糖値の上昇が緩やかだから

GI値とは、食品に含まれる糖質が血糖値をどれだけ上げるのか数値化したものになります。

GI値は100に近いほど血糖値が急激に上昇します。

以下の表から分かるように、白米や食パン、うどんなどに比べて玄米や麦芽玄米、全粒粉パン、全粒粉パスタなど、全粒穀物はGI値が低い傾向にあります。

GI値が低く血糖値の急激な上昇が抑えられると、インスリン抵抗性が落ちづらく第二型糖尿病の発症リスクが低下することも分かっています。

精製しないため栄養が損なわれないから

精製する前の穀物というのはビタミン、ミネラル、食物繊維が多く含まれています。

例えば、玄米であれば胚芽と呼ばれる部分にこれらの栄養素が多く含まれています。

しかし、精製するとこの胚芽を削ぎ落とすため、ビタミン、ミネラル、食物繊維などの栄養が低下します。

実際に食物繊維やミネラルの摂取が糖尿病のリスクを下げたり、腸内環境の改善を示唆している研究結果も出ています。1

全粒穀物を食べている人はそもそも健康的な生活をしているから

全粒穀物と病気との関連性について調査している研究において、全粒穀物と食物繊維の摂取量が多い人ほどトータルの死亡率が低下することに加えて、糖尿病や特定のがん発症率の低下に相関があることがわかっています。2

ここで注意したいのは「死亡率を低くするためには全粒穀物や食物繊維を摂れば良いんだ!」と安易に判断してはならないということです。

なぜなら、上記の研究は「全粒穀物や食物繊維の摂取量が理由で死亡率が下がっている」という、因果関係を示したものではなく、相関関係があることを示しているだけであるだからです。

つまり、全粒穀物に含まれる栄養素を摂るということが直接健康に良い影響を与えているのではなく、そもそも全粒穀物を摂っている人は健康的な生活をしている可能性もあるということです。

実際に別の研究は、全粒穀物の摂取量が多い人ほど、野菜やフルーツ、魚介類など、一般的に健康に良いと言われる食べ物を食べて、加工肉やお菓子などの健康に悪いと言われている食べ物を避ける傾向にあることがわかっています。3

このことからも全粒穀物の摂取量が多いから死亡率が下がっているのではなく、他の健康的な食生活の影響によって死亡率が下がっている可能性もあるということです。

白米は健康に悪いのか

結論として「食べ過ぎれば健康に悪い」という可能性があります。

2012年にアメリカで行われた白米と疾患についてのメタアナリシスでは、アジア人の白米摂取量と第二型糖尿病の発症率に強い関連性があることを示唆しています。4

背景には昔と比べて身体活動レベルが低下し、海外の食文化が普及したことによって砂糖をたっぷり含んだお菓子や菓子パン、清涼飲料水などの血糖値を急激に上昇する食べ物が増えたことにより、インスリン抵抗性が落ちてきていることが一つの要因になっているようです。

したがって、毎日十分な運動をして血糖値が急上昇しないような食生活を維持し続ければ、白米を食べることが健康に悪影響を与えるという可能性は低そうです。

白米の摂りすぎは糖尿病発症リスクを上げる一方で、白米などの炭水化物を摂らなすぎる場合は健康に悪いのでしょうか。

2018年にアメリカのボストンで行われたメタアナリシスでは、糖質の摂取比率について全体に占める糖質量の割合が50〜55%が最も死亡リスクが低くなることが分かっています。この割合よりも低くなっても高くなっても死亡リスクは上がるということをこの研究では示唆しています。5

したがって、白米含め炭水化物は総摂取エネルギーの半分を目安に摂るようにするのが良いでしょう。

他にも下記で糖質について取り上げています。

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参考文献

  1. Jeroen S L de Munter , Frank B Hu, Donna Spiegelman, Mary Franz, Rob M van Dam. "Whole grain, bran, and germ intake and risk of type 2 diabetes: a prospective cohort study and systematic review". PLoS Med. 2007 Aug;4(8):e261.
    https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17760498/ ↩︎
  2. Andrew Reynolds, Prof Jim Mann, Prof John Cummings, Nicola Winter, Evelyn Mete, , Lisa Te Morenga. "Carbohydrate quality and human health: a series of systematic reviews and meta-analyses". Published:January 10, 2019DOI:https://doi.org/10.1016/S0140-6736(18)31809-9
    https://www.thelancet.com/article/S0140-6736(18)31809-9/fulltext ↩︎
  3. Kay D. Mann, Mark S. Pearce, Brigid McKevith, Frank Thielecke, Chris J. Seal. "Whole grain intake and its association with intakes of other foods, nutrients and markers of health in the National Diet and Nutrition Survey rolling programme 2008–11". Br J Nutr. 2015 May 28; 113(10): 1595–1602.doi: 10.1017/S0007114515000525
    https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4462159/ ↩︎
  4. Emily A Hu , An Pan, Vasanti Malik, Qi Sun. "White rice consumption and risk of type 2 diabetes: meta-analysis and systematic review". BMJ. 2012 Mar 15:344:e1454. doi: 10.1136/bmj.e1454.
    https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22422870/ ↩︎
  5. Sara B Seidelmann , Brian Claggett , Susan Cheng , Mir Henglin , Amil Shah , Lyn M Steffen , Aaron R Folsom , Eric B Rimm , Walter C Willett , Scott D Solomon. "Dietary carbohydrate intake and mortality: a prospective cohort study and meta-analysis". Lancet Public Health. 2018 Sep;3(9):e419-e428.
    https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30122560/ ↩︎