今回は私が今までに実践してきた本当におすすめしたい睡眠習慣についてTOP10を紹介します。専門家の本や論文をもとに効果的であると実感しているものに厳選して紹介します。一つでも新しい発見があればぜひ実践してみてください。

昼に眠くなったら迷わず15分仮眠をとる

昼寝をしていると、まるで「怠け者」かのように思われる節があります。眠くなった時に仮眠をすることは、集中力や生産性の向上、ストレスの軽減、気分の改善に効果的であるにも関わらずです。実際に仮眠が効果的であることは多くの研究で実証されています。

仮眠をとるだけでも効果的ですが、私のおすすめはコーヒーなど、カフェインを含む飲み物を飲んでから15分仮眠する方法です。この方法は「パワーナップ」とも呼ばれ、GoogleやAppleなどの企業でも導入されている有効的な手段です

体内時計のリズムでお昼過ぎは眠くなりやすい時間帯です。もし、毎日のように強い眠気が襲ってくるようであれば、夜にしっかり睡眠時間を確保する、高糖質な昼ごはんを避けるなど眠気の原因となっていることの改善をするようにしましょう。

毎日7時間寝る

しっかり寝るのは大事というのはわかりますが、実は無理に長時間寝るというのは健康上良くないようです。では適切な睡眠時間はというと7時間です。

カリフォルニア大学のDaniel Kripke氏が実施した100万人規模の追跡調査によると、病気で亡くなった人が最も少なかったのは睡眠時間が7時間の人たちでした。逆に最も死亡率が高かったのは睡眠時間が短いグループ(3時間未満)ではなく、睡眠時間が長いグループ(10時間以上)で、およそ1.3倍ほどに増加することがわかっています。1

もちろん、体質によっても必要な睡眠時間は異なります。夜10時に寝て自然と目が覚める時間がどれくらいか把握して、その時間は寝るようにするのが良いでしょう。

寝室にデジタルデバイスをおかない

もしかして寝る前にスマホを触っていませんか?

テレビやスマートフォンなどデジタルデバイスが寝室にあると、どうしても寝る直前まで使ってしまいます。2011年に行われた調査では、アメリカ人の90%が寝る直前にデジタルデバイスを利用しているようです。2

デジタルデバイスが良くないと言われる理由にブルーライトによる影響がよく挙げられます。実際ブルーライトの波長帯域である460nmの光を浴びると睡眠ホルモンのメラトニン分泌が急激に低下して体内時計に影響を与えることを示唆した実証実験もあります。3

したがって、スマホであればリビングや玄関などに充電器を設置するなどして、寝室には置かないようにするのがよいでしょう。

温度と湿度を調整する

温度については高すぎても低すぎても覚醒度を上げてしまい、深いノンレム睡眠の時間が短くなってしまいます。

ポイントは衣服や布団などを除いた体感温度がどれくらいが適切なのかについてです。1981年の実証実験では体感温度29〜33℃が最も覚醒度が低くなることが分かっています。4 服を着て布団を掛けた上で体感温度が29〜33℃になれば良いので、寝具環境や季節に応じて室温は13~29℃の範囲に収まるように調整するのが良いとされています。5

また、湿度について、冬は乾燥がしやすくて推奨湿度である60%を大きく下回ってしまう場合があります。乾燥しないオイルヒータで温度調整するのがおすすめです。

ラベンダーオイルで副交感神経を活性化する

好きな香りを嗅ぐことはリラックス効果があると同時に、末梢神経の血流が良くなることがわかっています。末梢神経の血流が良くなると末端から体熱を放出し、体の表皮温度と深部温度の差が小さくなり、自然と寝付きが良くなります。

香りの中でも、特に睡眠の質を上げる香りとしてラベンダーの香りがあります。ラベンダーの香りを嗅ぐと副交感神経が刺激され、体温、血圧ともに緩やかに低下して、誘眠効果の高いα波が増加したとの研究結果も報告されています。

その他には、ヒノキやスギなどに含まれているセロドールと呼ばれる香りは交感神経の興奮を鎮めてくれる効果があることもわかっています。6

ヒノキやスギを使っている旅館はなぜか心が落ち着く、という体験をしたことがある人もいるかと思います。これはセロドールの香りで副交感神経が活性化しているため、ということです。交感神経が優位となりやすい現代人はおすすめの香りと言えるでしょう。

起きる時間を一定にする

起きる時間は毎日同じにすることで、体内時計と睡眠リズムの同調が行われて、いつもの時間に入眠しやすくなります。逆に体内時計がずれると、寝たい時間に寝れないということが起こり得ます。夜ふかしをしやすい高校生であれば、平日と休日で睡眠の時間帯が平均で2時間以上ずれているそうです。7

10代の若者を対象とした調査では、起床時刻を3時間遅らせて2日間過ごすと、体内時計のリズムが45分程度遅れることが示唆されています。8

他にも、休日は昼過ぎまで寝て平日の睡眠不足を解消するということをする人も多いかと思います。ただし、これは体内時計を狂わす原因になるのであまりおすすめできません。自分の体を第一優先に、毎日しっかりと寝る時間を確保する前提で生活スタイルを調整するようにしましょう。

ベッドは寝るだけの場所にする

「ベッド=寝るだけの場所」と脳に認識させることは中途覚醒を減らすことにつながるようです。長時間ベッドの上で生活をさせた実証実験では、寝つくまでの時間が増加して中途覚醒の時間や回数が増加したと報告しています。9

就寝前や起床後にスマホをベッドの上で使いたくなりますが、上記のことからも避けた方が良いでしょう。

寝る直前の飲酒・喫煙はひかえる

そもそも私はタバコを吸わないですし、お酒も付き合い程度でしか飲みません。ただ、お酒を飲むときは睡眠直前には飲まないように気をつけています。

寝酒や喫煙は、生活習慣病発症の要因になるとともに、睡眠時無呼吸症候群のリスクを増加させるなど、睡眠を妨げる可能性が指摘されています。アルコールは入眠を一時的に促進しますが、中途覚醒が増えて睡眠が浅くなり熟睡感が得られなくなります。また、ニコチンには覚醒作用があることから、喫煙は入眠を妨げ睡眠を浅くします。10 11 12

お酒もタバコも嗜好品です。外部の人が文句をつけることではありませんが、同時に睡眠も大事にしたいと思っているのであれば、睡眠前の飲酒や喫煙は抑える方が良いでしょう。

朝食にトリプトファンをとる

夜に良い睡眠を得るための準備は朝食からすでに始まっています。休日はお昼すぎに起きたり、支度に手間取ったりして、朝食を食べないといった生活をしている人もいるかもしれません。つい抜いてしまいがちな朝食ですが、睡眠中の働きを正常にするために朝食が大きな影響を与えています。

寝ている間も脳は動いていますが、睡眠が深くなるほど脳波の振幅は大きくてゆっくりとしたものになります。この間に日中に見たことや聞いたことなどの情報を記憶として定着させようと働いたり、アルツハイマー病の原因となるアミロイドβなどのゴミを掃除する働きがあります。

先ほどのメラトニン分泌には、セロトニンの材料であるトリプトファンの摂取が必要であると述べました。

このトリプトファン→セロトニン→メラトニンの合成の流れはおよそ15時間ほどかけて合成されます。

夜22時に寝ている人であれば、15時間前の朝7時にトリプトファンを摂取することで、寝るタイミングでメラトニンの分泌がされてスムーズな入眠をすることができます。

ここまで説明しておいてなんですが、私は基本朝食を食べません。というのも、朝にご飯を食べない時の方が午前中に集中して作業を進められることと、オートファジーのために16時間の断食時間を設けているためです。私はこの生活が自分に合っていると感じているので朝食は抜いています。朝食をとるときはこのトリプトファンを意識して食べものを選ぶかプロテインを飲むようにしています。

昼以降のカフェインを避ける

これは私も守れていない時があるのですが、昼以降のカフェイン摂取はやはり避けた方が良いです。

カフェインは摂取して30分でアデノシン受容体と結合します。結合すると、覚醒抑制効果のあるアデノシンの働きを抑制します。

カフェインは様々なメリットがありますが、昼以降に摂取すると脳が覚醒したままとなるため控える方が良いでしょう。カフェインの体内半減期(効果が半分になる時間)は体質によって大きく異なり、摂取から4時間掛かると言われています。13

そのため、昼以降に飲むと夜までカフェインが体内に残り続けてしまい、寝つきが悪くなる可能性があります。

カフェインはコーヒーやお茶、エナジードリンクなどの飲料以外にチョコレートにも含まれています。昼以降はできるだけ避けるようにしましょう。

  1. Daniel F. Kripke, MD; Lawrence Garfinkel, MA; Deborah L. Wingard, PhD;. "Mortality Associated With Sleep Duration and Insomnia". February 2002. JAMA Phychiatry.
    https://jamanetwork.com/journals/jamapsychiatry/fullarticle/206050 ↩︎
  2. Michael Gradisar, Amy R. Wolfson, Allison G. Harvey, Lauren Hale, Russell Rosenberg, Charles A. Czeisle. "The Sleep and Technology Use of Americans: Findings from the National Sleep Foundation's 2011 Sleep in America Poll". J Clin Sleep Med. 2013 Dec 15; 9(12): 1291–1299.Published online 2013 Dec 15. doi: 10.5664/jcsm.3272
    https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4987093/  ↩︎
  3. Steven W Lockley, George C Brainard, Charles A Czeisler. "High sensitivity of the human circadian melatonin rhythm to resetting by short wavelength light". J Clin Endocrinol Metab. 2003 Sep;88(9):4502-5. doi: 10.1210/jc.2003-030570.
    https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12970330/ ↩︎
  4. E H Haskell, J W Palca, J M Walker, R J Berger, H C Heller. "The effects of high and low ambient temperatures on human sleep stages". Electroencephalogr Clin Neurophysiol. 1981 May;51(5):494-501. doi: 10.1016/0013-4694(81)90226-1.
    https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/6165549/ ↩︎
  5. 厚生労働省(2014). 『健康づくりのための睡眠指針2014』
    https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000047221.pdf ↩︎
  6. Samantha Dayawansa, Katsumi Umeno, Hiromasa Takakura, Etsuro Hori, Eiichi Tabuchi, Yoshinao Nagashima, Hiroyuki Oosu, Yukihiro Yada, T Suzuki, Tatketoshi Ono, Hisao Nishijo. "Autonomic responses during inhalation of natural fragrance of Cedrol in humans". Auton Neurosci. 2003 Oct 31;108(1-2):79-86.
    https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/14614968/  ↩︎
  7. Michael Gradisar, Greg Gardner, Hayley Dohnt. "Recent worldwide sleep patterns and problems during adolescence: a review and meta-analysis of age, region, and sleep". Sleep Med. 2011 Feb;12(2):110-8. doi: 10.1016/j.sleep.2010.11.008. Epub 2011 Jan 22.
    https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21257344/  ↩︎
  8. Stephanie J Crowley, Mary A Carskadon. "Modifications to weekend recovery sleep delay circadian phase in older adolescents". Chronobiol Int. 2010 Aug;27(7):1469-92. doi: 10.3109/07420528.2010.503293.
    https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20795887/ ↩︎
  9. Wehr TA. "The impact of changes in nightlength (scototperiod) on human sleep". Turek FW, Zee PC ed. "Regulation of sleep
    and circadian rhythms". New York: Marcel Dekker, Inc., 1999;263-285
    https://www.taylorfrancis.com/chapters/edit/10.1201/9781420001211-12/impact-changes-nightlength-scotoperiod-human-sleep ↩︎
  10. J A Mennella. "Short-term effects of maternal alcohol consumption on lactational performance". Alcohol Clin Exp Res
    . 1998 Oct;22(7):1389-92. doi: 10.1111/j.1530-0277.1998.tb03924.x.
    https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/9802517/ ↩︎
  11. David W Brook, Elizabeth Rubenstone, Chenshu Zhang, Judith S Brook. "Trajectories of cigarette smoking in adulthood predict insomnia among women in late mid-life". Sleep Med. 2012 Oct;13(9):1130-7. doi: 10.1016/j.sleep.2012.05.008. Epub 2012 Aug 15.
    https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22901402/  ↩︎
  12. Lin Zhang, Jonathan Samet, Brian Caffo, Naresh M Punjabi. "Cigarette smoking and nocturnal sleep architecture". Am J Epidemiol. 2006 Sep 15;164(6):529-37. doi: 10.1093/aje/kwj231. Epub 2006 Jul 7.
    https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16829553/  ↩︎
  13. NCNP病院(2021). 『カフェインと睡眠』
    https://www.ncnp.go.jp/hospital/guide/sleep-column14.html ↩︎