友人関係や職場で、周りに合わせすぎて自分の意見が言えず、振り回されている人はいませんでしょうか。

今回はなぜ人は同調してしまうのか、他人に振り回される人の特徴についてアッシュの同調実験を参考にして紹介していきます。

集団行動における「同調」を見つけたアッシュの同調実験

アッシュの同調実験とは、1956年にアメリカの社会心理学者ソロモン・アッシュが発表した集団行動についての古典的な実験です。1

実験内容としては、ある「標準線」の長さをA ,B,C3本の「比較線」のどれと一致するか、という簡単な問題を被験者にさせました。参加者はグループに分けられ、1人を除いて全員が実験者の仲間で、被験者を除いて同じ間違った答えを出すように指示されます。実験の結果は、正解(C)が明白だったにも関わらず、大半の参加者が集団の誤った判断に従うという結果になりました。

この結果から、明らかに間違っている判断であっても、人は集団の判断に従おうとする「同調」があるということを示しています。

端的に言うと、「左が正解だ」と思っていても「同調」で他の人が右に進んだら同じく右に進んでしまう、ということです。

自分の意見よりも集団の意見を選んでしまう要因について、2つあります。

自分の意見よりも集団の意見を選んでしまう要因

  1. 自分の意見が間違っているのではないかと思うため
  2. 多数派の判断に賛同してその集団に受け入れられるため

この2つの要因から自分の意見よりも周囲の意見を選んでしまうということです。

同調行動を起こしやすい人とそうでない人の特徴

同調して「自分の意見が間違っているんじゃないか」「仲間はずれにしないようにしよう」と自分のやりたいことや意見を押し殺して、周囲の人と同じ行動をとってしまう。このような行動を「同調行動」と呼びます。

同調行動を起こしやすい人の特徴は3つです。

同調行動を起こしやすい人の特徴

  1. 他人の評判や評価ばかり気にしている
  2. 自己肯定感が低く自分で決めるよりも決まったルールに従うことを好む
  3. 緊張すると困惑して固まってしまう

人間は社会的な動物なので、あるコミュニティに属して生きたいという「社会的欲求」があります。コミュニティに同調すれば、その集団の中に所属できるという安心感を得ることができます。

ただ、同調しすぎてそのコミュニティに依存し過ぎると、いざ集団を抜けたいと思っても「嫌な言葉を浴びせられるのではないか」と制裁を恐れて抜けづらくなってしまいます。

一方で、コミュニティに属していながらも振り回されずに自分の考えや意見を貫く人が一定数います。

そのような同調行動を起こさない人の特徴は3つあります。

同調行動を起こさない人の特徴

  1. 高い自己効力感
    自分の能力を信じて目標達成に必要な行動を取れるという信念を持っている
  2. 明確な価値観を持っている
    自分自身の感情、思考、行動のパターンから価値観が明確になっているため、他人の意見に流されることなく、価値観に沿った行動を取る
  3. ストレス耐性が高い
    社会的圧力や批判に直面した際にも、ストレスを効果的に管理し、冷静さを保つことができる。彼らは感情的に揺さぶられることなく、合理的な判断を下すことができます。

けっきょく同調した方が良いのか

個人的には「同調は必要最低限に抑えて自分の価値観に沿って生きるべき」と考えています。

「他人は一切気にせずに自分の思うがまま生きれば良い」という意味ではありません。周囲と円滑に物事を進めたり、関係を構築しようとするのであれば少なからずの同調は必要です。

また、周囲に同調して生きていくのも、同調せずに生きていくのも、どちらも一長一短あります。

まず、同調することを選択した場合。同調できると言うのは言い換えれば協調性が非常に高いと言えます。大企業など多くの人と関わってプロジェクトを進めるような場面ではこの協調性が有効に働く場面が多くあります。その反面、自分のオリジナリティは表現しづらく、個性や価値を出しづらくなります。

次に、同調しないことを選択する場合。他人に振り回されにくい人は、自分なりの価値観をもとにオリジナリティを表現して成果を出す場合があります。その反面、周囲と衝突しやすく、周りと協力することが難しいという難点があります。

また、自身が同調しやすいのか、同調しにくいのか、どちら側の人間かと言うのは、立場やその人のストレス耐性などで変わってきます。

ぜひ自分の行動が同調によるものなのか、自分の価値観に沿ったものなのか立ち止まって考えてみることをおすすめします。

  1. Bond, R., & Smith, P. B. (1996). Culture and conformity: A meta-analysis of studies using Asch's (1952b, 1956) line judgment task. Psychological bulletin, 119(1), 111-137.
    https://psycnet.apa.org/record/1996-01401-008 ↩︎